転職失敗談2
派遣の逃げ道
派遣と転職の繰り返していたHさんだが、ある会社へ長期の派遣がきっかけで、一つの会社に落ち着くことに……。(→前編はこちら
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同じ我慢
再び派遣の世界に身を投じたHさん。短期の仕事でバランスよく休暇をとったり、人間関係でも期限付きの付き合いだと思って切り抜けたり、なにより残業までキッチリ時給換算できる清々しさなど、派遣のメリットを改めて実感していましたが、それもしばらくすると慣れてしまい、普通のことのように思えてきます。このあたりで再び安定感が欲しいHさんは、1年契約の長期の派遣の仕事を入れました。この職場というのがHさんの仕事観を大きく変える職場となったのです。
まず、契約にない仕事もどんどん頼まれます。最初は「もし手が空いていたら…」という控えめな申し出でした。長期の契約であるために断りにくかったこともあり、軽く引き受けてしまったのが運のつき。だんだんと“好意の仕事”の割合が増えるようになり、ついには
「同じ職場の仲間でしょうが。他の人がみんな忙しそうにしてるのに、派遣だからって“我関せず”という態度は良くないよ」
 と正社員と同じ感覚を求められるようになったのです。
上司がこういう感覚ですから、周囲の女子社員はいっそう“異物”を受け入れない風潮が強く、「派遣ですから」などと口にしようものなら、たちまち冷たい視線がとんできます。この職場で1年やり抜くために、Hさんは派遣であることを忘れて、ひたすら周囲と同化することに努めてきました。その結果ハタと気づいたのです。
「これって派遣の意味がない、これだけ我慢するなら正社員の方がいいんじゃ……」
この仕事をきっかけに、Hさんはもう一度転職活動に入り、現在のメーカーB社の総務の仕事に就くことになったのです。
採用するなら…
B社の仕事はとりたてて面白いことも、技術的な面で手に職が付くということもありませんでしたが、最後の派遣で我慢を経験したHさんにとっては、ここが落ち着きどころ、と心を定めたようです。
さて転職してしばらくたって、総務のHさんに採用の仕事が回ってきました。頻繁に採用活動を行わないB社には正式な人事部というものがなく、総務の人間がその作業にあたることになっていたのです。今回は結婚退職者による事務欠員の補充ということで、長く勤められる即戦力を求める募集でした。届いた履歴書を前に、上司が応募者の確認をしていた時のこと。
「この人、若いのに派遣の経験が結構あるんだね。キャリア的にどうなんだろ。Hさんも派遣やってたなら分かる?」
 不意にHさんは意見を求められました。出された履歴書をみると、まだ20代半ばの若さで正社員と派遣で十数社を経験した上での応募です。Hさんはしばし考えたのち、こう進言しました。
「キャリア的には問題ないと思います。でもこの人はオススメできません。派遣と正社員を交互に経験してきた人は不満があるとまた派遣に戻る可能性が高いです。この人は実際それだけのスキルもありますし。それに若いうちはフットワークが軽いですから別の会社に移りやすいと思います。長く勤める人であれば、もう少し落ち着いた年齢の人の方がいいと思います」
 かつての自分を思い出しながら、自分の後輩を切ってしまったHさんでした。
サクセスポイント
今回はココが問題!
派遣・転職の繰り返し
スキルと仕事に不自由しない人の場合、派遣と転職を交互に逃げ場として繰り返してしまうこともあります。いずれも年齢が上がるにつれて仕事に制限が出ることもありますし、長く続けられる働き方ではありません。自分のキャリアやスキルと相談し、どんな勤務形態が自分に適しているのか、考えてみる必要がありそうです。
これでサクセス!
派遣から正社員へ
派遣と転職を繰り返した人が正社員を目指す場合、今までの転職・派遣の仕事と、今度の転職の違いを説明できなければいけません。派遣を選んだ理由(スキルをつけたい、自分のペースで仕事をしたい、など)を説明すると、正社員になりたい気持ちと矛盾します。また正社員志向を打ち出しても「また派遣に戻るのでは?」と不安に思われてしまいます。
これまでの経験をアピールしながら、今度は安定した環境でその経験を発揮したいという気持ちを訴えることが大切です。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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