転職失敗談2
僕のスペックはどうですか?
ネットで転職相談にのるY氏。彼のところに舞い込むメールに、入社一年未満の新人社員からのものが目立つようになり……。(→後編はこちら
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就職をやりなおしたい
昨年末、26歳の男性が名古屋のテレビ塔から大量の紙幣をばらまくという事件がありました。この時ばらまかれた現金は、男性がネットトレーディングで得た莫大な利益の一部だったとか。報道によるとこの男性、新卒で入った銀行を「このまま銀行にいてもリストラされる」と、わずか数ヶ月で辞職しトレーダーの世界に入ったそうです。このように今、入社一年未満、中には数ヶ月で早くも転職を考える新人社員が少なくないようです。

ある人材バンク系の企業で登録者の転職相談をしているY氏。最近ではネット上で、転職に関する質問や、キャリアプランの判定などを受け持つようになりました。そこに寄せられる質問で、最近とみに若い人、それも会社員経験が1年も無い新入社員からのメールが目につくのです。
「今年入社したばかりの会社ですが、あまりに最初の話と違い、将来への不安が消えません。
職場環境は劣悪で、残業が無い日はなく、手当もつきません。社長の考えは行き当たりばったりで、社員にやつあたりをします。根本的なところでついていけません。
もう一度、就職をやりなおしたい気持ちでいっぱいです。
 私の出身大学は××大で、建築士の勉強をしていたので資格を持っています。このスペックで転職は無理でしょうか……」
「営業として就職したのですが、自分のしたいことと違うという気持ちが強くなってきました。高齢者のための福祉関係の仕事に将来性を感じています。福祉については独学で本などで勉強していますが、経験はありません。
 でもこのまま今の仕事を続けていても将来性がないと思うのです。下手にキャリアができるまで我慢するより、若いうちに方向転換すべきだと考えるのは間違いでしょうか……」
背中を押して
入社したばかりだけど転職したい、自分は転職しても大丈夫だろうか、この会社は辞めるべきですよね……。こういった新人君たちからの声。どれも自分の経歴、といっても社会人経験が浅いため、学生時代の経験・勉強・資格を述べ、今の職場がどんなにひどいかを挙げるというスタイルがほとんど。そして最後は「転職できるでしょうか」「辞めてもいいでしょうか」でまとめ。
こういったメールを受け取るたびに、Y氏は「ああまたか」とため息をつきます。
 はじめて社会に出て、働くことにショックを受ける人は昔からいましたが、最近特に早く結果を出したがる傾向にあるようです。
それでもやはり不安なのか、みんな「第二新卒でも大丈夫」と背中を押されたがっています。しかし一通のメールだけでは太鼓判など押せる訳がないのが実情。それに学生時代の延長的スペックを示されても、実際転職市場では役に立つかどうか分かりません。強いて言えばこれを読んだ人が会いたいと思えるかどうかですが、相談者は窮状を訴えるあまり、まだそこまで意識が及んでいないのです。
それでもY氏は、それぞれにアドバイスを送ります。不安点を明確にすること、社内でできることはまだあるはず、それでも転職を選ぶときは相談にのるから一度社の方においで下さい……。
しかし、返事がくることはほとんどありませんでした。そしてメールの主が実際に転職の相談に現れることもなかったのです。
そんなとき、Y氏はある転職志望の新人社員からのメールを受け取ります。

(→後編に続く)

pen2 Yさんが受け取った相談メール。そのぜいたくな転職志望にYさんは驚かされ、説得を試みるのだが……。次回、後編へ続く。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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