転職失敗談2
決定打
その後の転職活動で、フランクな職場とビジネスマナー厳守の職場のどちらかを選ぶことになった。Mさんの決断は……。(→前編はこちら
バックナンバー
ふたつの職場
担当者の「ふん」という相づちから不信感が生まれてしまったMさん。それから注意してみれば、横柄な態度の担当者も少なくなく、応募者と企業の間に最低限のビジネスマナーがある企業を求めて転職活動を続けていました。
 そんな時に出会ったのが、メーカーE社と情報産業F社。
メーカーE社の面接に現れたのは50代の落ち着いた男性。若いMさんにも威張らず、ビジネスマナーにかなった接し方で、不快にさせるところはありません。メールや電話の対応も非常に丁寧。どんな時間に連絡をとっても担当者が出て、適切に対応してくれます。 社内の営業マンもMさんを来客とみるや、
「いらっしゃいませ!」
 と順番に頭を下げてすれ違います。
担当者の転職観も実に真摯なもので、 「当社は中途採用は、初めての転職の方に限っております。会社選びはそれぐらい慎重なものではないですか?」
そして、長く勤めてほしいと続けます。こうしたE社の社風や態度は、ビジネスマナーとしては完璧です。しかしMさんはかえって堅苦しさを感じていました。
 一方情報産業F社は若い社員が多い分野だけに、Mさんと近い年代の男性が面接に現れました。話し言葉は丁寧ですが、年が近いだけに話し易い雰囲気です。
「うちは業界的にも転職とか人の出入りが多くて、その点Mさんも心配しなくていいと思いますよ。すぐ馴染まれるでしょう。」
 その後、
「散らかっててお恥ずかしいんですが……」
と言いながら案内されたフロアは、所狭しと設置されたコンピュータとパーテションで、誰がどこにいるかは一望できません。それぞれ自分の仕事に没頭していて、Mさんに改まって挨拶する人もおりません。働き易そうですが、ドライな人間関係が伺えます。
本音と建前
堅苦しく中途採用も多くなさそうなメーカーE社と、転職者でも馴染み易そうな情報産業F社。対照的な2社のうち、Mさんはどちらかを選択しなければならなくなります。F社へ傾く気持ちもあったのですが、例の相づちの企業と似たようなフランクさがひっかかり、
「人の出入りも多いようだし、どこかルーズな感じがする……」
 と、結局物堅いメーカーE社への入社を選択します。

ところが、E社へ入社条件の説明や時期の擦り合わせ等で出向く機会が増えると、応募段階では見えなかったE社の体質が徐々に明らかになっていきます。
まず、事前にアポをとっておいたにもかかわらず、1時間も2時間も待たされてしまうことがありました。その間、何度も目を通したパンフレットや賃金契約書などに目を通すよう促されますが、それだけではすぐに手持ち無沙汰になってしまいます。これでは時間の無駄だと、
「今日はお忙しいようですので、また日を改めましょうか」
 と申し出ると、対応に出た女性社員が別室に取り次ぐ様子が聞こえ、続いて
「あ〜〜〜ッ、もうさせること無いの?!ハーイ、今いくよ!」
 これにはMさんもガッカリです。それからさらに30分後、現れた担当者は、先ほどの声とうって変わって、
「大変お待たせして、本当に申し訳ございませんッ」
 と、ガラリと改まった対応で現れました。何も知らなければ、いつも通りの丁寧なビジネスマナーと感じるところも、先ほどのやりとりを耳にしている以上、その落差にギャップを感じて妙な気分です。
 この戸惑いはMさんの入社後さらに加速します。
人事面での細かな条件など、入社後も擦り合わせが続いているものもありましたが、Mさんが入社すると担当者は態度を一転させ、「忙しい」「後にしてくれ」とつかまえるだけでも一苦労。それどころか、最初に約束していた条件も、何かと理由をつけて削除しようと交渉され、Mさんはうんざり気味。
同じように転職した人に話を聞こうにも、中途採用が少ない職場だけにMさんの存在は少し浮き気味。彼に対する周囲の態度も丁寧ですがあまり打ち解けないものに止まっています。 「入社したら社員ですからお客さん待遇というわけにいきませんけど、これほど手のひらを返されると少々ショックです。初対面の印象は素晴らしかったんですが、結局建前が得意な体質ということですよね」
最初の決定打が後を引き、思わぬ結果を生んでしまったようです。
サクセスポイント
今回はココが問題!
第一印象の影響力
第一印象の良し悪しは、のちのちの入社にまで影響してくる大事な判断要素です。しかし、会社の印象は入ってみなければ分からないもの。また、人材採用は労基法や男女雇用機会均等法など法律が絡む分、本音と建前を使い分ける場合があります。そうでなくとも、転職フェアや求人広告などで、求職者が応募しやすいよう、お客様待遇で応募を待つ場面もあります。いわゆる「オイシイ仕事」の場合、美辞麗句の奥にある採用の本音を汲み取る努力が必要です。
これでサクセス!
脱お客様体質
転職市場の拡大で「お客様体質」を持って転職にあたる応募者をみかけるようになりました。「紹介会社があなたにピッタリだといったのに合わなかった」「転職先を紹介するといったのにまったく紹介してくれない」といった不満を漏らしがちな人のことです。お客様体質の応募者は、いわゆる建前を信じ易く、それが結果的に転職活動の妨げになることも。
応募先企業、紹介会社やWEBサイト、そして媒体と、自主性を持って利用することが肝心です。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
バックナンバー

▲ページのトップへ