転職失敗談2
雑談面接
応募者の本音や人となりを探るため、面接の場であえて雑談に興じる面接担当のOさん。しかし応募者の反応は様々で……。(→後編はこちら
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脱線話術
昨今はテレビ番組の影響もあって、雑学・ウンチクの類いが大ブーム。書店に行けば雑学系の書籍が所狭しと並べられ、他人を「へぇ」と言わせる知識の一つも持っていなければ、会話が弾まないという雰囲気すらあります。
若い女性に人気の生活雑貨品を扱うメーカーK社。ここで面接の対応をしているOさんも、こうした雑学系の話題を努めて耳に入れるようにしています。それというのも、他ならぬ面接の場で活用するためなのです。
Oさんは過去の中途採用で型通りの質問を繰り返し、せっかく採用した人材が短期間で辞めていく苦い経験を持っていました。こうした応募者の建前を信じたミスマッチを防ごうと、Oさんの面接スタイルは変わっていったのです。
書面で分かることは確認程度に止め、後は話を脱線させて雑談にもっていき、できるだけ会話を盛り上げるようになったのです。話題もスポーツ、趣味、時事ネタと多種多彩でした。
Oさんのその雑談の狙いは、本音をいかに引き出すかにありました。型通りの質問をしたところで、応募者も前もって回答を用意していることが多く、優等生的な回答の裏にある本音までなかなか掘り起こすことができません。それゆえ、あえて仕事と離れた話題をふって、応募者の性格や本音を探り出そうとするものだったのです。
不採用者ケア
無論、こうしたOさんの面接姿勢には利点も多い反面、弊害もありました。あまりに脱線が過ぎて、 「ちっとも仕事の話をしてくれない。採用する気なんてないから、適当な話題で時間を潰しているんだ」
と応募者にあらぬ誤解を受けたり、逆に
「なぜ自分が不採用なんですか。価値感もとても似ていて、あんなに盛り上がったのに……」
などの苦情が寄せられてしまったり。もっとも、最近のウンチクブームに乗ってか、雑学知識で対抗しようとして、
「あっ!それ知ってますよ。ちょっと前話題になった、アレですよね!」
とOさんの言葉を遮り、面接の場も忘れて自分の知識をひけらかす者が出てくるなど、よくも悪くも応募者の性格は以前よりもずっと分かり易くなったのでした。

こうしたOさんの脱線話術には、応募者の性格を浮き彫りにするという意味の他に、もう一つの意味も込められていました。それはたとえ不合格になっても、K社に悪い印象を持たないで欲しいという願いです。
K社のメインターゲットは20〜30代の女性。社員募集に応募する同世代の女性たちは、普通以上のK社のファンであるともいえます。その貴重なファン層をないがしろにはできません。不採用になったからといって、K社の商品を敬遠することがないよう、
「面接の結果は残念だったけど、K社の商品は好き」
と言ってもらえるよう、どんなにひどい応募者であっても、丁寧に丁重に対応し、共通の話題で盛り上がり、最後はにこやかに別れることをOさんは常としていました。
 ところが、このOさんの信条が思いも寄らぬ波紋を呼ぶことになったのです。

(→後編に続く)

pen2 どんな応募者も、K社の不合格者ではなく、K社の消費者として扱う−。こんなOさんの誠実な対応は、人の心に響いた。いや、響きすぎた……。次回、後編へ続く。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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