転職失敗談2
副業探し
誘われるままに、副業だからと割り切って始めた販売の仕事。しかしUさんのミュージシャン経験や知識が想像以上に認められて……。(→前編はこちら
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意外な発見
不定期で入る本業の仕事を優先させたことで、副業の音楽講師の仕事をクビになってしまったUさん。次に見つけた副業は行きつけの楽器店に誘われた販売の仕事でした。本当なら演奏関係の仕事が望ましかったのですが、職種の幅が少ない分野でもあり、再び副業だからと割り切ってこの仕事に就くことにしました。
 しかし実際に店頭に立ってみて、Uさんは意外な発見をすることになります。店にやってくるお客には、楽器を購入し、真剣に音楽に取り組もうとする人が少なくなく、Uさんの経験や専門知識が頼りにされる場面が急増したのです。Uさんと話をしたがるお客や、Uさんのアドバイスで楽器を買いたいと名指しでやってくるお客も現れるようになりました。
 店のオーナーもこうした現象を喜び、Uさんを頼りにするようになります。それもこれもUさんの“本業”あっての現象だとオーナーも理解しているため、スケジュール調整にも協力的。その点でもUさんの悩みは解消したのでした。
しかし、Uさん・オーナー・お客のトライアングル蜜月はいつまでも続きません。
 実はオーナーが持っていた店は、Uさんの勤務先の他に2店舗あったのですが、それぞれ売り上げが芳しくなかったのです。Uさんが勤めて1年半後ぐらいには、家賃を納めるので精一杯という状態に。結果、Uさんの店に他の2店舗分をカバーする売り上げが要求されるようになってしまいます。
 こうなると、今までのようにお客と専門知識について長話をしたり、ちょっとした質問に丁寧に答えたりという、Uさんの接客態度にもオーナーはピリピリとした目を向けるようになってきました。
「客は長居するけど、全然売れてないじゃないか。Uさん、もっと単価の高いものを売ってくれないと……」
ある時は、Uさんが書類の運搬に何気なく店頭のビニール袋を使ったところ、オーナーに
「これは一枚いくらすると思ってるんだ。タダじゃないんだ
と激しく叱責されてしまったのです。たしかに正論ですが、オーナーの追いつめられた心理に触れ、Uさんは徐々に居心地の悪さを感じるようになっていきました。
オーナーとの対立
オーナーの精神状態は2つの店舗の経営悪化が進むにつれて不安定さを増していきました。ある日、珍しく上機嫌のオーナーが突然、
「Uさん、うちの1号店を買ってくれないか?買わなくても共同経営ってことでもいい。この辺でUさんもバイトじゃなくて、しっかり足場を固めたらどうだ?」
とえびす顔で勧めてきたのです。どうやら経営が悪化している2つの店舗は、売るか閉めるかという所まできていたらしく、思い入れのある1号店だけは残したい、それならば……と、Uさんへの打診となったようなのです。
Uさんにしても、年齢相応の足場が欲しかったり、本業との兼ね合いで仕事を探し続けることへの疲れなどから、一瞬心がゆらぎました。しかし、喜怒哀楽の差が激しくなるオーナーを見ていると、経営の難しさばかりが感じられ、この話は断ってしまいます。その結果、オーナーは2つの店舗を閉店することになり、オーナーとUさんの間にもある種のわだかまりがうまれてしまったのでした。
経営が安定していたUさんの店の3号店だけはそのまま残ることになったものの、
「2つの店を整理して、人手も余裕が出た。この店も私一人で手が足りるようになったので、Uさんには辞めてもらいたい」
 と二度目の退職勧告を受けてしまったのです。

三たび副業探しの旅に出たUさん。見つけた副業は、なんと、もう懲りたはずの講師の仕事。しかも月数回のこども音楽スクールの先生です。仕事の大半はこどもを追いかけたり、捕まえたり、しつけたり、気を逸らさないよう注意を引きつけたりと、音楽未満で保育士同然の仕事内容です。しかしUさんはひとまず満足しているようです。
「最初はやっていけるか不安だったんですが、今ではこどもと触れ合うのがすごくいい刺激になってます。本業もそうですが、楽器店の仕事も趣味講座の講師も、大人相手のディープな世界だから、こどもの純粋な反応をみてると、こっちがリフレッシュできるんですよ。初心を思い出すというか。少々疲れますがね」
 販売員時代に比べると、副業の収入は減ったものの精神的なバランスはかえって良くなったのだとか。
 本業と近い分野でも勤めきれなかったり、まったくかけ離れた仕事がいい刺激になったりと、副業と本業の関係の奥の深さを感じるエピソードです。
サクセスポイント
今回はココが問題!
副業さがし
本業の収入をアップさせる方法の一つとして注目される副業。「儲かる」という言葉で勧誘してくる副業は数えきれないほどありますが、そうそうウマイ話は無いもの。先行投資が必要なものはとにかく注意を。また金銭的な問題の他にも、会社員には副業選びで注意すべき点があります。
これでサクセス!
副業えらびの注意点
副業えらびの注意点
会社員をしながらの副業の場合、会社の就業規則をまずチェック。他の就業を禁止する規則を設けている場合が多いためです。さらに本業への影響を考え、スケジューリングに無理が出ないかも要注意。空き時間でラクラク……と思って始めた副業でも、睡眠時間を削った、休日を潰した、移動や運搬にタクシーやバイク便を使わざるを得なかった、など思わぬ負担となって返ってくるケースが多々あります。また確定申告の必要性も出てきますので、そうした事務的処理にかかる時間や設備投資も計算に入れてください。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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