転職失敗談2
帰ってきた息子
帰ってきた息子のため、社長は新しい部署と社員をあてがう。そのメンバーにされたEさんは……。(→前編はこちら
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社長とおなじ名
「いままで取引先の●●社で仕事をさせていた息子のBだが、外の世界で得た知識や見聞を我が社のために役立ててもらおうと思う。本来はもっと世界を知って大きく成長させて……と思っていたが、今のビジネス・スピードでは、そうそうゆっくりもしていられないので……」
社長が社員にこう言い渡したのは、Eさんが転職して一年もたたないうちでした。社員の多くはさして驚いた様子もありません。しかし転職時に社長の口から「同族企業にはしない」の言葉を聞いていたEさんにとっては青天の霹靂。さらには
「これからは企画営業部で新案件を提案していってもらおうと思う。ついては営業部も若干体制を変える。以下の者はBと一緒に新風を起こしていってほしい」
そういって読み上げた名前の中に、Eさんも含まれていたのです。社長は周囲を慮ってか「一緒に」という表現を使ったものの、実際は社長の息子・B氏をリーダーとするセクションが結成され、Eさんたちはその部下という立場になったのです。
 発表と同時に社員と引き合わされた社長の息子・B氏は、まだ20代後半の若さでEさんよりも年下。やはり早い出世と言わねばなりません。
「私の息子だと思わず、新たな中途採用者として接してくれ。意見交換も物怖じせず、どしどしやれ」
社長はセクションメンバーにこう言いおいていきましたが、呼びかけるにしても社長と同じ名前です。B氏の後ろに社長の存在を感じずにいられません。通常の上司・部下の関係以上に遠慮が生まれ、B氏にしても周囲のそんな気遣いを受けるうちに、だんだんと態度も尊大になっていったのでした。
お目付役就任
B氏の仕事ぶりも周囲との摩擦を生みました。本人は新しい考えだと思って提案する企画も、実はとうの昔に別の社員が結果を出せなかったものだったり、提案したものの社長に即却下されたものだったり。やはりビジネス経験が絶対的に足りないのです。
当然社員はB氏の企画に反対。すると今度は腹を立てたB氏が社長に掛け合い、強引に企画を通してしまいます。当然結果は芳しくなく、こんなやりとりが続くうち
「どれほど斬新なアイデアかと思えば、ボツ企画しか出せないリーダーとは」
「それを通してしまう社長も社長」
「結局はボンボンの道楽。ここは子守り部署」
などの社員の不満はつのる一方。
そうしたB氏セクションの不協和音を聞きつけてか、社長は密かにEさんを個別に話があると呼び出してきました。
「Bはどうだ。いろいろと難しいようだな」
「はぁ……」
繕いようもないと、Eさんも率直に返事します。
「あいつなりにいろいろと焦りもあって、周囲と衝突しているようだ。うまく力を出せるよう、Eは特に力になってやってくれないか。……これは、腹を割って話すが、実はEを採用する時からゆくゆくは息子のお目付役を頼みたかった。事実、営業部にいれてみても、君はあっというまにナンバー2になった。その営業力や折衝力、交渉力をBにも身につけさせたい。うちの息子のためではなく、会社のためと思って、あいつを補佐してやってくれないか」
社長がかいま見せた親としての一面に、一瞬心動かされはしたEさん。しかし、自分の採用は結局は息子を入社させるための布石だったのかと、内心大いに落胆していました。
 その後、B氏が暴走するたび、Eさんは社長とB氏の間で身も細るほど苦労することになり、そんなEさんを見て同僚は
「おまえやけにBの面倒みてるけど、疲れないか?」
 と心配顔。
「だいたいあの使えなさは筋金入りだから、ホドホドにしとけよ。聞いた話だけど、Bの前いた会社、最初は10年の約束でBの“修行”を引き受けてたらしいけど、あんまりにも使えないっていうんで、期限前に“返品”してきたんだってさ。ホントかウソか知らないが……」
 さもありなん、とつい口にしそうになったEさん。彼の次なる転職も近いかもしれません。
サクセスポイント
今回はココが問題!
同族企業
同族企業経営には独特の基準や価値観が存在し、同族外の従業員にとっては疎外感や負のイメージが強いもの。その反面、安定経営の基盤になったり、信頼関係が築き易い、企業としての決断力があるなど利点もある。
入社する場合、健全な経営ができているかどうかの見極めが肝心。
これでサクセス!
同族企業の注意点
同族であるというだけで仕事や高いポジションを得ている人物がいないか、専門的な役職・決定権のある地位が同族だけで占められていないか、トップに意見を述べられる同族外の人間がいるか。危険な同族企業か否かは、これらの点をチェック。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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