転職失敗談2
素直な君
K君の仕事の怪しさと過酷さに口を揃えて転職を促す友人たち。素直なK君もついムキになって……。(→前編はこちら
バックナンバー
質問ぜめ
「住民票ってそんな勝手に見られるものなの?」
「申し込んだら誰でも見られるよ」
「でも、ホントは営業とかには使えないんだろ?」
 フリーターの友人たちを前に、仕事話を披露しているはずのK君でしたが、いつしか友人たちから質問や追求を受ける立場にかわっていました。
「それにこのマニュアルの『保健所の方から参りました』って言い方、かなりうさんくさくない?」
「じ、実際はこんな言い方してないよ!単なるマニュアルだから…」
「1日に何十件って回って、どのぐらい契約とれるの?」
「良くても1件ぐらいかなぁ……」
「え〜すごい効率悪いね〜。オートロックとかで門前払いされちゃうの?」
「それはコツがあるんだ。先に入る人を待って一緒に入るとか。コンビニの袋でも下げてれば住人だと思ってくれるしね」
「それって……ちょっとヤバ目の訪問販売だよね」
「このキットの絵もなんか古ーぅ。これで数十万は高いよ」
「でも、ほんとにイイものなんだって!」
 最初は誇らしげだったK君ですが、友人たちの追求に徐々に劣勢に。一度イメージを悪くした友人たちは、口を揃えて
「早く辞めた方がいいよ……」
 とK君に転職を勧め始めたのです。K君にしてみれば、今定職に就いているだけでも誇れるものがあると思っていた矢先にこの「辞めろコール」。本来素直な性質のK君もさすがに、
「ひとが一生懸命やってることにケチをつけるな!」
 と激高。その後も会う人ごとに
「その会社大丈夫なの?」
「まだ、その仕事してたの?!」
 などの言葉をかけられ続け、素直なK君もすっかり意固地になって、そのハードな仕事を続けていました。
飛び込みの評価
それから2年後。K君は相変わらず飛び込み訪問販売の仕事を続けていました。肩書きは主任になっていましたが、部下はいません。新人を入れても次々とすぐに辞めてしまうからです。一方、フリーターだった友人の中にはアルバイト先で部下を持つものや、就職したものも出ていました。このころになると、友人たちもあきらめて「辞めろ」とは誰も言わなくなり、正社員の厳しさにこだわり続けているK君に、複雑な表情で
「仕事、大変そうだね……」
 と声をかけるばかり。
 しかしK君の職場では、人員の補充が間に合わないことがたたって、最近特に売り上げの低下が目立つようになっていました。結局、会社経営も立ち行かなくなり、オーナー社長は会社を解散させる決定を下します。
 急転直下、仕事を失ったK君はひっそりと実家に帰って仕事を探すことにしました。この2年、不景気を理由にボーナスは一度も出ず、給与のアップもほとんど無く、もちろん退職金もありません。まさに身ひとつで放りだされた状況。実家に身を寄せるしかなかったのです。
 しかし故郷での転職活動は案件が少ない上、K君の経験を買ってくれる企業はさらに少なかったのです。飛び込み営業しか知らないK君はコンピュータもほとんど使えません。営業スキルを問われても、基本的にリピーターの無い仕事で、有力な顧客を持つこともなく、部下も無く、売り上げ不振で企業は解散という結果から、厳しい評価をされてしまいます。
 幸いにも父の知人の紹介で、K君は地方の交通広告を取り扱う代理店に営業として抱えられることになりました。喜々としてかつての友人たちに連絡をとったK君でしたが、さらに1年後、新たな悲劇が彼を襲うことに……。なんとメインの広告媒体である地方の電鉄会社が倒産してしまったのです。新たな広告が取れなくなるばかりか、先に契約した企業からも「どうなってるんだ!」の苦情が舞い込み……。
 K君の仕事は常にハードです。
サクセスポイント
今回はココが問題!
飛び込み営業の評価
最近では「昭和の営業法」「非効率な古い仕事」などと評されることもある飛び込み営業ですが、逆に「営業の基本」として営業研修などに盛り込む企業が多いのも実情です。
特に個人顧客への飛び込み営業は、その敷居の高さから強い精神力と体力が必要。スキルを別にしても、精神的なタフさを充分アピールできる仕事です。
これでサクセス!
営業マンの募集
営業の募集、特に業界経験不問の場合は応募が多数集まる場合もあり、タフさのアピールだけでは面接に進めないことがあります。また「飛び込み営業」に対する選考者のイメージが影響することも。
営業努力が反映された明確な結果(インセンティブや表彰経験)などを提示し、他の応募者との差別化を。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
バックナンバー

▲ページのトップへ