転職失敗談2
怒りの大改革
短気な社長は大型夏期休暇中も出勤。休暇中のS氏に連絡をとろうとしたところ……。(→前編はこちら
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ハワイのメール
事件が起こったのは、まさにこの大型夏期休暇の真っ只中でした。時折社長から癇癪をぶつけられることはあったにせよ、まだまだ社長の“秘蔵っ子”として忙しかったS氏。しかし、その年の休暇には、思い切ってハワイへ家族旅行に出かけることにしていました。普段は深夜帰宅が続き、寝顔しか見られない子どもと、家庭を任せきりにしている妻へのサービスの意味を込めた、S家にとっての大イベントだったのです。
 とはいえ、ハワイの太陽の下、大満足の家族の笑顔を見る傍ら、S氏は持参したノートパソコンで1日数回のメールチェックを欠かしません。さすがに他の企業が営業している時期、完全に仕事から離れることはできなかったのです。
 そんなS氏のパソコンに最重要のマークがついたメールが飛び込んできたのは、旅行日程のちょうど中日ごろでした。差出人はS氏の後輩社員A君。彼がたまたま休日出勤したところ、休日返上中の社長と鉢合わせたことが発端でした。社長から様々な指示や質問をされたA君。中にはSさんの案件も混じっており、A君が正直に自分では分からないと答えたところ……
「社長が急に怒りだして、Sさんはどうしたというので、旅行のことをお伝えしたら機嫌を悪くしてしまって。とにかく急いで社長に連絡された方がいいと思います。お休みのところ、本当にすみません……」
 何が何やら分からないまま社長宛にメールを入れたものの、社長からの返事は無し。
 怒りの原因は単純なものでした。日頃自分の片腕として働いているS氏が長期の休暇。最近気が短くなり、休暇中もほとんど会社にいる社長がS氏に連絡をとろうとしたところ、自宅も携帯も留守電。ようやく社員を捕まえて聞けば海外旅行中と判明し、反射的にカッとなった……という成り行きだったようです。
 メールに返事が無いため焦ったS氏は、時差を計算して国際電話までかけたものの、残念ながら社長の怒りを解くことはできませんでした。
引き金を引いた男
休み明けの事務所朝礼。S氏は社員の前で、社長から吊るし上げられていました。
「いくら夏休みとはいえ、役職に就いている人間が、緊急の連絡をとれないなど言語道断だ!」
 噂好きの社員の間では、S氏が国際電話で詫びを入れた話は広まっており、朝礼中も気の毒そうに視線を送る人も。ところが社長の一言で全員の顔が凍りつきました。
「だいたい他の会社が仕事をしている時に、大型休暇だと浮かれてる場合じゃない!うちだけが長期の休みなど時節に逆らうこと甚だしい。よって来年からの大型休暇は廃止とする!」
 気の毒な被害者は一転、“引き金”を引いてしまった人物に……。
 さすがに直接本人に文句を言う社員はいませんでしたが、水面下での不満は凄まじいものがありました。
「Sさんは気の毒だけど、夏休みカットは痛いよなぁ」
「ボーナスは安いし、残業は多いし、休みまでなくなったらいいとこナシだ。夏休みだけがうちのメリットだったのに……」
 さらに、落ち込むS氏に、
「今回の一件はお前にとって代わろうとしたAの作戦だ。でなければ休み中にそう忙しくないAが会社にいたのは解せない」
 とA君の陰謀説をささやく社員まで現れる始末。
 社長からの風当たりは強い上、噂好きの社内の雰囲気にほとほと疲れ果てたように、S氏はほどなく会社を去りました。
 もっともハワイの一件以降、「S氏が転職を考えているらしい」「どこかと頻繁に連絡をとっている」などの噂が新たに社内を駆け巡り、その噂に背中を押されたという一面もなきにしもあらずだったようです。
 ちなみに、S氏のその後については実家に帰って家業を継いだと言う者あり、いや、より良い会社に引き抜かれたのだと言う者あり、社員の噂話はさらに賑わったのでした。
サクセスポイント
今回はココが問題!
転職の噂
転職する気がまだない、もしくは準備が整っていない状態で転職の噂が立つのは困りもの。こうした噂が立つにはきっかけとなる出来事がある他に、転職を連想させる行動をチェックされている場合があります。例えば個人からの電話が増える。外出が増える、外回りでつかまらない時間が増える。本業以上に打ち込んでいる仕事がある。転職者・予定者と親しげにしていた、など。
これでサクセス!
注目のシーズン
人事関係者が転職の増える時期として目安にしているのが、年末年始、夏期休暇などの長期休暇の後。転職本なども長期休暇の時期に合わせて発売されることが多く、一種の転職ハイシーズン。慎重を期すなら、この直後に目立つ行動をとるのは避けたほうが無難。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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