転職失敗談2
敗戦処理担当
厳しいプロジェクトを無事にやり遂げたTさん。しかしそのことが評価されたために、その後もクレーム処理担当として難しい案件ばかりを割り当てられるようになり……。(→前編はこちら
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不満の声
開発期間も半ばを過ぎて頓挫したプロジェクトの、チームリーダーとして舵取りを任されたTさん。まず社内で体の空いているスタッフの中から、選りすぐったメンバーでクライアント企業に参上。それからは休日返上は勿論のこと、日々の帰宅もままならないハードな勤務を続け、なんとか納期に間に合わせることができました。
 しかしそこに至る道のりは大変なものでした。作業の厳しさはもとより、Tさんに見込まれ、連れてこられた社員たちからあがった不満の声も数知れず。
「普通は徐々に忙しくなるものなのに、いきなりこんな切羽詰まってる状態でスタートだなんて」
「突然拉致されるみたいに連れてこられて、これじゃ強制労働だよ」
 またそうまでして懸命に作業を続けても、
「やっぱり、切ってしまった方がよかったんじゃないのか?この会社」
 などと厳しい言葉がクライアント側から漏れ聞こえることもあり、メンバーのモチベーションも下がります。
 なお悪いことに、作業が佳境に入ると、舵取り役のTさんが直接手を下せる部分も少なくなります。開発出身とはいえ、最新の技術に関しては現役エンジニアに譲るところの多いTさんは、自然と現場から足が遠のくことに。無論他の場所で仕事をしていたのですが、疲れきっているメンバーからは反発を招くこともありました。
 そうまでして仕上げた仕事も、すっかり立腹しているクライアントからは「出来て当然」と、ねぎらいの言葉も無かったのです。
最後まで敗戦処理
いきさつがいきさつだけに顧客満足は望めず、また社員からの不満も少なくなかったとはいうものの、当初の予定通りに仕事を仕上げたことで、Tさんの社内評価は著しく高くなりました。
 そのために、幸か不幸か、Tさんはすっかり“敗戦処理”担当として頼りにされ、この後もややこしいプロジェクト、失敗しそうなプロジェクトばかりを優先的に担当させられることになってしまいます。
 おまけにTさんの担当傾向が周囲にも知られるようになると、Tさんのチームに配された社員はみな良い顔をしないようになりました。それも無理はなく、中にはTさんのプロジェクトを歴任したことで、ストレスから休職してしまう社員もいたのです。
 内外からの風当たりの強さを感じながら仕事をこなすうちに、Tさんはある法則に気がつきました。それは、クレームが発生する案件は、決まって会社の上層部がとってきた仕事だということ。無理を承知で強引に受注し、スタッフにてんてこ舞いさせて帳尻をあわせる……。こんなことが慢性的になっている現状に
「もしや、うちの会社の経営は行き詰まっているのでは?」
 疑惑を抱くようになったTさん。仕事上のストレスもあり、密かに転職を考えはじめます。
 しかし、なかなかそのチャンスは訪れません。敗戦処理の仕事は常に激務で、自分の時間をとることができず、また仕事に向き合えば神経を集中しなくては乗り切れないためです。会社の経営方針に無理があると思いながらも、現場で苦しむ社員を見てしまうと、一刻も早く何とかしなければと思ってしまう、その繰り返しでした。
 結局、Tさんは転職することなく勤務を続けました。最後に待っていたのは、上層部の決定による、会社解散の後始末。Tさんは最後まで敗戦処理担当だったのです。
サクセスポイント
今回はココが問題!
転職のタイミング
会社に危機感を抱いたとき、迷わず転職すべきか、最後まで見届けるべきかは難しいところです。急いで次の会社に移ったおかげで、給与の不払いなど面倒に巻き込まれずにすんだというケースもあります。一方で、慌てて妥協して転職した後に元の会社が危機を脱して後悔したり、逆に会社の最後を見届けたことが評価されて転職に役立ったという話も。
これでサクセス!
転職理由として
職場危機に際して、注意したいのは慌てすぎないこと。危機感から発した転職願望でも、後悔したくないなら会社選びは落ちついて慎重に。また「会社が危ない」「倒産した」などの理由は、やむをえない転職の動機として納得される一方で、まれに「消極的な理由」と受け取って厳しいジャッジをする採用担当者もいるため、注意が必要。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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