転職失敗談2
どんぶり勘定
残業手当がなく、有給消化もままならない。そんな古い企業体質に嫌気がさしたTさんは、インターネットで転職活動を始めるが……。(→後編はこちら
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打てば響くメール
流通系企業に勤めるTさんは、インターネットを活用し、密かに転職活動を進めていました。原因は企業体質の古さと、給与の安さ。
 勤務時間が長いTさんにとって、ネットでの情報収集・応募は転職活動の命綱。しかしネットでの採用を実施している企業でも、メールの返事に数日〜1週間以上かかったり、すでに終了した募集情報を掲載し続けていたりと、思うように進展しないこともしばしばでした。
 そんな中、最もレスポンスが早かったのがコンピュータ関係のA社。打てば響くように返ってくるメールに、Tさんも
「さすが、業界の企業だけのことはある」
 と喜び、入社の意思を強めていきました。
 レスポンスが早いだけあって、A社の選考は他社よりも飛び抜けてスピーディに進みます。早速の面接で詳しい話を聞いたTさんは、さらに入社の意思を固めました。
 残業の多い業界にしては珍しく、A社では残業手当が全額支払われていたのです。また有給休暇の消化率も高く、休日出勤時の手当もきちんと支給されています。サービス残業・休日出勤が当たり前になっている、Tさんの現在の勤務先とは大きな違いでした。
クリーンな給与システム
Tさんの勤務先では、有給休暇の消化は病欠の振替のみというのが“暗黙の了解”になっており、私的な休暇はほぼ皆無。慶弔休暇を取るのも難しく、先日も離れて暮らす祖父の通夜・葬儀に帰省したいと申し出た女子社員が、
「そのおじいさんは父方?母方?同一世帯でない方なら、休暇は1日だけだ」
 と言い渡され、涙ぐんだという一件もあったほど。
 「残業手当・有給休暇・休日手当」の3つは口にするのもはばかられ、ひたすら勤務することが尊ばれる。そんな旧体質な雰囲気に満ちていることも、Tさんが転職に傾いた理由のひとつでした。
 一方、A社の経営者は女性で、常日頃から
「社員は家族」
 を口癖にしていました。そのため社員の待遇には
「帰宅を遅らせて仕事をするのであれば、その分をきちんと家庭にも還元しなければ」
 と、細やかな点まで気を配っていると言います。
 例えば、出向などで勤務実態を把握しにくい社員にはタイムカードを提出させ、さらに勤務表も週末ごとにオンラインで管理。全国どこに出向していても、支払うべき手当はきちんと計上され、基本となる給与額も毎年1度の面接で双方合意の上に決定するという、クリーンな給与システムです。
 また社員旅行は毎年必ず実施し、家族ぐるみで招待するなど、昔ながらの福利厚生を忘れない一面も。
 転職による収入アップを目指すTさんにとって、手当や休暇がしっかり管理されているというのは非常に高いポイント。社員を大切にする経営者の心情が充分に感じられ、また最もスピーディに内定を出したA社に、Tさんは飛びつきました。

(→後編に続く)

pen2 クリーンな給与システムと残業手当でTさんの給与もアップ。しかし思わぬ“どんぶり勘定”が明らかになり……。次回、後編へ続く。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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