転職失敗談2
どんぶり勘定
クリーンな給与システムを誇るA社へ入社したTさん。残業手当のため収入はアップしたのだが……。(→前編はこちら
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ほろ酔い勉強会
A社の昇給システムは、基本給が一定のペースで上昇し、職能給はスキルアップを認められれば支給され、次第に上がり幅が大きくなっていくというもの。最初は基本給メインで、職能給は低めからのスタートでしたが、残業も積極的にこなしたTさんは初回の給与から前職を上回り、満足のいく結果となりました。
 異業種からの転職ということもあって、Tさんは入社後も自発的に専門書を購入したり、社内の勉強会にも積極的に出席したりと、1年目は社内での活動に終始して過ぎました。
 2年目に入ると、徐々に周囲が見えてきます。最初は役に立つと思われた勉強会も、手の空いているベテラン社員が講師を務めるためか古い情報が多く、しかも話の大半は
「俺の若い時は……」
 という思い出話や愚痴ばかり。
 時間外に開催しているので気が緩むのか、時にはビール片手にほろ酔い気分での講義もあるほどです。それでも出席すれば残業代や夜食が出るために、参加する社員が減ることはありません。
 最初は欠かさず出席していたTさんですが、次第にこの講義内容や雰囲気に違和感を覚えるようになり、少しずつ距離を置くようになっていきました。もっとも2年目以降はTさんも社外に出る機会が増え、欠席せざるを得ないという理由もあったのですが、時間をやりくりしてまで出席しようという気持ちがなかったのも、また事実です。
昇給据え置き
社外での仕事が増えたTさん。最初は数人のチームの一員として出向することが多かったのですが、次第に少数チームへ配されるようになり、3年目には一人でクライアント企業に出向き、数ヶ月スパンで仕事をこなすようになっていました。
 仕事の難易度もあがっており、今では
「社内でこの仕事ができるのはTさんだけ
 などと言われるまでに。
 給与面にも変化が出てきて、3年目に入ってやっと、基本給のアップ額を職能給のアップ額が上回るようになりました。
「やっと社歴だけでなく、実力が評価されるようになった」
 喜んで仕事に励むTさんでしたが、一転、次の昇給シーズンには複雑な心境に陥ることになってしまいます。
 A社では給与を面談で決定することになっていましたが、この年の昇給シーズン、Tさんは長期の出向中だったため、書類で大筋を確認して面談に代えていました。ところが昇給月の給与振込明細にあったのは、Tさんの予期せぬ数字だったのです。
 職能給のアップ額は予想以上でしたが、基本給はアップ額0、据え置きそのまま。技術面を評価されたとはいえ、基本給に関わる評価がゼロかと思えばいい気分ではありません。
 早速出向先から、本社に電話で問い合わせたところ、
「給与については社長が全部決めているから。人事では分からない」
 上司に訴えてみても、
「うーん、言われてみれば確かにおかしいよなぁ……。でも、こんなことを言いだしたのはT君が初めてだ」
 などと、つかみ所のない返事です。
 それから2週間、やきもきした気分のまま仕事を続けたTさんは、会議で本社に戻った機会にやっと社長をつかまえることができました。
「ああ、これ?最近T君がんばってるみたいだし、職能の方をしっかりつけたから」
 これで基本給も上げると多くなりすぎるので、据え置きにしたと言うのです。
「じゃあ、基本給と職能給は二つでひとつということなんですか?」
「まあ、一緒に考えることは多いわねえ」
 なんともあっさりした返事。これでは何のために基本給と職能給を分けているのかわかりません。
 ほろ酔い講習の残業代といい、入社前の話だけでは分からないどんぶり勘定の多さに頭をかかえるTさんでした。
サクセスポイント
今回はココが問題!
ポイントは情報の質
入社条件や待遇、給与システムは、募集要項や企業サイトなどから知ることができます。しかしそれが実際に機能しているのか、形骸化していないかを判断するためには、積極的な情報収集に加えて、情報の質を見極めることが必要です。
これでサクセス!
信頼できる情報
まずは信頼できる情報源を得ること。採用情報を専門に掲載する雑誌やサイトなどの媒体では、どこも独自の掲載基準を設けており、掲載情報に誤りがあればペナルティを用意されていることがほとんど。その点、各企業の自社サイトなどに比べれば信用できる情報と言えます。反面、形を整えられているため企業のオリジナリティが見えにくいという欠点もあり、媒体情報と企業側が用意した情報は、ふたつ合わせてチェックしたいもの。まれに同じと思える募集内容で待遇にズレがあることもあり、そうしたところから入社後の待遇が異なることもあります。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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