転職失敗談2
受付のしごと
苦情の多さから経営に危機感を抱いたKさん。早く転職しようと焦るが、なかなか次の仕事先が見つからない。そんな時……。(→前編はこちら
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焦りの季節
増え続ける苦情電話に対応させられ続けるKさん。理由もわからず罵られるのはもうたくさん、と仲の良い営業マンをつかまえて事情を聞いてみたところ……
「実は商品がストップしてる。問屋筋や量販店には納品日を切ってしまってるから、今残っている商品の取り合いになってて…」
「どうしてそんなことに?!」
「ハッキリと伝えられた話じゃないけど……」
 そう前置きして営業マンが言うには、どうやら社長が資金繰りに詰まったらしく、下請けへの支払いを待ってほしいと申し出たことがそもそものはじまり。そこから事がこじれ、とうとう納入商品の動きが止まってしまったようなのです。人気商品ほど在庫が薄く、営業は納品を約束してはそれを破ることの繰り返しになり、今はその対応でてんてこ舞い。
「俺たちは売るのが仕事。なのに、知らないところで商品の動きを止められて、頭をさげて回り、また適当な入荷時期を約束することの繰り返し。ほとほと疲れたよ」
 この話はすぐに他部署にも広まり、社内には転職を考え行動に移す者、いつ行動に移すかを声高に話し合う者などが続出。
 Kさんの脳裏にも、賃金の不払いなどの最悪のキーワードが駆け巡り、転職を焦り始めます。
 しかし闇雲に仕事を探しても、なかなか思うような募集は見つかりません。少しでも早くと焦れば焦るほど次の仕事は決まらず、A社の経営悪化を感じながらもKさんはズルズルと勤務を続けていました。
苦情処理のスペシャリスト
そうしてKさんが勤務を続けているうちに、A社に大きな変化が起こりました。
 経営不振のA社を、大手メーカーB社が買い取ることになったのです。B社は本来別ジャンルのメーカーでしたが、商品展開の足がかりとして買収に名乗りを上げたのでした。
 A社の存続は一応決まったものの、待っていたのはさらに大きな人員整理。当然Kさんたちのポストも整理されるはずです。Kさんもこれを潮に、いくらかでも退職金をもらって、転職に本腰を入れようと頭を切り替えていました。
 そんなある時、Kさんの上司がB社の役員に、Kさんを強く推薦していることを知ってしまいます。
「あの混乱期に苦情対応をやりとげた。会社の裏事情にも詳しく、責任感もある」
 今回の買収と人員整理で末端の社員が振り回されることに責任を感じたのか、上司が「自分はどうなっても」とKさんのことをアピールしたのです。
「これをきっかけにスッパリ違う仕事にいきたかったんだけど……」
 上司の涙ながらの訴えを知ってしまった上は、あてつけのように辞めるとも言いづらく、またそこまで自分を買ってくれていたのかという思いもあり、Kさんは転職を諦め、引き続き勤務することに決めたのでした。
 ところが、新体制のA社でKさんは営業アシスタントでも受付でもなく、新設された「お客様相談室」に配属されてしまいます。
「Kさんは苦情処理のスペシャリストということなので、そのノウハウを共有できるよう指導してほしい」
 という理由だったのですが、実は新体制に定まった後は、苦情の件数も落ち着いていたのです。
 しかも買収後の主力商品はB社の名前でリリースされているため、ユーザーからの問い合わせも激減。A社の相談室は閑職だったのです。おまけに相談室のメンバーは、数少ないA社からの居残り組ばかり。
「ここは元A社社員の墓場か」
 同じ居残り組の自嘲気味なつぶやきを聞きながら、Kさんは改めて転職しようか、それともB社に対する反発で勤め続けようかと迷うのでした。
サクセスポイント
今回はココが問題!
合併・買収による人員補充
企業の合併・買収が珍しくなくなり、その後の体質変化や人間関係などから、転職する人も増えています。人員整理や退職で欠員が出るということは、中途採用による人員補充も考えられ、入社の狙い目ともいえます。
これでサクセス!
派閥があることを覚悟しよう
注意したいのは合併・買収後の企業には派閥が出来やすいということ。買収した側、された側、中途採用スタッフの3派に分かれ、仕事に対する温度差が激しいことも。また、買収された側・した側の仲が悪い、された側のモチベーションが下がっている、など。特に中途採用者は少数派になることが多く、こうした人間関係の中で責任を果たす難しさが予想されます。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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