転職失敗談2
社内の同情
同業他社に転職した夫を持ったことで社長ににらまれ、社内の同情を集めたMさん。思い切って外注スタッフとして独立したのだが……。(→前編はこちら
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独立は最終目標
「うちは社内のスタッフだけでは手が足りないし、外注のコピーライターを使うことも多い。もしMさえよければ、一度退社して、フリーとして改めて仕事を受ける形にしたらどうだろう。今の社内ではMの仕事を正しく評価しにくい雰囲気だから……」
 上司はMさんにこう切り出したのでした。
「収入は多少増減があるだろうが、Mを名指ししてくるクライアントも多いし、激減するということも無いだろう。一案件ごとの制作料は社員の時よりかなりアップするんだから。無論他所の仕事もどんどん取っていったらいい」
 Mさんは強く心を動かされます。結婚でこじれた社長との関係や収入面の問題だけでなく、独立して家で仕事することによって生まれる時間の余裕もMさんにとっては魅力でした。
 Mさんの夫のT氏も同業者。現在、夫婦そろって残業が多く、帰宅が深夜になることもしばしば。Mさん夫婦は新婚1ヶ月の間、夕食を共にしたのは週末のみだったのです。しかも普段の家事はMさんが担当することが多く、疲れも手伝いT氏と口論になることもありました。
 しかし最後にMさんを決断させたのは、上司のこの言葉でした。
独立はクリエイターにとっては最終目標だ。悪い話では無いはずだ」
 Mさんは結婚5ヶ月目に会社を退職。以後、フリーのコピ−ライターとして古巣C社の仕事を請け負うことになったのです。
社員、奮起する
約束通り、独立後のMさんの元にはすぐに仕事が入ってきました。その打ち合わせの為、最低週3回は出社し、元同僚たちと食事をすることも。Mさんも周囲も退職したという感じがあまりなく、以前と同様に仕事をこなしているように見えました。
 ところが、社員時代と同様のペースを保っていた仕事量が、時間がたつにつれて徐々に減り始めたのです。
 危機感を抱いたMさん、元の上司と打ち合わせの機会に、もう少し仕事を増やして欲しいと“営業”をかけてみたところ、
「う…ん。そうだなぁ……ほら、最近他のライターたちも力をつけてきてるから。内部で事足りてしまうことも増えたんだよ。ほら、せっかくMに頼むんだから、ここ一番手の抜けない仕事を選びたいしな。Mもうちだけでなく他の仕事もどんどん取ったらいい」
 とはいうものの、今までMさんを名指ししていたクライアントや、長い間Mさんが担当してきた広告シリーズなども、少しずつ入ってこなくなったのです。自分が何かミスをしたのか、それとももっと効果あるコピーを書く人物が出てきたのか……。
 そんな折、Mさんは社内の女子社員の間でこんなことがささやかれているのを知ります。
「私もMさんみたいに会社辞めてフリーになりたいわ。外注だったら2〜3本もコピー打ったら1ヶ月の給料ぐらい楽勝じゃない?」
「そうそう。朝から晩まで会社に張り付いて、印刷所の都合も気にしながら残業して、それでこの給料だなんて、やってらんない」
「夜中残業しててヘトヘトになって、化粧なんか崩れて落ちまくってるところに、『おつかれさまで〜す』って、化粧したての顔で優雅に来られてもねえ……こっちはヤル気なくしちゃうっての」
「Mさんに仕事発注させるくらいなら、私頑張って数こなすよ。給料かわらないけどさ(笑)」
「ホント、ホント」
 Mさんの独立は知らないうちに女子社員に妬まれ、あげく発注を阻止するために社員が仕事に奮起するという、皮肉な結果を呼んでいたのです。理由はともかく、上司としても社員の成長はありがたいところ。社員がいい仕事をするのであれば、社外に発注するよりも格段に経費が節約できます。
 社内の新体制からすでにはみ出したことを知ったMさん。C社以外での仕事を増やすべく、これから他の会社にも営業をかけなければ、と覚悟をきめて古巣を後にしたのでした。
サクセスポイント
今回はココが問題!
会社からの独立
どのように、独立後も社員時代同然に古巣の会社から仕事の発注を受けている人もいますが、最近少なくないのは独立支援制度を導入している企業です。プランに資金を提供する「社内起業家」的な形から、個人事業主として店舗や企業の経営を任せる形など、その方法・リスクも様々。
これでサクセス!
独立のスタイル
古巣の社員に近い形でフリーやSOHOになる場合、安定した受注が期待出来ますが、完全なフリーランスよりも発注元と親密な分、仕事の幅が限定されたり、影響を受けやすいという欠点も。
フランチャイズなどの独立支援契約は、近年業種も増加し、興味ある仕事や業種を選ぶ楽しさが生まれてきました。ただ実績と経験に基づいたノウハウで失敗のリスクが少ない反面、本部の経営方針や契約条件を守る難しさもついてきます。また、常に本部の指示を仰ぐことで、経営者としての独立を果たせないというジレンマも。「独立」の意味と目標を明確にすることが、独立のスタイル選びには必要です。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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