転職失敗談2
“兄貴”のプライド
なんとかM君よりも早く、より良い職場を見つけようと、自分を追いつめていくKさん。焦って人材バンクの扉を叩くのだが……。(→前編はこちら
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レベルは下げられない
目指すは、今の職場以上の規模・ランク、最悪でも同等レベル。そう決意してスタートしたKさんの転職活動でしたが、求人雑誌でも求人広告でも、今この時期の良い求人はなかなか見あたりません。
 それでも頭を切り換えて、
「まだ新しい企業で小さいけど、ここなら大手の系列会社だし。今の仕事とまんざら接点がなくもないし」
 1社を選び出しました。今回の募集はKさんには未経験の職種でしたが、募集要項を見る限り、今の仕事とまったくの無関係でもなさそうです。
 ところが、大手企業のネームバリューが威力を発揮してか、採用側も予測しなかったほどの応募が殺到したらしく、応募者全員に予定されていた一次面接は急遽とりやめになってしまったのです。
 実務経験で弱みのあったKさんの元にも「応募者多数により、面接に代えて書類にて選考いたしました」の書類とともに、不合格の報がもたらされたのでした。
 会社選びの幅を広げたにもかかわらず、この結果。このまま求人広告が出るのを待っていては、“時間切れ”になってしまうと焦ったKさんは、さらに多くの求人情報を集めようと、人材バンクの扉をたたいたのでした。
「今の職場と同等か、それ以上のランク」
 を希望として挙げるKさんに、コンサルタントは、難しい顔でこう答えます。
「正直、今のままのレベルを維持して、同業他社への転職は厳しいものになると思われます。失礼ながらKさんは、この業界の中核に携わっておられない弱みがありますから。もしこの業界に残るとなると、給与面での減額も考えていかないと……」
「では、業種にはこだわりません。今の仕事を活かせる職種で、レベルを落とさずに、出来るだけ大きな、しっかりした企業を」
 くりかえし希望を述べて、Kさんは人材バンクを後にしました。
内々の打診
コンサルタントの反応から、ここでも結果は期待できないなとあきらめ、忘れはじめていた一週間後。予想に反し人材バンクから「紹介できそうな企業があった」との連絡が入ったのです。
 紹介された案件は、某中堅メーカーC社。今回募集があった部門は、残念ながら社の主力部門ではないものの、Kさんの職歴も活かせ、給与・待遇は前職並み。
 社名の知名度はいまひとつですが、世間に知られたロングセラー商品の製造元でもあり、そういう意味では有名企業といえます。
 Kさんは二つ返事で、プロフィールを先方に送りましたが、思いのほか検討に時間がかかっているらしく、何の音沙汰もない日々が続きます。
「先方からの回答はまだですか?」
 思いあまってコンサルタントに連絡をとってみました。
「こちらからも打診してみてるんですが、人事の決裁者がつかまらないとかで……」
「正式な回答じゃなくても、だいたいどんな感触かとかわかりませんか?面接に呼んでもらえそうかどうか、同じ待つにも心づもりしておきたいし」
「そうですね……直接の担当の方の反応は、悪くありませんでしたよ。Kさんの経歴を評価されたようでした」
 この返事に気をよくしたKさん。近く面接の呼び出しがくるものと信じ、意気揚々と出社しました。
 職場では後輩のM君が、転職活動の愚痴をさっそくこぼしにきます。
「僕なんかキャリアが中途半端だから、どこへいっても給料ダウンは避けられなさそうです。せめてあと2〜3年働いてたら……。Kさんはもう次の目星とかつきましたか?」
「俺は、まだ正式じゃないけど、一社かなりいい感じだよ」
「いいなぁ〜」
 面目を保ったKさんでしたが、続けてM君が口にした言葉に平常心を失ってしまいます。
「ところでKさん、××っていう商品出してるCって会社、あるじゃないですか」
「えっ?!」
「今そこが人を探してるみたいなんですよね。広告とかは出してないんですけど」
「なんでMがそんなこと知ってるんだ?」
「実は僕のいとこがC社にいるんですよ。で、内々で口をきいてもらおうとしたんですけど……僕ではキャリア不足だって落とされました」
 そのC社に自分も今あたっているとは、とても打ち明けられません。とっさに口をつぐんでしまったKさん。
 M君のいとこが、自分のいとこと同じ勤務先であるKさんの応募に気づき、何か漏らしはしないかと気が気ではありません。C社に合格したならまだしも、落ちた時には……。
 面接の連絡が入る前にもかかわらず、Kさんはすっかり考え込んでしまいました。
サクセスポイント
今回はココが問題!
マッチングの幅
最近の求人は、新規事業立ち上げなどの場合を除くと、基本的に即戦力を求める欠員募集がメイン。辞めた前任者と同じキャリア、レベルを求められるため、仕事と人材のマッチングの幅が狭いケースも少なくありません。転職者は詳細なキャリア提示とアピール術が必要な時代といえます。
これでサクセス!
転職の糸口
人材バンク活用者の中には「この企業に応募したい」とねらい打ちで希望を述べる人もいます。一般に募集を行っていない企業や、求人広告を出していない企業に、転職の糸口を作るテクニックです。
万一不合格の場合でも、イメージや社名だけで希望したのではなく、キャリアプランに根ざした企業選びなら、希望者に合う新たな企業の紹介へと続きます。そのためにも、人材バンクをうまく活用するには自分のキャリアを見極めた会社選びが大切。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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