転職失敗談2
英語のお仕事
Iさんが興味を持っていたサイト翻訳の仕事は外部に発注された。しかし、仕上がったページはミスの嵐で……。(→前編はこちら
バックナンバー
見つかるミス
リーダーのH氏がどこからか見つけてきた翻訳家に頼んだことで、予算内に収めることができた英語版サイトの製作。一度は自分が立候補しようかと迷っただけに、Iさんもその後の成り行きが気になっていました。
 仕事の合間に、完成したサイトを何気なく覗いてみたIさん。思わず眉をひそめてしまいました。
 冒頭部分にざっと目を通しただけで、スペルの間違いや細かい文字抜けをパラパラと見つけてしまったのです。ケアレスミスの範囲内とはいえ、
プロの翻訳家らしくない
 と首をひねらざるを得ません。
 ともあれ、放っておいては問題です。そっと席を立ち、H氏に報告すると、
「えっ、ほんとに?いやー、ギャラを値切ったから雑な仕事されたんだろうな。よく言っとくから」
 驚きながらも、自分の探してきた外注先だけに責任を感じてか、恥ずかしがっている様子。ところが、Iさんが驚いたことには、
「もう納品までギリギリだし、訳者のところへ戻してたら間に合わないから、Iさん、直してくれないかな。すまない」
 と、かえってチェックを頼まれてしまったのです。
「私、プロじゃないのに大丈夫ですか?英語も日常の読み書きは出来ますが、専門的な文章の表現になると自信ありませんよ」
「大丈夫、大丈夫。難しい表現は無いはずだから、分かる範囲で明らかな間違いをつぶしていってほしい」
 結局押し切られ、Iさんは英訳文のチェックを担当することに。
 改めて全文を丹念に見ていくと、やはりあちこちに綴り間違い、文字抜け、文法間違いが見つかります。
 それぞれは些細な間違いですが、とにかく数が多い。プリントアウトしたものに赤ペンでチェックを入れていくと、たちまち赤色で埋まってしまいました。
「これだけの間違いがありました。予算も関係あるかと思いますが、難しい仕事でもありませんし、次からはもう少し丁寧なところにお願いした方が……」
 さすがのIさんもあきれ顔でH氏に釘を刺してしまいました。
翻訳家の正体
こんなやりとりが密かにあったおかげで、件の英語版サイトは無事に納品されました。クライアントからの評判もなかなかで、関連企業や商品説明のサイトも、順次英訳していって欲しいと追加注文が入ったほどでした。
 今度はスケジュールも予算もきちんと組めるはず。もう少しマシな翻訳家に声をかけるだろうと予想していたIさんでしたが、あっさりと裏切られてしまいます。
「Iさん、ちょっといいかな……今の仕事の手が空いたら、こっちの英文チェックしてくれないか」
 H氏から差し出されたのは、新たな英訳文のデータ。
「もしかして、前と同じ人に頼んだんですか?」
「え、うん。予算とかの関係でね……。翻訳そのものに大きな間違いはないと思うし、細かいところだけだから、あとはIさんがフォローしてくれれば……」
 Iさんが面白いはずはありません。自分も夢見た仕事で収入を得ているのに、こんなに荒い仕事をするなんて。ついでに自分がその尻ぬぐいをするなんて。
「こんな人でもやっていけるなら、自分だって出来るんじゃないの?」
 よけいな仕事にプリプリしながら、つい転職を思い描いてしまいます。
 転職への第一歩とも考えながら、英文のチェックを続けていたIさん。ある日残業していると、先輩社員が声をかけてきました。
「お、めずらしい。Iさんが残業なんて。例の英語ページ?これ、あれでしょ?Hさんの奥さんのやつでしょ?」
 さらに詳しく話を聞くと、H氏は一連の英訳作業を、自分の妻にさせていたと言うのです。無論、破格の低予算ながら、外注としてしっかりギャラも発生していました。
 Iさんが「プロらしくない」と訝しんだのも道理。H氏の妻は10年前に英文科を卒業した専業主婦で、昔取った杵柄を引っ張りだしていたというわけです。
「Hさんとこ、マンション買って子供が生まれて、立て続けだったからなぁ。懐具合も厳しいんだろう」
 子供をあやしながらの慣れない仕事なら、ミスが多いのも納得です。
 言うだけ言って、先輩社員は席を離れていきました。後に残されたIさんは、無性に腹が立ってきました。
「Hさんちの家計のために、なんで私が。こんな人の下でもう働きたくない!」
 と一念発起しかけるものの、
「こんな強力なコネでも無い限り、翻訳の仕事をとるのって難しいのかも……」
 かえって迷いを深めたりと、判断がつきかねているようです。
サクセスポイント
今回はココが問題!
英語の仕事
英語を使った仕事は就職・転職シーンでも人気ですが、未経験にはハードルの高いジャンル。特に外資系の募集の場合、TOEIC取得者が詰めかけ、平均点が高騰してしまうこともよくあります。が、実はTOEIC高スコアの未経験者よりも、電話の取り次ぎなど日常で英語を使い慣れた経験者のほうが好遇されることも。
これでサクセス!
英語キャリア
英語の現場といえば、外資系企業、貿易関係、翻訳関係など、いきなりハイレベルな仕事をイメージしやすいのですが、実は一般事務の中にも簡単な読み書きレベルの仕事があります。いきなり英語主体の現場に飛び込むことは難しくても、メールやFAXなどで英語に触れる機会のある仕事からレベルアップしていくことを目指しましょう。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
バックナンバー

▲ページのトップへ