転職失敗談2
祭りの前夜
「みんなで頑張れば出来る」が口癖の女性マネージャーYさん。納期前はいつもてんやわんや。そこに助っ人として呼ばれたH君は……。(→後編はこちら
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前夜祭体質
高校の文化祭や、大学の学園祭。本番よりもその前夜の
「このままじゃ間に合わないから、徹夜だ!」
 という忙しさ。その中にある、独特の高揚感が楽しかったと、長く記憶する人もいます。
 事実、旅行やお祭りといったイベントは、始まるまでが楽しい、という言葉もあるのですが……。

「アプリケーション開発部各位
 現在開発中の××社の流通システムですが、若干スケジュールが押していて、助っ人が必要です!
 どんな小さな仕事でもかまいません。簡単な手伝いでもかまいません。
 時間の空いてる人、手の空いてる人、ぜひぜひ助けてください!差し入れだけでも結構!」
 繁忙期のある日、エンジニアのH君(28歳)の元に、このようなハイテンションのメールが届きました。
「まただよ……」
 メールの主は女性マネージャー・Yさん。文面の印象通り、明るく活発なタイプ。何をするにも「みんなで頑張ろう!」を口癖にチームメンバーを引っ張る上司でした。
 が、その反面詳細なスケジューリングが苦手。納期前は決まって前記のようなメールが社内に一斉に配信され、ドタバタが展開されます。
 見かねたH君が一度、
「このスケジュールでこの納期は最初から無理ですよ」
 と指摘のメールを送ったのですが、返事は、
「頑張れば出来る!いざとなったら徹夜すれば出来るよ!」
 という、良く言えば恐ろしいほど前向き、悪く言えば馬耳東風なものでした。
 そう、Yさんは多少の無理でも、みんなのやる気と頑張りで乗り越えることが好きな前夜祭体質だったのです。
気合い一発
以前、H君はYさんが指揮を執るプロジェクトに助っ人として呼ばれたことがありました。日々の業務を片づけた6時7時からのスタート。
 現場では、Yさんがワッショイワッショイと気を吐いています。
「大丈夫、なんとかなるよ!」
徹夜したら時間はあるある!
 そこにYさん子飼いの、これまたパワフルな部下が、
「夜食でえ〜す!」
 と、コンビニで買いだししてきた食料を投下。どことなく楽しそうな雰囲気も醸しながら、長丁場の残業がスタートしました。
 残業の多いエンジニア業界とはいえ、ハナから徹夜を想定すべきではない、あくまで業務時間内に仕事をすべき、という考えのH君にとって、これはだらけた仕事風景としか感じられません。
 トラブルや予測できない事態で、やむなく納期ギリギリというのならまだしも、Yさんのスケジュールは最初から深夜残業・徹夜を組み込んだ上のもの。これではいざというときの対応が、気合い一発になりかねません。
 またYさん以下、気合い仕事が出来るのはみんなが独身者という環境もあるようです。妻帯者のH君は、奥さんを自分の深夜帰宅につきあわせるのが心苦しかったのです。
「せめてYさんが彼氏でも作ってくれたら、僕の気持ちも少しは分かってもらえるだろうに」
 連日の泊まり込みをバリバリこなすYさんを、恨めしく眺めていたのでした。

 そんないきさつがあってから、H君はYさんのメールをすべてスルーしてきました。
 そんな彼に業を煮やしたのか、本当に人手が足りなかったのか、ある日、
「H君、今忙しい?君の力が必要なんです!」
 というお誘いが……。
 あいかわらずのYさん節に、返事を打つH君の指に、思わず力が入ります……。

(→後編に続く)

pen2 残業・徹夜が普通のYさんに、真っ向から対立したH君。疑問点・不満点を箇条書きにしたメールを突きつけるが……。次回、後編へ続く。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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