転職失敗談2
食の恨みは……
A社の名物である豪華な社食は、上層部と成績優秀者だけが使える“雲の上”の世界だった。1年が経ってもそこに入れないH君は不満を抱えはじめ……。(→前編はこちら
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“社食知らず”のグループ
最上階のゴージャス社員食堂。社員の福利厚生を謳っていながら、実質の利用者は社長以下要職者・成績優秀な営業マンに限られていると教えられたH君。
 いっそ、そのまま一般社員には縁のない食堂であったなら、H君の心もかき乱されずにすんだのですが、同じ下積みの新人営業マンの中にも、先輩のおこぼれで接待同行をしたり、大口の契約をまとめて自力で権利を勝ち取る者が現れはじめました。
 一人抜け、二人抜け……。気がつけば、H君の周囲はほとんどゴージャス社食を経験済み。
 ところが、当の本人は営業成績が今ひとつなのか、巡り合わせが悪いのか。やっと契約をまとめてきても、
「このクラスの売り上げでは、“上”は無理だな」
 と上司からストップがかかったり、大口の顧客予備軍を引っ張ってきても、運悪く要職者の利用日と重なってしまったり。周囲は
「ゴージャスって言ったって、社食は社食だ。たいしたことない。思ってるほどすごくないよ」
「だいたいお偉いさんばっかりで肩がこる。絶対駅前のラーメンの方がいいって」
 などと慰めてくれるものの、入社から一年以上が過ぎても、まだ“上”にあがれないH君は
「結局経験出来たからそう言うんだよ」
 と、ひがむ気持ちばかりが膨らんでいきます。

 社内にはそうした“社食知らず”の営業マンたちが何人もおり、なんとなくグループを形成していました。H君もいつのまにかその仲間に入るようになっていきます。
 不遇をかこちながらのランチは、自然と会社への不平不満で大盛り上がり。特に給料日前の懐具合が寂しい時期には、格安でシェフのランチに舌鼓を打つ同僚たちに腹も立ちます。
「あんなところに使う金があるなら、社員に還元しろっての」
「接待に使うったって、いつも同じじゃ変わりばえもしないだろう」
 最初はおもしろがって会社の悪口を並べ立てていたH君でしたが、それも慣れてくると
「このままここでブツブツこぼしてたら、一生流されて終わってしまう
 と、危機感を抱くようになります。その上悪口仲間の先輩の一人が、何の予兆もなく、
「俺、ここ辞めることにした」
 スパッと転職したことを受け、自分も新天地探しを思い立ったのでした。
話しにくい転職理由
しかし実際に転職活動をはじめてみたものの、ネックになるのはその理由。
 とりかたによっては“食の恨み”にもなる本音であり、突き詰めれば営業成績の話にもなり、どうしても歯切れが悪くなってしまいます。
 幸い、A社のゴージャス社食の話題は、一時ニュースや業界紙を飾ったこともあったため、同業他社の面接では
「A社って、ニュースになってたあの?」
 とか、
「すごいらしいね、おたくのレストラン。ほんとに社員食堂なの?」
 など、かなりの確率で質問されました。それを糸口に、
「そうなんです。色々と豪華なんですが……その派手な社風が合わなくて」
 と転職理由として説明。しかし
「派手ねえ……。ま、うちは地味〜な会社だけどさ」
 と、逆に企業の劣等感を刺激してしまい、チクリとやられたり。
 好意的な対応でも、
「そうだね〜派手にやってるもんね〜Aさんは。やっぱり、あれなの?派手にやってきて、そろそろ無理が出て来てたりするの?だから転職を?」
 などと根掘り葉掘り。A社の実情を探るような質問をするだけしておいて、結局不合格に。
「面接ったって、会社に対する興味本位の質問ばっかり。誰も俺に興味ないのかよ」
 連敗にふてくされて面接を重ねているうちに、H君はある面接官からズバリと言い切られます。
「君、社食の話になるとあからさまに嫌な顔をするね。そのくせ派手な企業体質が合わないという割には、具体的な話になるとしどろもどろになる」
 またもA社に探りを入れられる質問かとむくれる気持ちと、社食を利用したことのない引け目から、ついむっつりとしてしまっていたのです。
「社風が派手だとかなんとか言ってるけど、A社の勢いのある営業についていけてなかったんじゃないの? 目立つ会社だから、おとなしいタイプはやりにくいのかもしれないが……」
 圧迫面接の一種だったのでしょうが、本音を言い当てられた形になったH君は、さらにしどろもどろに。そんなH君の様子をみて、面接官はこう結びました。
「そんなに不満が顔に出るようじゃ、営業としてはどうだろうねえ」
サクセスポイント
今回はココが問題!
面接のタブー
転職理由に現状の不満点をあげることは厳禁。また動機や仕事内容の説明で、具体性が無いと説得力に欠けます。聞かれれば答えるという姿勢も積極性の面でマイナス。
あらかじめ採用側が知りたいポイントを押さえておけば、面接でも職務経歴書作りでも役に立ちます。
これでサクセス!
採用側が知りたいポイント
「転職理由」……具体的で前向きであること。すぐに辞めないかをジャッジします。
「実務経験の具体例」……営業の場合、販売実績や取扱製品など、実際の数字もある程度必要です。
「アピールポイント」……これから何ができるのか、何が得意かなど。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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