転職失敗談2
聞けない待遇
専門学校に入り直し、異業種転職を目指すTさん。人材バンクの紹介で急成長中の企業と出会うのだが……。(→後編はこちら
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異業種からの転職
新卒入社の職場で定年まで勤めることはレアケースになりつつある現代。人生のステージにおいて、職場を「仕事入門企業」「キャリア形成企業」「勤め上げる企業」などに分類することが出来そうです。

 流通系企業の営業マンをしていたTさんは、プログラマーを志し一念発起。退職して専門学校に入り直した人物です。
 専門学校を卒業し、いよいよ転職活動を始めたのですが、25歳を越えての未経験からの応募ということで、なかなか面接に進めません。
 そんな中、いくつか登録していた人材バンクのうちの一つが、
「少々個性的な企業ですが、成長株で……」
 と持ってきたのが、ソフトウェアハウスのO社。
「株式会社としてはまだ1年そこそこですが、株式化する前にはすでに10年ほどの社歴があります。そのころから電機メーカーのMさんとか、Sさんなんかと主に取引されてきて、目下、事業拡大中です」
 と示す通り、社員の平均年齢も若め。それだけに
向上心や勢いだけの企業じゃないのか?」
 と心配になったTさん。
 しかし少ないチャンスだからと、ひとまず面接に出かけました。
惚れ込んでいたなら
対応に出たのは、四十代前半ながら、テンションは二十代といってもいいほど若々しい社長。
「うちはみんな仕事が好きで、仕事が趣味の人間ばっかり。でも家庭的な雰囲気で、社全体が大きな家族みたいなノリです」
 なるほど社内を見ると、社員たちは互いに飾らない様子で仕事をしていて、アットホームな雰囲気。
「社屋も最近こちらに越してきましてね。交通のアクセスが良くなって社員もよろこんでいます。元の社屋は今、社員寮にしていますから、希望すれば住むことも出来ますよ」
 と笑う社長の言葉どおり、手作り感漂う職場のようです。
 しかし、Tさんは待遇面で少々不満があったことに加え、
「僕、ナアナアな雰囲気って苦手なんですよね。家族的な中にうまくとけ込めるか心配です。それに急成長タイプの企業は、若いうちは良くても先々無理が出てきそうなので、せっかくですが今回は……」
 と人材バンクに申し入れたのでした。
 この転職で骨を埋める企業を探していた訳ではありません。とはいえ、キャリアを形成する期間も決して短くはありません。
「先方は乗り気だったのですが。残念ですねえ」
 と引き止める人材バンクの担当者に、
「この職場に惚れ込んでいたなら、気にならなかったのかもしれませんが」
 と話し、Tさんは選考を辞退しました。
 その後幸いにもマッチする別の企業と出会い、Tさんはその企業に転職。
 それっきりO社のことは忘れてしまうはずだったのですが……。

(→後編に続く)

pen2 見事、異業種への転職を成し遂げたTさん。しかし再び転職活動を始め、またしてもO社と出会うことに……。次回、後編へ続く。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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