転職失敗談2
聞けない待遇
異業種転職から2年。キャリアアップを目指し再度転職活動を始めたTさんが再び巡り会ったのは、過去選考を辞退したO社だった……。(→前編はこちら
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プチ・シリコンバレー
25歳を過ぎて未経験での転職。また待遇面での兼ね合いを考えたこともあって、Tさんが転職した会社の技術レベルはそれほど高いものではありませんでした。
 加えて、前職が営業ということも配慮されてか、クライアントへの商品説明に始まり、コンペでのプレゼンや受注交渉と、技術者としてではなく、技術的知識のある営業として扱われることが多かったのです。
 社内では“売上管理の出来るプログラマ”として頼りにされる場面も増えていたのですが、
「これでは何のために転職したのか分からない」
 と悩むようになったTさんは、スキルアップ面での頭打ち感もあり、再び転職することを決めます。
 そして再び人材バンクに登録。人材バンク自体は2年前の転職でも利用経験がありましたが、その時はO社の選考を辞退したことがあり、なんとなく気が引け、今度は違う会社に登録しました。
 しかし企業の紹介を受けていたところ、またもやそのO社の名前と再会したのです。
「まだあの会社、人を探してたんだ」
 驚いたTさん。自分が応募した過去は伏せ、興味半分でデータを聞いてみたところ、以前より待遇も改善されています。
「この会社はここ2〜3年での伸びがすごいですよ。単なる下請けの域を出て、本格的に大手メーカーM社と業務提携しましたしね。スキルの伸びもすごいです。アメリカ、インド、韓国、中国、モンゴルと、各国の人材が次々集まってきて、今従業員の三割は外国人。ちょっとしたシリコンバレー状態ですよ」
 多少持ち上げ気味に説明する担当者の話を、雑談感覚で聞いていたTさん。
 しかし実際の仕事内容の説明に入ると、その技術レベルや仕事の面白さにぐいぐい引き寄せられていました。
「たった2年でこんなに変わるなんて。あのときこっちに入ってれば……」
 悔やんでも悔やみきれず、ダメ元でこう申し出たのです。
「実は、この会社を2年前に一度受けてるんです。そのときは待遇面で不安があって、選考の途中で辞退してしまったんですが、こうしてお話を伺うと、今は非常に魅力的な職場だと思えます。無理は承知ですが、もういちど応募することって、可能でしょうか?」
優秀な外国人
「ええー?そうなんですか!2年前にねえ……。一度聞いてはみますが……基本的に同じ企業に二度応募するっていうのはあまり聞きませんし……」
 尻込みする担当者に頭を下げ、Tさんは引き上げてきました。ところがその翌日、早くもTさんの携帯が鳴ったのです。
「Tさん、OKですよ!もう一度面接してくださるそうです!」
 担当者が正直に話を持って行ったところ、社長は
「こっちから断った相手ならいざ知らず、以前こちらが乗り気だった相手だ。会っても時間の無駄にはならないだろう」
 と快諾してくれたとか。
「いやー、O社の社長さん、ざっくばらんな方で良かったですねえ!これが変にプライドのある人だと、ネチネチ嫌みの一つも言われるところですよ!」
 担当者も嬉しそうです。
 そして改めて社長と面談の時間を持ったTさんは、2年越しでO社に採用されることになったのでした。
 人材バンクの話どおり、O社の職場は外国国籍の従業員が目立っていました。
「君もそうだけど、うちは優秀な人材、今役立つ人材なら、先入観無しで採用する」
 勤務初日、Tさんにそう説明したのは社長。
「彼ら外国人スタッフは、元はそれぞれの国や企業から研修として派遣されて来た技術者だ。研修期間が終わればそのまま帰ってしまう人もいるが、多くは残って仕事をしたいと希望する。そういう人材をうちでは積極的に採用している。彼らは公費や経費でやってくるぐらいだから、本当に優秀な人材なんだ」
 その言葉どおり、Tさんの同僚になった外国人スタッフたちは実に優秀でした。日本語は完璧にマスターし、中には日本人に代わってISOの申請まで手がける人もいるぐらいです。
 国籍を問わず優秀な人材に囲まれる嬉しさと、適度なプレッシャーの中、Tさんの勤務は始まりました。
 ところが、しばらく勤務していると、こうした外国人スタッフだけでなく、日本人スタッフの出入りも頻繁なことを知ります。
「それだけフットワークの軽い職場ということなんだろう」
 と楽観していたTさんに、ある同僚が訊ねました。
「Tさんはどのぐらいうちで勤めるつもり?」
「まだ、入ったばっかりですから、辞めるとか考えてませんよ」
「でも、いずれは早いうちに移るでしょ?」
「どうしてですか?」
「だってこの会社、退職金出ないじゃない」
 採用の際、待遇や手当などの条件はこまかくチェックしたTさんでしたが、退職金はあまりに当たり前の条件だと思い、確認を怠っていたのです。
「1年で辞めても、30年勤めて辞めても一緒。だからうち、期限つきで国に帰る外国人の採用が多いのよ」
 転職早々、また追い立てられるTさんでした。
サクセスポイント
今回はココが問題!
転職の敗者復活戦
不採用となった企業に再度アタックすることは無論、応募者側から断った場合でも、再度話を持ちかけることは容易ではありません。ただし事情が変わってどうしてもという場合、人材バンクや紹介会社など間にワンクッションおいて企業と接触していたなら、話ぐらいはしてもらえるかもしれません。しかし、その先はそれぞれの状況次第。企業と応募者の関係は一期一会が基本です。
これでサクセス!
条件確認と将来性
転職先の将来性を判断することは難しいもの。それは応募者のみならず、採用担当者も同じ事。現状の待遇を優先させるか、将来性に賭けるかは、結局応募者の志向によるものです。ただし「貴社の(業界の)将来性に惹かれて」を転職の志望理由にするのは控えましょう。一般的で漠然としており、担当者の受けも良くない一言です。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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