転職失敗談2
エリート営業マンのユウウツ
故郷に戻ったEさんは、持ち前の営業力を武器に、幹部候補として新しい職場に打って出ようとするが……。(→前編はこちら
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逆風
Eさんが転職を果たしたのは、故郷の地場産業メーカーU社。営業部長補佐という肩書きをもらい、早くも幹部候補として期待されている模様です。
こうして帰ってきた、十数年ぶりの故郷。勝手知ったる土地と思いきや、実際に暮らしてみると風土や道路事情にも変化が見られ、かえってブランクが実感されます。また都会暮らしの長さが、Eさん自身を変えてもいました。
「Eさんて、大学から東京?どんなとこで遊んでたの?“合コン”とかした?」
地元で育ち、就職した同僚から寄せられる質問。大した内容でもありませんが、これもコミュニケーションの一環と、Eさんは乞われるままに都会生活のあれこれを話します。ところが、一部の社員の受け止め方は違っていました。
「ちょっと東京に行ってたからって、自慢して
Eさんは帰郷と同時に土地の方言に戻っていましたが、それでも言葉の端々に残る標準語のイントネーションにケチをつける人まで。
「もともとこっちの人間のくせに、いつまでも都会風吹かせて
異質なものへの条件反射的な拒否反応。その複雑な感情の中で、これから骨を埋めるまで勤め続けていかなければならない……そう考えるとEさんも思わず憂鬱になります。
営業・ご近所風味
さらに、仕事の面でもEさんは壁にぶつかっていました。
首都圏でトップセールスを誇っていた営業手腕には少なからぬ自信を抱いていたEさんですが、ここでは営業スタイルそのものがまったく違っていたのです。
顧客は企業から個人商店や有限会社などになり、アグレッシブなトークは嫌われ、のんびりと一日中でも雑談に付き合えることが大前提に。
新規開拓の必要も無くなり、Eさんが得意としていた飛び込み営業などしようものなら、
「あー、本町の方は××興業んとこの客が多いから、下手に手を出しちゃ駄目。他所さんと揉めるのはご免だから」
とストップがかかる始末。そのかわり、
“将来の役員サン”には大事な付き合いがある」
と駆り出されるのは、勤務先が協賛になっている花火大会の運営スタッフに、業界主催の清掃運動のボランティア……。もともと土日返上も珍しくない職場にいたEさんですが、このご近所付き合い風味には面食らい気味。
「こんなことしてて、営業といえるのだろうか?」
一方、私生活でも変化が起こり始めていました。Eさんが戻ってきたことで安堵した両親が全面的に引退し、町内会の役員に地域の役割分担、青年会に入って夏祭りの世話役など、もろもろの“お付き合い”がEさんの肩にかかってきたのです。
平日は“役員候補”として、休日は“家長”として。土地の有力者とのディープな付き合いを繰り返すEさん。
「人付き合いのスキルはあがりましたよ。ただ、ここではそれがそのまま営業スキルなんだよね。昔のような営業はもうできないだろうなぁ。すっかりぬるくなっちゃって……」
サクセスポイント
今回はココが問題!
田舎暮らしの注意
よく言われるのは「田舎暮らしは共同生活」ということ。地域性に違いはありますが、Uターンすることで思わぬ役割分担が増えることも。プライベートのみならず、仕事面への影響も考えねばなりません。
これでサクセス!
キャリア形成の違い
キャリアの形成は、地域によって違いが出ます。同じ仕事・同じ業種であっても、スタイルや必要な知識・技術がまるで違うということも。今まで築いてきたものがそのまま役立つかどうか、またこれからのキャリアはどうやって作られるのか。仕事面で妥協せずにU・Iターンを考えるのならば、考慮しなければならないポイントです。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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