転職失敗談2
年上の焦り
新卒採用者に混じって新しい仕事をスタートさせたRさん。中途採用である分、飛びぬけた存在であろうと奮闘するのだが……。(→後編はこちら
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中途採用の面目
 転職後の待遇は事前に十分話し合い、すりあわせを行ってから入社するもの。
 しかし、提示されたとおりの待遇ではなかったり、はたまた転職者の方で希望が変わってきたり。入社後に交渉が再スタートすることも珍しくないのです。

 営業職からIT系技術職へ、キャリアチェンジを果たしたRさんは27歳。前の職場を退職し、技術講習や訓練を受けた上で新しい職場へと移った経歴の持ち主でした。
 たまたま春先の新卒シーズンとぶつかったため、Rさんの入社はその年の新人たちと同時期に。周囲の“同期生”たちは20歳〜24歳ほどで、年齢差も大きくはありません。Rさんは常に周囲の同期たちから、一歩先んじた存在であるよう気を配り、果敢に仕事に取り組んでいました。
 幸い、営業経験から弁が立つRさんは、早くも現場へと投入されていきます。
 商談の場に同行し、営業と技術者を仲介したり、プロジェクトの設計に意見を述べたり。
 特にRさんの意見には、営業ならではのコスト感覚、顧客の視点があると評価が高く、
「技術者だけで話すのとは全然違う」
 と使われる場面も増えていきました。
 そのころ他の新人はといえば、OJTの真っ最中。業務時間外も勉強会と称して、連日の技術研修に没頭する時期です。
 すでに即戦力として活躍するRさんは頭一つリードしている状態で、中途採用の面目躍如といったところでした。
 しかし、入社して1ヶ月ほどが経ったころ、Rさんは自分から
「新人の人たちが研修しているように、僕も個人的に社で勉強したいんです」
 と申し出たのです。
個人的な勉強
 即戦力として現場で忙しい毎日を送っているRさんでしたが、現場で使われているといったって、あてにされるのは営業スキルばかり。肝心の技術の習得はかえってはかどっていないことに気が付いたのです。
 そんなRさんに比べ、目下だと思っていた新卒入社の社員たちは、研修を経て、この一月で技術者としての経験値をかなり上げている様子。その成長ぶりを目にし、
「今は自分が先を行っていても、この分ではすぐに追い抜かれてしまう。そうなったら自分はずっと営業のままだ」
 Rさんは焦り始めたのです。

 Rさんの勤務先は毎月一度、チームリーダーとの面談がセッティングされていました。待遇や仕事内容について話すことが出来る上、リーダーに直接話しにくいことなら先輩社員を通じて相談することも可能。不満や要望を上に伝えやすい職場だったのです。
 その面談の席でRさんは先輩社員に、自分も技術研修を受けたいと申し出たのです。
「新人が受けてる研修に参加したいっていうことか?」
「いえ、そうではないんです。それとは別に、個人的に必要な技術の勉強をしたいんです」
 今はクライアントからクライアントを飛び回る毎日。その業務をこなした後で会社に戻り、スキルを磨きたいというのです。
 しかし、今になって新人に混じり机を並べることには抵抗がありますし、かといって自宅では設備も整いません。そのため夜間の職場を使わせてもらいたいとのこと。
「まあ、個人的に勉強する分には、いいと思うよ。R君の気持もわかるから、上には言っとく」
 と先輩は快諾。そこで、Rさんはある希望を付け足したのです。
「あの、その勉強の時間なんですが……」

(→後編に続く)

pen2 Rさんが願い出た、自主学習についてのある希望。これが彼の評価を変えてしまうことに……。次回、後編へ続く。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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