転職失敗談2
年上の焦り
技術面での遅れを、就業時間後の勉強で取り返したいと考えたRさん。職場の設備を使いたいと申し出たのだが……。(→前編はこちら
バックナンバー
残業代が欲しい
「勉強の時間なんですが、残業として扱ってほしいんです」
 新入社員に混じり、技術者として中途採用されたRさん。
 営業出身という身の上を買われ、主にクライアント相手の場面で即戦力として活躍していました。
 しかし、同時期に入社した新人たちが、研修を経てぐんぐんスキルアップしていくのを目にするうちに、焦りが生まれてきたのです。
 元々年齢的なハンディキャップがあるのに、技術面でも遅れをとるわけにはいきません。そのため、自主的な勉強を社の設備を使って行いたい……と先輩社員に申し出たのでした。
 自主的な勉強ならばと、先輩社員も快諾。ところが、Rさんの申し出には続きがありました。
残業代を支給してほしいんです」
「えっ、それは……」
 この要求には、先輩社員も驚きを隠せません。
 Rさんの職場の勤務規定は、
 ・入社後に一律の研修期間あり
 ・講習等の研修は就業時間外に行われ、残業代なし
 というもの。
 Rさんは中途採用ということで、新人向けの研修は免除されていましたが、いくら自主的な勉強であろうと性質は同じです。残業代の対象にはならないだろうと先輩も判断しました。
「一応言うだけは言うけど、うちは研修に残業代は出ないのが基本だから……かなり難しいと思う」
 消極的に話を引き取ったのでした。
リーダーとの交渉
 その後、先輩社員は自身の面談の席で、さらに上司にあたるチームリーダーに、Rさんの要望を伝えました。
「おう、いいんじゃないか? この世界、自分で勉強する気持ちが無いと、落ちてく一方だからな」
 予想通り、リーダーの反応も悪くありません。しかし次の言葉で一転、雲行きが怪しくなります。
「それがですね、その時間の残業代がほしいって言うんですよ」
「えっ」
「研修じゃなくて、自主的に居残りするからっていうんで……」
「じゃあ、新人とか、上級者向けとか、研修も色々あるじゃないか。あれじゃダメなのか」
「ええ、本人のレベルが、新人のとも、他の社員が受けてるのとも合わないって言うんです。あと、ハタチ前後の新人に混じることにも抵抗があるようで……」
「フーン、それならなおさら、残業代は出せないだろ。ちょっと俺から話してみるわ」
 こうして残業代問題は、チームリーダーからRさんへと差し戻されてきました。
「聞いたよ。自分で勉強したいって?」
「はい」
「感心だな。でも残業代もほしいって?」
「はい」
「うちの会社、研修じゃ残業代出ないってことは知ってるよな。自主的な勉強でも、勉強という点では研修と同じだ。残業代は出せないと思う」
「……」
「どうする?残業代出なくても、自習するか?」
「それは……ちょっと分かりません」
「じゃあ、もし自分の家に職場と同じ設備があったら、毎日家に帰ってから、自主的に勉強すると思うか?」
「……家に帰ってまではしないと思います」
「そういう考えでは、正直この世界でやっていくのは難しいだろう。仕事だからやる、というのでは、所詮自分から努力するやつに負けてしまう。大体どうしてそんなに残業代にこだわるんだ」
 疑問に思ったリーダーの言葉に、Rさんも少しずつ口を開き始めました。
 好きで飛び込んだ世界、技術的なスキルを上げたい。でも、やはり年齢なりの収入も欲しい……
「彼女がいるんですけど、向こうが、そろそろ……その、考え始めてまして……」
 Rさんは転職前から付き合っていた彼女と、結婚の話が持ち上がっていたのです。
「気持ちは、分からんでもない」
 Rさんに共感しないでもないリーダー。しかし、当初は向学心に燃えた人材と思っていただけに、残業代の要求をきっかけにRさんの株はずいぶん下がり、いまひとつ親身に力を貸してやろうという気にはなれなかったとか。
サクセスポイント
今回はココが問題!
給与交渉の難しさ
給与交渉は転職する上で避けては通れない問題。また給与アップは応募者からの交渉が基本ですから、しっかりと行ってしかるべきです。しかし難しいのはそのタイミングで、これを見誤ったがために、自分の印象を悪くしてしまうことも。
失敗しないためには、能力・出来る仕事やスキルを示した上で、交渉に入ることがポイントです。
これでサクセス!
こんな交渉は嫌われる
「あまりに早い段階から給与や賞与についてしつこく聞く」
「結婚・出産・マイホームなど、プライベートを持ち出す」
「今の収入について『苦しい』『きつい』などの心情に訴える」
「先々の昇進・昇級まで視野に入れ、確認する」
自分の言葉が相手にどのように受け取られるか、あらかじめ客観的に考えてみると良いでしょう。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
バックナンバー

▲ページのトップへ