転職失敗談2
キャリアの棚卸し
事務職として入社したMさんは、実質SEとして働く日々。年齢が上がるに従い責任ある仕事も任されるようになってきたのだが……。(→後編はこちら
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イメージと実質
 Mさんは実質システム・エンジニアとして勤務する31歳の女性。「実質」とつけたのは、Mさんの職場でのポジションが事務職、アシスタント扱いだからなのです。
 大学卒業後、事務として今の職場に入ったMさん。しかし人手不足と、本人の適性などから、徐々に技術的な作業も回されるようになり、気がつけば数年のキャリアを持つ、戦力の一人となっていました。
「でも周りは今でも私を、事務あがりっていう目で見るんです」
 理系大学や専門学校出身者がひしめく現場で、文系出身、最初は簡単な作業にも手間取っていたMさんの存在は異彩を放っていたらしく、なかなか認識を改めてもらえないのだとか。
 同期入社のSEたちは昇格し、ほとんどがマネージャー職として企画立案から管理までを見る立場に。技術者としてのキャリアを考えれば、これは仕方ないとMさんも納得していますが、Mさんが作業手順を教えた後輩SEたちまでもが、ここ1〜2年でこぞってチームリーダーになっていきます。
「別に出世したいわけじゃないんです。情報処理の勉強もちゃんとしてませんし、いわば現場で習い慣れしてきた仕事です。背負う責任を考えると、指示される立場もいいかなと思って。でも、30を越えたあたりからそうも言ってられなくなってきて」
 仕事の上で、徐々に求められることが増え、Mさんは交渉の矢面に立たされるようになってしまったのです。
プライドと気配り
 Mさんが任されるようになった仕事の一つが、現行システムの改善点を模索し、企画を立て提案するというもの。
「最初は『どうして私にこんな仕事させるの』って面倒に思ってました。でも、根っからこの畑の人間じゃない分、クライアントの視点に立ちやすいのかなとも思って。だから『こうした方が使いやすいだろう、助かるだろう』って正直に改善点をあげていったんです」
 しかし、この熱意が職場の技術者たちには真っ直ぐ伝わらなかったのです。
「誰だって、自分の作ったものに文句を付けられるの、面白くありませんよね。しかも自分よりキャリアも技術も下だと思ってる人間から」
 Mさんから“ダメだし”をくらうことになった技術者たちは、なかなか素直に作業に入ってくれません。会議でむくれて横を向いてしまう人、激高して声を荒らげる人……。
 彼らのプライドを傷つけないよう、持ち上げ、気を配り、仕事に向かわせる日々。
 その一方で、事務職としての仕事も残っているというアンバランスな面もありました。
「最近事務職を雇ってくれないので、人手が少ないんです。忙しい時期は派遣を頼んでしのいだりはしますが、やっぱり自社の社員じゃないので、丸投げにはできませんし、遠慮もありますし……」
 さらに、派遣社員は女性が多いため「女同士だから」という理由で、派遣スタッフを指導する仕事までもがMさんの肩にのしかかってきます。
 デスクの用意、ロッカーの整備、端末の使い方、目を通すもの、見てはいけないもの。派遣スタッフの“お世話係”です。時には昼食からの戻りが遅いスタッフに、上司に代わって注意するよう言われ、スタッフたちから反感を買うことも。
 あれもこれもで、気がつけばMさんは責任だらけ、敵だらけ。でも肩書きは無く、ポジションも曖昧で、あちこちに気を遣うばかりという、アンバランスな勤務実態になっていたのです。

(→後編に続く)

pen2 こじれたキャリアを転職で整理しようとしたMさん。しかしキャリアの棚卸しは難航し、迷いも生まれ……。次回、後編へ続く。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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