転職失敗談2
民主主義の原則
不正が横行する社内投票制度。ついに社員から不満の声があがり、システムの大幅な変更が行われたのだが……。(→前編はこちら
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社内投票の実態
 あらゆる人事は社内投票で決めるという“風通しのいい”A社。
 しかしその実態は、選挙委員長たる総務部長が筆跡を鑑定したり、メールを検閲したりとやりたい放題。
 転職したてのMさんは、派閥無所属という立場から総務部長の片腕に否応無しに抜擢され、投票箱をひっくりかえす毎日です。

 誰が誰に投票したか、総務部長が筆跡からリストを作り、あとで社長に報告していることは、すでに社内でも公然の秘密。
 また投票そのものも、派閥同士の票のとりまとめが横行。MVP社員選出の際なども、実力よりも存在感や、派閥内での力関係によることが多く、売り上げや実績通りに選び出されることはまずなかったのです。
 結局、投票という方法は社員が納得する人事を生むというより、社員の不満を封じる理由として使われている節がありました。
 おまけに、社長はその投票結果と筆跡リストを照らし合わせ、MVP社員とそこに投票した人物を厚遇する部署へ、反対にそうでない部署との差をつけているともっぱらの評判です。

 そんなネガティブな作業に引き入れられたMさん。ストレスがたまらないはずはありません。
 そもそも中途採用のMさんが、最近総務部長の指示で何やら動いていること自体が目につくため、
「総務部長と組んで、投票のウラを握るヤツ」
「あいつと下手に話すと、誰が誰に入れたかチクられる」
 などとありがたくない噂をたてられ、周囲と妙な距離まで出来てしまっていました。
 しかし社員の方でも、この社内投票の実態をただ黙って見ていた訳ではありません。
 社内投票のクリーン化を望む声は日に日に高くなっていました。
 そこで、一部の社員が提案する形で飛び出してきたのが、ネットを利用した電子投票システム。
 これならデスクから瞬時に投票が可能なため、投票率アップも見込めます。さらに未投票者のチェックも楽。そして、総務部長が投票箱をさらい、誰が誰に投票したかなどという、いやな探りを入れられることももうありません。
電子投票の抜け穴
「導入にコストがかかるんじゃないのか?! システムエラーなんかで不正が出ないとも限らないし」
 社員の多くが望むネット投票システムに、顔色を変えて反対を唱えたのは総務部長。
 これに対し、推進派はコスト的な負担もさほどではなく、時間的にも長所が多い。チェックはパスワードを知っている管理者だけが出来るため、不正もなくなるだろうと説き、結果、社長は電子投票の導入を決定したのでした。
 これにほっとしたのはMさん。ようやく選挙箱をひっくり返す、楽しくない仕事ともおさらばと、内心では誰よりもネット投票を望んでいた一人でした。
 事実、Mさんを煩わせていた投票にまつわるモロモロの雑事は、電子化を境にパッタリとなくなりました。
 ところが総務部長はというと、相変わらず投票の度に、謎の書類を手に社長と密談を重ねている様子です。
 ほどなく、その理由が噂となって駆け巡りました。
「総務部長は、ネット管理者のKさんから管理パスワードを聞き出したらしい。誰が誰に投票したのか、間違いなく調べて、社長に報告しているらしい」
 さすがに、パスワードを教えろという総務部長の求めを、K氏は拒んだそうです。しかし、
「もともと社長権限で確認が出来るはずだ。社長代理として私が確認する。これは社長も了承済みだ」
 とゴリ押しし、アクセス権を取得してしまったのだとか。
「思えばあの社長がネット投票をあっさり認めたのはおかしいと思った」
 と、愚痴っぽく語るK氏に、社員たちは怒りとあきらめを同じくし、深くうなづきあいました。
 Mさんは彼らと同じ気持ちながら、総務部長の片腕となっていた時期があるばかりに、ひとり、話の輪に入りそびれていたのでした。
サクセスポイント
今回はココが問題!
人事システムを知る
 入社前に人事のシステムを知っておくことは必須です。独自の評価システムを持つ企業は、小さな求人広告や会社説明文でも必ず触れているのでまずチェック。
 さらに面接などで、入社年次で昇格できるような古さがないか。あまりにも頻繁に制度を改革していないか。社員に対する役職者の比率が多すぎないか。部署内の最年長社員・最年少社員のバランスが悪くないか、などのポイントを調べてみましょう。
これでサクセス!
面接質問術
探りを入れる場合、通り一遍の返答で終わらないよう、ある程度の下調べが必要になります。たとえば「どのような社風ですか?」などの漠然とした質問では建前の返事しか返ってきません。
「投票制度があるとのことですが、投票率は高いのでしょうか? 業務への反映状況は?」など、具体的な回答を引き出せる質問をすること。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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