転職失敗談2
離婚率
遠距離恋愛を実らせ、めでたく結婚したHさん。しかしすれ違いの新婚生活に不安はつきず……。(→前編はこちら
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楽観的な彼女
 勤務時間の長さから、社員の夫婦がすれ違いを起こしてしまうS社。
 勤務の実態を知らない社外の女性と結婚すると、離婚率が高くなると諭されたHさんは、遠距離恋愛の彼女にそのことを説明したのですが……。
「いいよ、東京行く」
「でも、俺は仕事でほとんど家にはいられない。その間どうするんだ。友達もいないし」
「落ち着いたらバイトでも始めるよ。家でひとりで待ってるのもヒマだし、知り合いも作りたいし。大丈夫、H君が忙しくても浮気してるなんて疑わないから」
「でも、後になって忙しすぎるとか言っても遅いんだぞ?」
「大丈夫」
 深刻に考えるHさんとは対照的に、あっけらかんと受け止める彼女。極めつけはこの一言。
「そんなに忙しいんだったら、私が家のこととかした方が、H君も楽でしょ?
 このことばにグッと来たHさんは、遠距離恋愛に終止符を打つ事にしたのです。

 その後めでたく入籍するまで、二人は様々なイベントを経ていきました。結婚式や引っ越しの準備もさることながら、相手の親に挨拶にいったら、
「S社の販売といったら忙しいだろう」
 と父親に切り出され、
「このご時世忙しいぐらいが華だよ。男の仕事とはそういうもんだ」
 と励まされつつ、娘を託されるというエピソードも。
 またある時は会社の先輩夫婦が二人を自宅に招き、それとなくS社の大変さを彼女に伝えてくれたこともありました。
 そしてようやく同居をスタートしたのでした。
募る心配
「できたみたい。赤ちゃん」
 同居から半年ほど経ったある日、新婚家庭H家に衝撃が走ります。早くも彼女が妊娠したのです。
 無論、大いに喜んだ二人でしたが、さて産んで育てるとなると、またしてもHさんは心配を隠せません。
 危ぶんだ通り、平日に彼女と顔を合わせて会話があるのは3時間ほど。子育てに関して、Hさんは戦力になれそうもありません。
 Hさんは子育ての重圧が彼女ひとりにかかることに不安を募らせ、脳裏には「育児ノイローゼ」の文字がよぎる始末。
「大丈夫よ、みんなやってることなんだから。とにかくゴチャゴチャ言ってても産まれてきちゃうんだから。H君には仕事をがんばってもらわないと!」
 逆に励まされてしまいました。
 しかしHさんは内心、職場を変える事さえ考え始めていたのです。
「育児休暇が欲しいなんて、大それた事は言わないけど、せめて週のうち何日かは夕食を一緒にとれる時間に帰ったり、何かの時には休暇がとれるような職場にしておいた方がいいんじゃないか」
 いくつかめぼしい企業に目をつけたところで、Hさんは奥さんに転職の意思を打ち明けました。それを聞いた彼女は目を輝かせて感動……すると思いきや、
「転職ぅ?! いいじゃない、今のまんまで!」
「今のままだとちょっと忙しすぎるし、何かと時間的な自由が……」
「だから、赤ちゃんの事なら私がちゃんとします! それに転職したらお給料も減るんでしょ?」
「残業代とか手当とかは多少……。でも今のままの無茶な仕事の仕方も、ずっと続けられるかどうかわかんないよ。長い目で見たら、転職した方がいいと思う」
「でも、これからお金がどんどんいるんだよ?! それにせっかくS社に勤めてるのに、辞めるなんてもったいないよ。うちのお父さんだって、S社本社の営業マンだって、H君のことすごく褒めてたんだよ」
 大手S社のネームバリューから実家の父まで引き合いに出し、とにかく猛反対。
 この剣幕にHさんはたじたじ。転職話は引っ込めざるを得なくなりました。

 そしてさらに数ヶ月後。
 郷里の産婦人科医院には、めでたく一児の父となったHさんの姿がありました。仕事が忙しく、立ち会い出産も出来ず、朝一番の電車に飛び乗り、ようやく対面した我が子。
 その姿を見ながら、この子に将来人見知りされるのではないかと、一抹の不安を拭いきれないHさんでした。
サクセスポイント
今回はココが問題!
転職と家族
 家族の同意を得ているに越したことはありませんが、あくまでも転職するのは本人一人。家族の意見に振り回されている様子がアプローチ先の企業に伝わると、良くない印象をもたれることも。
 家族の意見や、家族の為にという転職理由は、共感されやすい反面、バッサリ拒否されたりと担当者によって反応が大きく分かれます。慎重に。
これでサクセス!
家族の反対
 いきなり「転職したい」と切り出したのでは、反対される可能性が高まります。
 家族の反対が予想される場合、まずは日頃から現状への不満や仕事の悩みなどをそれとなくこぼし、問題を共有しておくこと。その場限りの激情ではなく、冷静に、長い目で見て考えた点を説明することで、説得がしやすくなるでしょう。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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