転職失敗談2
“刺客”募集
社員のヤル気を養おうと、社長の指揮の下、独自のプロジェクトが立ち上げられた。しかしノウハウを持たない社員たちは……。(→前編はこちら
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現状脱却
「現状は健全な企業として機能しているとは言いがたい。いずれ立ち行かなくなる日がくる。その日をただ受け入れるのではなく、独り立ちしていけるような体力をつけなければいけない」
 天下り上司が多く、社員のモチベーションも低い社の現状を、誰よりも憂いたのは、なんと社長でした。
 社長も元はといえば、親会社からやってきた人物でしたが、社のあまりの現状に危機感を募らせ、せめて生え抜きの若手社員を育てなければと、あるプロジェクトを推進しはじめたのです。
 そのプロジェクトとは、さる海外アパレルメーカーとの提携。
 そもそも、そのメーカーの商品を日本で展開するとなった時に、専用の凝ったギフトケースを提案したのが、この会社の若手営業マンだったのです。
 親会社を通さない、しかもかなりの規模の仕事になりそうです。
「これこそ、現状脱却のきっかけになる」
 社長は早急に、無気力な天下り役員を交えず、ヤル気のある社員だけでチームを編成。そのチームリーダーに任命されたのがFさんでした。
 ところが、これらの社員たちも、今まで親会社からの流れで仕事をしてきただけに、外部の全く新規の仕事を立ち上げた経験がほとんどないのです。
 既存の社員だけでは経験的に不安だと判断したFさんは、許可を得て、新規に人材を採用することになります。
事業の核
 しかし、新規プロジェクトというだけでも今までの流れに逆らうというのに、さらに独自に人材を採用するとなっては、嫌が上にも天下り派の注目を浴びてしまいます。
「業界に明るいことはもとより、親会社から文句を付けられないようなキャリアの持ち主でないと」
「できれば今の空気を変えてくれるような、ヤル気と熱意のある、それでいて……」
 幸い親会社のネームバリューで少なくない数の応募者が集まりましたが、この採用をきっかけに、天下りの影響を脱し対抗勢力を作りたいという、なんとも壮大なプランが宿るせいか、採用基準は高く、なかなか絞り込めません。
 結局、プロジェクトの期日もあるため、当面必要な人材は専門分野の派遣で間に合わせ、正社員はチームを育てながら投入していくことに。

 さて、当面の業務のためにやってきたのは、パッケージのアートディレクションが専門のKさん。いろいろな企業を経験している上、クライアントの対応にも危なげが無く、作業もソツなくこなすというプロ。
「Kさんだったら、きっと社長も文句なしなのに……」
 どうしてこんな人材が応募に来てくれないのかと、Fさんはため息をつきました。
 この気持ちは社長も同じだったらしく、あるとき直々に、うちで社員として働くつもりは無いかとKさんに質問したのです。ところが……
「フリーで長くやってきたので、会社員としてのアンテナが鈍ってるというか、派閥とか企業とかが苦手というか……。一歩離れたところで自由に動き回る方が向いてるんですよ」
 とアッサリ逃げられてしまいました。
 がっかりするFさん。あきらめきれない彼は、さらに重ねて、あることをKさんへ頼み込みます。その内容とは……。
「それでは派遣だということを、周囲には伏せてもらえませんか? 新しい人の採用が決まるか、せめてメドがつくまで。Kさんはこのチームの核になる人です。その人が派遣となると、せっかく盛り上がってる社員のモチベーションが……」
 この掟破りの要望を前に、Kさんはかなり微妙な表情を浮かべていたということです。
サクセスポイント
今回はココが問題!
人を求める理由
 求人情報にはよく「求める人物」という項目が記載されています。その中身は「チャレンジ精神旺盛な人」「コツコツ努力する人」など、応募者に希望する要素がほとんど。こうした応募者にもオープンにする要望とは別に、例えば「社内に新風を入れてくれる人」「辞めた人の代わりになる人」「新人を育てたい」などの、人を求めるに至った理由というものが、必ず背後に存在しています。その背景に合致する人材であることが、採用の第一条件といえます。
これでサクセス!
求人の背景を知る
 採用理由を知る方法としては、面接や問い合わせの段階でストレートに聞く他に、人材紹介会社などを通じ、社内事情を絡めて知る方法もあります。求人の背景を知ることは企業の危険度チェックやミスマッチ回避の為にも有効。是非事前に調べておきたいところです。特に危険企業は、建前的な耳触りの良い話しかしない場合もあるので、離職率や現社員ではいけない理由など、時には突っ込んだ質問も投げかけて。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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