転職失敗談2
ヒラに戻りたい
新卒3年目にして2度目の転職に挑むSさんは、それまでのキャリアを全否定し、イチからのスタートを試みる。その理由とは……。(→後編はこちら
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消極的転職
 25歳のSさんは、目下転職を計画中。新卒3年目で転職経験もすでに1回あり、決して恵まれた経歴ではありませんが、現在勤務する広告業界のA社では、アルバイト8人をまとめるチームリーダーという役割を務めています。
 面接でもアピールできるキャリアだというのに、本人は
「リーダーといってもたいした事はしていないし……それにもう責任ある立場にはなりたくないんです。今度は出来るだけ人の多いところで、いろいろ勉強できる立場になりたいと……」
 と消極的。リーダー経験をほとんどアピールすることなく、新しい職場を探していました。
 面接では、仕事内容についての説明が甘くなり、逆に短期間で2回目の転職という点を追求されて、いつも結果は散々。それでもSさんは
「一から勉強するつもりで……」
 を口癖に、積極的に打って出ようとはしないのでした。
 そもそもSさんが、A社でリーダー格になるまでには、様々な紆余曲折があったのです。

 Sさんは、元々アルバイトとしてA社に採用されていました。
 新卒で入社した会社がどうしても合わなかったSさんは1年あまりで退職。すぐに次の職場に移る気にもなれず、まずはアルバイトでワンクッション、とリハビリ感覚ではじめた仕事だったのです。
ベテランのバイト
 Sさんが配属になったインターネット媒体部門は、社員よりもアルバイトが多かったこともあり、Sさんは居心地よく、周囲の同僚アルバイターと足並みを揃えながら、ゆるゆると仕事をしていました。
 ところがアルバイトが多いだけに出入りも激しく、1人辞め、補充され、1人辞め……と毎週のように送迎会を繰り返している内に、1年も勤めると、Sさんはチームの中で一番のベテランになっていたのです。
 くるくる入れ替わるアルバイトの顔ぶれや能力を一番理解しているのは、共に働くSさん。気がつけばバイトの仕事の割り振りから、ローテーション、悩み相談まで、その管理はSさんの担当になっていたのです。自分もアルバイトであるにもかかわらず……。
 Sさんをてっきり正社員だと思い込む新入社員も現れ、見かねた上司がこんな話を持ちかけてきました。
「S君、まだバイト待遇なんだよね。いっそ正社員になる気はない?」
 これにはSさんもビックリ。
 A社では正社員とアルバイトの区別は厳密で、採用枠も最初から別。アルバイトから正社員にスイッチする人はほとんどいなかったのです。
 なんとなくA社に腰を落ち着けていたSさんでしたが、そろそろアルバイターを卒業することも考えなくてはいけません。そこへ渡りに船のこの話。
「今から新しい会社をひとつひとつあたるより、ずっと効率がいいし、また一から人間関係を作るのも面倒だし」
 加えて“破格”の正社員登用で、仕事ぶりを認められたうれしさも手伝い、Sさんはこの話を承諾します。
「正社員になるには、いちおう面接とか受けてもらうことになるけど、内部からの推薦だし、そう固くなる事ないって。うちでは1年続く人は少ないのに、しっかり続けてきた実績もあるし」
 上司も力強く後押ししながら、こう付け足しました。
「それに正社員になったら給料とか待遇とかも良くなるだけじゃなくて、バイトみたいに雑用に追われることもなくなる。S君には正式に仕事としてメンバー管理をしてもらおうと思ってるから」
 正社員として採用された場合、Sさんにはチームをまとめるリーダーの仕事と待遇が用意されているというのです。

(→後編に続く)

pen2 上司の応援を受けて、正社員登用試験を受けるSさん。気難しい面接官や適性検査を経てやっと合格するが……。次回、後編へ続く。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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