転職失敗談2
ケチケチ経費削減からの脱出
社員の私物までアテにする経費削減体制のA社。ついに先輩の転職宣言も飛び出し、俄然危機感をつのらせたIさんは、自分も脱出を考えはじめるが……。(→前編はこちら
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先輩は止まらない
 転職を焦りはじめたIさんでしたが、日常の忙しさや、勝手の分からぬ転職への不安感から、すぐには行動に移せずにいました。
 しかし転職宣言をした先輩Kさんのほうは、その間にも着々と活動のコマを進めていきます。
「ネットで見たんだけど、こういう仕事もいいなぁと思って」
 最初は漠然と集めた情報で、次の仕事にあれこれと思いを馳せている程度でしたが、じきに
「今、そこのコンビニで買ってきたんだけど、この仕事とかどうかなぁ〜」
 堂々と転職雑誌を職場に持ち込みだします。
「Kさん、これちょっと見つかったらヤバいんじゃ……」
 Iさんの方が焦り気味で隠すようにしても、
「いいんだよ、もうバレたって。リーダーにはもうそれらしいこと話したし。それに転職決まらなくても、2ヶ月後には辞めるって決めたし」
 とあっけらかん
 こんな状態ですから、Kさんの退職はすぐに表沙汰になってしまいました。彼の行くところ
「Kさん、辞めるんだって? 次の仕事決まってるの?」
「まだ。決まんなかったら、しばらくのんびりするから」
 のやり取りが、毎日のように繰り返される始末。こうしたKさんの発言は、他の社員にも心理的な影響を与えていきました。
「次の仕事も決まらないのに辞めたいなんて、やっぱりこの会社そんなにヤバいのか……」
 他の社員がこうですから、Kさんの様子を最初から見聞きしていたIさんは、
「自分もいつ転職してもおかしくない、いや、転職すべきだ」
 という心境に達し、密かに企業情報を集めはじめました。
うちは掃き溜め?
 そうこうするうちに、Kさんの転職活動も新たな局面を迎えます。
「こないだネットで見つけた会社から、面接にこないかってメールが来ててさ〜」
「で、どうするんですか?」
「いや、もう面接受けちゃったのよ。夜でもいいって言うから、先週仕事終わってから」
「えー?! もうですか?」
「その結果が、さっきメールで届いてたんだけど……どうやら内定だってさ」
「ええー! すごいじゃないですか、おめでとうございます!」
 なんと『職が決まらなくても辞める』と言い続けていたKさんが内定をゲット。
 テレかくしめいた報告とは裏腹にやはりうれしかったのか、それ以降の仕事の引き継ぎスピードが飛躍的にアップするという反動が出ました。
 もっとも……
「あ、業界紙のファイリング、ちょっと残ってんだけど、あとは頼むな。あっ、納品書の整理、これも頼む」
 書類の整理が苦手だったKさん。今までデスクや引き出し狭しと詰め込んでいた書類をゴッソリとIさんに任せたのです。
「俺、他にも引き継ぐのがあって、こっち間に合わないから……悪いな」
 早くから転職活動を打ち明けていたことで、Iさんをすっかり“戦友”認定したフシのあるKさん。なかば甘えるように、自分が溜め込んだ面倒な雑用を押し付けてきます。
 それだけではありません。よほど内定がうれしかったのか、そこここで、
「早く辞めた方がいいよ。仕事なんかすぐ決まるって。どこの会社でもここよりはマシ」
 などと他の社員のお尻を叩いて回っているのです。そればかりか、調子に乗ったKさんは、さらに口を滑らせてしまいます。
「今度いく会社は、一人一台ノートPCの支給があるらしいんだ。まあ、今時フツーだよな。ココがビンボーすぎるだけで。やっぱこの会社は長くいるところじゃないってことだよ。先に辞めた××さんも『デキるヤツはさっさと辞めてく』って言ってたけど、まさにそう。最後まで会社にしがみつくのはどこにも行けないってことなんだよ」
 事ここに至り、ついにキレたのはなんとIさんでした。
 Kさんの雑用を押し付けられつづけたウップンも手伝って、
「自分だってここの会社を選んで入ったのに、転職が決まった途端、デキないヤツの掃き溜めのように言うなんて」
 と大憤慨。
「転職する気マンマンだったけど、Kさんみたいないい加減な人のアドバイスに従う気になれない。このまま残って、ここで納得いく仕事をしてやる」
 意地でも転職しないと意思を固めたようです。

 その後、Kさんはバタバタと大慌てといった印象で退職。転職先になじんだころには、もう
「世知辛い会社で、人使いが荒いの何の。簡単に内定出すと思った」
 などと友人知人に愚痴りはじめていたとか。
 そのころIさんは、納得できる仕事をするため、まずはデジカメ購入の予算確保に奔走していました。
サクセスポイント
今回はココが問題!
退職トラブル
 退職トラブルといえば企業や引き止める上司とのものが目を引きますが、同僚や後輩など仲の良かった従業員とも思わぬ軋轢を生むことがあります。
これでサクセス!
社員同士の軋轢
 気心が知れた間柄でも、転職していく者と残る者、両者の感覚にズレが生じ対立してしまうことも。内定の喜びにはしゃぎすぎるのは危険です。また、強引に有休を消化したりすると、そのしわ寄せが引き継ぎに響いたり、なかなか休めずにいる同僚を刺激したりすることも。最後まで同僚との調和を心がけて。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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