転職失敗談2
お願い!人員補充
新規採用を阻んだのは、退職者Oさんの告発だった。人手不足に陥った現場はたちまちすさんでいくが……。(→前編はこちら
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Oさんの告発
「Oが辞めるとき言ってたんだが、現場では随分余裕があるみたいだな」
「えっ!?」
 同僚のアシスタントOさんが退職し、人員補充を迫ったEさんに上司は意外な言葉を口にしました。
「あいつがなんて言って辞めていったか分かるか?」
「いえ……」
「ここでは自分のやりたい仕事ができない。自分が未熟でさせてもらえないならまだしも、プランナーの中には時間を持て余してネットを見たり、携帯いじったり、私用のメールをしている者もいる。そんな者をアシストするのは納得できない……こう言うんだ」
 Eさんはとっさに弁明しようとしましたが、上司は話を続けます。
「もちろん、プランナーはいろんなものから刺激を受けて仕事に反映する。はたから見て無駄に思える時間も貴重だとは常々言ってきたが、実は僕も最近のプランナーは緊張感に欠けるような気がしていた。さすがに携帯メールは目に余る。正直、Oの言い分ももっともだと思ったよ」
 これからはプランナーも気を引き締め、会社員としての仕事に責任をもってあたるように……そう厳しく言い渡され、Eさんはやっと解放されたのでした。
 その後、プランナー全員に同様の通達があり、一同は改めてデスクワークから掃除当番、業界紙のスクラップなどのこまごました作業まで、持ち回りで担当することになったのです。
 ところが、
「10月分のスクラップまだですか? 11月オレなんで」
「ごめん、ちょーっとバタバタでさ。でもこんなの必要なのかね。だーれも読んでないのにさ……もう10月分飛ばしちゃっていいよ
「おーい、ゴミ箱いっぱいだよ、当番誰よ」
「××さんですけど、今いませんよー? H店のクレーム処理で出かけましたから」
 規則正しいルーティンワークが苦手な一同は、決められた当番もつい飛ばしたり、忘れたりしがち。
 就業時間中のあからさまな携帯メールはなくなったものの、依然として職場は荒れ放題。ゴミ箱はあふれ、コピー機のガラス面は汚れっぱなしのままミスコピーを量産しまくっていました。
救いのパートさん
 最初は「お互い協力しあって」「気を引き締めて」などと口を酸っぱくして注意していた上司も、さすがに注意するにも限界があると悟りました。
 そして前言撤回。
「やっぱり補充しよう。ただし正社員でプランナーを採用するのは人件費的にも教育的にも無理がある」
 ということで40代の女性・Fさんがパートとして採用されたのでした。
 Fさんは事務経験豊かな働く主婦。出社のその日から電話も臆することなく取り、テキパキとオフィスを片付け始め、手まめにコーヒーまで出してくれて、一同大助かり。万事丸く収まったように見えたのですが……。
「Fさん、今週の土曜日お客さんが来るんで、プレゼンの手伝いをしてほしいんだけど」
「あ、私土日は出られませんよ」
「……じゃあ金曜の夜レジュメ作るの手伝ってもらえる? 今ちょっと、おしててさ」
「でも、私5時までですから」
「残業ダメなの?」
 パートのFさんは時間的・業務的な融通がききません。上司も事務だけのアシストとして採用したため、残業なしを確約していました。
「事務要員が欲しいとは言ったけど、もうちょっとフレキシブルに勤めてもらいたい」
「正社員もギリギリのまま。これでは何かあったときの代わりがいない」
 失って分かるOさんのありがたさ。
 残業対応も出来るプランナー見習いが欲しいと、それとなく上司に匂わせてみたところ、
「すでに一人採用している以上贅沢だ。だいたい見習いを採用してもお前たちがうまく指導していけるのか? Oのようにすぐ辞めるのがオチだろう」
 と手厳しい反撃。
 現場ではプランナーが早出・残業、休日出勤でカバーすることも珍しくなくなりました。
「この先誰かが辞めたら、もう確実に仕事が回らなくなるでしょうね。でも俺たち、信用なくしちゃってますからね。新規採用があるかどうか……」
 失った環境を懐かしむように、Eさんはつぶやいていました。
サクセスポイント
今回はココが問題!
人員補充と採用
 人件費削減から、退職者が出ても同じ数の採用を行わない、行ってもその補填をパートやアルバイト・派遣社員に求めるといった企業は少なくありません。そうした場合、現場が少なからず混乱していることも。
これでサクセス!
即戦力への期待
 欠員を十分補充していない職場の場合、残った社員に早出や残業、代勤など無理をさせてカバーしていたり、不自然な人員配置でしのいでいることがよくあります。そうした現場では命令系統が混乱していたり、ミスが続出したりしていることも多いので注意。また転職者も勤務形態に関わらず、即戦力やハードな勤務を求められがちです。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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