転職失敗談2
新人指導の落とし穴
広告業A社では正社員充実を図り、アルバイト社員の中から優秀な人材を登用しようとするが……。(→後編はこちら
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似た者アルバイト
 ようやく景気が上向きになってきた昨今。ここ数年正社員の採用を控え、派遣社員とアルバイトを活用してきた広告業A社でも、ようやく正社員の充実に本腰を入れるようになりました。
 人事担当のOさんは、さしあたって現在のアルバイト社員の中から、ヤル気のある者を正社員登用することを提案。
 しかし、アルバイト待遇で長期勤務を続けてきたメンバーを眺めてみると、女性ばかり。トップは40代前半の女性で職場のことも仕事のことも知り尽くした人物Eさんでしたが、彼女は主婦業との両立から、時間を区切って働けるパートでないと困るとのこと。
 彼女以外のアルバイトはというと、すこし年齢が下がって30代前半から20代後半ぐらい。仕事に対するヤル気やスキルも、似たり寄ったりといったところです。しかも、昼食をはじめ、どこに行くにもひと塊になっている姿がよく目撃され、正直Oさんにはこの中から誰かを選び出すことは出来ません。

「よし、正社員登用を前提にした採用を行おう」
 ゆくゆくは戦力となってくれるような、そこそこ長く勤めてもらえる、そんな人材を新たに投入することにしたのです。
 A社では内規により、中途採用はアルバイト待遇からスタートという決まりがありましたが、Oさんは
「即戦力になるなら、直接正社員採用でもいい」
 という上司の承認をとりつけ、期待に胸を膨らませて応募者を待ちはじめたのでした。
粘り勝ち?
 ところが、そこそこの応募数を集めたものの、なかなか即戦力となりえる人材とはめぐり会えません。
 上司も
「これでは即正社員は厳しいな」
 と難しい顔をしています。
 勢い込んで待っていたぶん、Oさんも落胆が大きく、そこそこのレベルで採用し、今まで通りアルバイトから育てていきましょう、と提案する気持ちにはなれません。
「もうすこし時間をかければ……媒体を変えれば……」
 と粘る気持ちになっていきます。
 しかし、そこに立ちはだかる予算の壁。Oさんは、もうこれ以上採用にお金も時間もかけられない、次で結果を出せと、苦い顔の上司から言い渡されてしまいます。
 最後のチャンスをOさんは転職サイトに求めました。条件も出来るだけゆるく設定し、少しでも多くの人材と接触できるように心を配ります。
 その甲斐あってか、Oさんは転職希望のFさんと出会ったのです。

 Fさんは外資系企業に営業として勤めていた女性。業界経験はありませんが今までの経歴からみてもポテンシャルはありそうです。またサッパリした気性と理路整然とした口調、新しい仕事への好奇心も好印象で、採用に気持ちが傾きます。
「即正社員は難しいけど、彼女なら仕事を教えればすぐ正社員になれそうだ」
 と上司も好感触。
 Oさんは早速採用条件を説明し、
「最初はアルバイト待遇ですが、あなたは正社員採用を想定しています。頑張り次第でその時期は早まりますからね。がんばってください」
 と期待を込めて激励しました。Fさんもその言葉に動かされたのか内定を承諾。
 期待を込めた正社員候補が誕生したのでした。

(→後編に続く)

pen2 果たしてFさんはOさんの期待に応えられるのか? チャレンジを続けるFさんに、パート社員Eさんが仕事のノウハウを教えていく……。次回、後編へ続く。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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