転職失敗談2
けなす上司
転職者Tさんは入社後、上司から前の職場でのやり方を根掘り葉掘り質問される。最初は素直に答えていたTさんだったが……。(→後編はこちら
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けなす上司
「T君のいた会社ではこんなときどうだったの?」
 最近、今の職場に転職してきたTさんは「またか」とため息をつき、上司のほうに向き直りました。
 質問したのは直属の上司であるN氏。
 N氏はTさんと2歳違い。年齢が近いこともあって、転職当初からTさんにもフランクな態度で接していました。ところがひとつだけ問題があったのです。それが前述の質問。N氏はなにかことあるごとに
「前の会社ではどうしてた?」
 とTさんの前職のやり方を聞いてくるのです。
 一見、年の近い転職者の前歴を尊重し、仕事ぶりについて質問しているように見えますが、
「前は、こういうのは業者に発注してましたので……」
 などと素直に答えようものなら、
「これぐらいで外注? T君のとこはデカい予算だったんだなぁ。うらやましいよ。でもうちではこの程度の仕事が処理できないようじゃ駄目だからね」
 とピシャリ。その他にも
「ああ、そのやり方ね、今はもうやってるとこ少ないよ。ふーん、T君のところではまだこの方法だったんだ……」
 と否定されたり。Tさんの意見が受け入れられたことはなく、逆にけなされ否定されるのがほとんど。あたかも「前の会社より、うちの方が上」と言わんばかりなのです。
 最初は聞かれたことに正直に答えていたTさんも気づき始めます。
「前の職場が気に入らないのか、転職者が気に入らないのか」
酷な比較
 N氏の質問は、仕事のやり方から始まり、同期入社の数、ポストの数、昇進スピードなど細かい部分にまで発展。「どちらが上か」を暗に決めたがっているようでした。
 ただでさえ抵抗のある内容ですが、Tさんにとってはいっそう辛い質問。
 実はTさんの前の職場は経営不振により事業が縮小し、社員の大量解雇という経緯をたどっていたのです。
 ですから、
「うちとT君のいたところと、どっちが仕事おもしろい?」
 などと聞かれても、答えに窮してしまうのです。
「答えられません。前の職場は今なんとも言えない状態ですから、同じように比較できないと思います」
 明確な回答を避けても、N氏は
「じゃあ、どっちがいい仕事してると思う?」
 と手を替え、品を替えて質問したり、
「まあ、比べようがないよな。むこうじゃ仕事にならないから移ってきたんだし」
 とこき下ろしたり。
 こうしたやりとりを部署のメンバーも交えてするものですから、周囲の同僚もニヤニヤ。自分と前の職場がバカにされているような気になり、Tさんはその中で一人、憮然としていたのです。
 内心『景気が良ければ、前の方が面白かった。でも今それを言うとただの負け惜しみにとられるし……』と穏やかではありません。

 こんな毎日が一ヶ月も続いたころ、Tさんの試用期間が無事終了。正式採用に移るにあたり、人事部との面談がもたれました。その席でTさんはつい、N氏の一連のエピソードを口にしてしまったのです。

(→後編に続く)

pen2 人事担当者に聞いてもらっただけで、多少は気が晴れたTさん。しかしこれが新たな火種を生んでしまい……。次回、後編へ続く。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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