転職失敗談2
けなす上司
前の職場を否定するような上司N氏。彼への不満をつい人事担当者の前で口にしてしまったTさん。その影響は巡り巡って自分の上に……。(→前編はこちら
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雑談でガス抜き
「単なる雑談とは思うんですが、前の職場とここを比較させるような質問をされるんですよ。それが度重なるもんですから、何かがあるような気がして……。まあ、些細なことなんですけど」
「そう深刻になることはないと思うよ。Nも君のやり方を確認しておきたいだけだろうし」
「そうですよね」
 人事担当者も「気のせいだ」と言わんばかりの話しぶりでしたが、鬱憤を口に出したことで、多少なりともスッキリしたTさん。そのうち向こうも飽きるだろう、と気楽に構えることにしました。
 ところが、この日の発言がのちのち思いもよらぬ余波を招くこととなったのです。

 Tさんにすれば単なる面談中の雑談と思っていた話題でしたが、人事担当者は思いのほか真剣に受け止め、後日N氏を呼び出して注意を与えてしまったのです。
「中途採用者を孤立させるような言動は考えものだ。経歴はどうあれ今は同じ社員、どういうつもりがあって中途採用を際立たせるような発言を繰り返すのか」
 N氏は、
「いまの仕事の価値に気づかせ、モチベーションをあげるつもりだった。前の職場を侮辱するつもりは無かった。早くとけ込んでほしいとみんなと一緒に話をしたが、そんな風に受け止められているとは思わなかった」
 と神妙に釈明し、その場はおさまりました。
 ところがデスクに戻るや否や、その鬱憤をぶつけるようにTさんを叱責しはじめたのです。
天狗にしない
「話を聞いたよ。T君がそんな風に思ってたとはな。でもそういう不満があるなら、どうして俺に直接言ってくれなかった。おかげでこっちは寝耳に水だ」
 上司を飛び越え、しかもN氏に対する不満をさらに上へ訴え出る形になってしまったTさん。N氏は
「これからは何でもハッキリ言ってくれ。表向きは周りに合わせて、その実腹の中で何を考えてるか分からないなんて、一緒にやっていけない」
 これ以降、二人の不仲は決定的に。ちょっとした仕事の指示もメールで済ませるほど、直接の接触が激減したのです。

 悩んだ末、Tさんは水面下で転職活動を再開。
「転職してすぐ辞めたのではいくらなんでも早すぎるし、印象だって悪い」
 と最初は思いとどまっていたのですが、日に日に悪化するN氏との関係に耐えかね、
「合わなかったのだから仕方ない。だったら少しでも早くやり直した方がいい。中途半端に長居すると、逆に説明がつかなくなる」
 と思い切り、仕事を探す事にしたのです。幸い受け入れてくれる企業が見つかったため、入社から半年をメドに退職しようと決意。
 問題は退職交渉です。今度ばかりはN氏を飛び越して出来る話ではありません。しぶしぶ辞意を伝えにいったところ……
「辞めるって……次の仕事のアテでもあるのか?」
「はい、自分のやりたい事により近い仕事だと思いますので」
「その会社、大丈夫なのか? あ、いや、うちと比べてどうという訳ではないが……」
 いつもの詰問口調から、急に切れ味鈍くなったN氏。
「いや、君には期待をかけていて、これからという時だ。これからT君のやりたい仕事もどんどん任せていこうと思っていたのに」
 と徐々にTさんを持ち上げはじめたのです。あげく、
「今まで厳しくあたっていたのも、T君に期待をかけていたからだ。せっかくの能力を、褒めて天狗にしてダメにしないよう、僕なりに気をつかっていたんだよ」
 このN氏の豹変ぶりに、あぜんとするTさん。
「厳しくあたっていたって、まるっきりほったらかしだったじゃないか。どうせ部下がすぐに退職したら自分の立場が悪くなるから、あわてて引き止めてるんだろうけど」
 N氏が言葉を尽くせば尽くすほど、Tさんの気持ちは冷えていく一方でした。
サクセスポイント
今回はココが問題!
退職交渉のポイント
 退職交渉のトラブルには、強引な引き止め、退職時期の引き延ばし、退職金・休暇問題などが考えられます。無用のトラブルを回避するためには、説得できるだけの理由、引き止めが必要にならない引き継ぎなどの準備、そして交渉のルールを守ることが大切です。
これでサクセス!
準備は万端に、交渉はステップを守って
 引き止められないための退職理由には、「キャリアアップ」などの漠然とした言葉よりも、「こういう仕事をしたいが、ここでは方向性が違うと思うので」といった、ある程度の具体性が必要。ただし同業他社への転職など率直に話すことが難しい場合もあるので慎重に。場合によっては、すでに転職先を見つけてあると告げ、意志が揺るがないことを示すのも効果的。
 また退職交渉は直属の上司からが鉄則。気持ちよく退職するため、ステップは守りましょう。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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