転職失敗談2
ネットでは別人格
普段は無口でもネットでは雄弁。そんなKさんはA社の業務用社内メーリングリストにメールを送信し続け……。(→前編はこちら
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スレッドの森
 Kさんが社員用メーリングリストに投げかけた、仕事上の質問。せっかくの先輩社員の返事も、役に立たないとばかりにバッサリ斬ってしまったために、Kさんの評価は一転します。
「何様のつもりだ。せっかく、参考になればと思ったのに、もう返事しない」
 それまで、ほどほどに返事を返していた他の社員たちの間でも
「あまりに頻繁なので、そうそう返事してられない」
 とだんだん敬遠するようになっていきます。
 しかし、Kさんはこんな雰囲気を知ってか知らずか、依然同じペースで、様々なメールを投げかけ続けます。
「朝からトラブル対応で駆け回って、やっと一段落してメールボックスをあけると、メーリングリストでパンパン。しかもほとんどKさんからの。正直げっそりする」
 こんな声も漏れ聞こえるようになった頃、現状を心配したチームリーダーが、一言Kさんに注意することにしました。
「メーリングリストは基本的に業務連絡用だから……。それにみんな忙しい時間の中で返事を返してるんだから、知りたい情報が出てこなくても仕方がないよ。もうちょっと他の社員の状態も汲んでくれるとありがたいんだが」
 という内容で諭したところ、Kさんは素直に
「わかりました」
 と承諾。それを境にKさんのメール爆弾はピタリと停止。
 誰もが問題解決と思った矢先、その余波が思いもよらぬところに噴出したのです。

「社員旅行について −K」
「このニュース知ってますか? −K」
「展示会準備について −K」

 今まで静まり返っていた、会社のサイトの社員用掲示板。ここがKさんの立てたスレッドで埋め尽くされるようになったのです。
裏連絡網
 しかしKさんの先の一件のせいもあり、相変わらず社員のレスポンスは鈍いまま。
 実はKさんを持て余した社員たちは、メッセンジャーを使い“裏連絡網”を形成し、そこで忌憚ない意見を交換していたのです。
 あわれ掲示板は、スレッドを立ち上げた最初のものと、時々のKさんの追記の他は、だれも続きません。つまり、ほとんどKさんがひとりで書き込むブログ状態
「これだったら自分のHPでも持てばいいのに……」
 先に注意したチームリーダーも、のれんに腕押しの有様に、
「誰でも書き込んでいいものだから、なんとも注意がしにくい。メールがだめなら掲示板、という問題でもないのに……」
 と困り顔。
 そのうち、事件が起こりました。
 ある日、掲示板に次のような書き込みがされたのです。

「社員同士の親睦について −K
 おつかれさまです。Kです。
 せっかくネット環境が整っているというのに、
 それを使いこなせていない人が多いように思います。
 もっと社員同士が情報交換に生かすべきだと思うのですが、いかがでしょうか?
 メッセンジャーやメールなどの連絡だけでは、
 どうしても世界が閉じてしまいます。
 情報は共有化して初めて意味があると思います。どうでしょう?」

 いつになく意味深な内容に驚いたチームリーダー。寡黙なKさんをほぐしたり、持ち上げたりしながら、ようやく聞き出したところ、どうしたきっかけか、Kさんが“裏連絡網”の存在を知ってしまった事が判明。
「自分が転職者だからといって、いつまでも仲間に入れてもらえないのはおかしい」
 と訴えはじめました。
「たしかにメッセンジャーでコソコソ話し合っているのは良くないかもしれないが、そもそもKの態度にも反省すべきところがあった。ネットでの君の応答は殺伐とし過ぎる」
「メールや掲示板に、持って回った言い方は必要ないと思います」
思いやりの問題だ。知らない人を相手にするのではなく、ここは職場だ。画面の向こうに人がいることを忘れるな」
 その後、リアルでの人付き合いの大切さなども、チームリーダーは懇々と諭し、Kさんも納得してその場をおさめました。
 ところが、後日チームリーダーの所にこんなメールが届いたのです。

「おつかれさまです。Kです。
 いろいろ考えたのですが、自分に合わない職場のようですので、
 キリのいいところで退職させていただきたいと思います。
 今後は派遣にでも登録して、自分に合う会社を時間をかけて探すつもりです」

 チームリーダーは、
「もともとおとなしい人だから、その場で説得するのは楽なんだけど、内心何を考えてるのか。メッセンジャーで話し合えば、もう少し心を開いたのかも……」
 とこぼしながらも、さすがにメールで処理する内容ではないと、またまたKさんを呼び出していました。
サクセスポイント
今回はココが問題!
転職でのメール活用
 面と向かって言いにくいこと、聞きにくいことでもメールなら言いやすい、という人は少なくありません。転職市場もメールの利用は活発。最初の接触はまずメールでという企業も多く、それだけにまた違った注意点があります。
これでサクセス!
メール利用の注意点
 会社のアドレスから次の会社にアクションを起こすのは避けましょう。私用のアドレスで。また応募の際、丁寧すぎる時候の挨拶は必要ありません。書くべきことは名前と現在の仕事、簡単な自己紹介、応募職種、そしてきちんとした連絡先。ここで質問事項をダラダラと書き連ねてはいけません。聞くべきことは面接で。
 また、退職の申し出をメールで行うのはタブー。メールでの話題は「お話があります。お時間をいただけませんか」にとどめて。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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