転職失敗談2
夫婦で社員
結婚まもなくの妊娠で産休に入ることになったH子さん。夫のKさんは早々とベビー用品を買い込み、子煩悩ぶりを発揮するかに思えたが……。(→前編はこちら
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熱しやすく、飽きやすく
 予想より早かった妊娠に戸惑いながらも、着実に準備を重ねてその日を待つH子さん。最初は共に喜んでいた夫のKさんでしたが、皮肉な事にこの妊娠をきっかけに二人の間に溝が生まれてしまったのです。

 妊娠が明らかになった当初は、あれこれとベビー用品を買っては帰宅するKさんを、
「思った以上に子煩悩な人」
 とH子さんもうれしそうに見ていました。ところが準備が一段落したころ、Kさんの帰宅時間がだんだんと遅くなるように。
 早めに産休に入っていたH子さんは、てっきり残業だと思っていましたが、実はKさんは仕事ではなく、ボウリングにハマっていたのです。もともと学生時代はサークルに入っていたのですが、その熱がここにきて再燃。
 マイボールにマイバッグを会社に置き、終業後は早々とボウリング場へ。連日連夜のボウリング場通いを心配した周囲の人間が、
「大丈夫なの? 奥さんもうすぐ臨月でしょうに」
 と聞いてみても、
「ああ、なんか悪阻だとか、だるいとかいって、寝てることが多くなってきたな。だから晩飯もないし、早く帰っても仕方ないし」
 と何の疑問もなく答え、いそいそと出て行ってしまうとか。
「そういう時こそ、妊婦は一緒にいてほしいのに……」
「これじゃH子さんは大変ねぇ」
 同じ職場の“働く主婦”軍団は、自分の経験と照らし合わせ、H子さんに同情的。Kさんへ強い反発を抱くようになりました。
“働く主婦”軍団の活躍
「もしもし、H子さん。無事ご出産おめでとう」
 H子さんが取った電話の主は、同じ職場の“働く主婦”軍団の一人、A子さん。H子さんは予定よりやや遅れたものの無事男児を出産。目下育児の真っ最中でした。
「最近、Kさんお家でどう?」
「またボウリングにはまってるらしくて、毎日遅いんですよ」
 Kさんのボウリング熱は相変わらずでした。
「それよ、そのボウリングなんだけど……」
 いいにくいんだけど、と前置きしてA子さんが話すには、最近Kさんはバイトで入った女の子に妙に親切にしている、あげくボウリングを教えると二人で連れ立って出かけたり、お互いが幹事になり、ボウリング合コンなるものを開催しているというのです。
「ほら、合コンの幹事同士がつきあってるって、よくある話だから……」
 男性側の参加者にA子さんの夫が入っていたため、しこたま締め上げて吐かせ、コトの経緯をつかんだと言います。
 今までも何かとH子さんに同情を寄せていた“働く主婦”軍団は、徹底的にKさんに怒り爆発。以来、ことあるごとに、
「今日、あのバイトの子と出かけるみたいよ」
「メールで連絡しあってるみたい。後ろから覗いたらKさんのアドレスっぽかったわ」
 などとスパイ顔負けの情報網で二人の交際をつかみ、逐一H子さんに報告してくれたのです。妊娠中の不信感も手伝い、H子さんはKさんとの離婚を決断。結婚3年目のことでした。

 結婚した二人が同じ会社で仕事を続けることはできても、離婚した二人となると微妙です。ことにH子さんは、やっと育児休暇から復帰したばかり。小さい子供を抱えての新しい仕事探しは大変ですが、苦労を覚悟で上司に離婚と退職を申し出たところ、
「君が辞めるのは勿体ないなぁ……。○社さんも×社さんも、君の産休あけを待っててくれてたぐらいだから、正直抜けられるのは痛手だ」
 と上司はさらに上と相談。その結果、
「君は今まで通りうちの勤務を続けてくれていい」
「でもKと顔を合わすこともありますし、周りの方がやりにくいのでは」
「いや、その心配はない」
 なんと退職勧告をされたのは、夫・Kさんの方だというのです。
「彼の熱心とはいいかねる勤務態度は前から気になっていた。うちとしては君に残ってほしい
 キッパリとした上司の言葉に救われたH子さん。今も働く主婦・母としてバリバリと勤務を続けています。
 一方、離婚で肩を叩かれたKさんは、風の噂ではその後起業したらしく、かつての同僚を引き抜こうと、時折主婦軍団の家庭に連絡が入るということです。
サクセスポイント
今回はココが問題!
離婚と職場
 社内恋愛での結婚の場合、離婚はしばしば転職の理由になりますが、必ずしも辞めなければいけないということはありません。ビジネスの場というけじめがしっかりしていれば、元夫婦がそのまま勤務を続けられる職場もあります。
これでサクセス!
転職と離婚経験
 また離婚したこと自体は、転職市場でマイナスにはなりません。女性の場合など、むしろ仕事への落ち着いたヤル気を感じさせる場合も。それよりも離婚したことを引きずり、面接で暗い印象を与えたり、愚痴っぽくなってしまうことの方が危ぶまれます。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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