転職失敗談2
仲介者は元同僚
転職した同僚にヘッドハンティングの話を持ちかけられたWさん。居酒屋で上司と引き合わされるが……。(→後編はこちら
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パワーゲームの果てに
「一度、俺の上司と会ってみないか?」
 かつての開発仲間・F氏に呼び出されたWさんは、居酒屋でこう切り出されました。
 共に勤務していたゲームメーカーA社を、F氏が退職してから数ヶ月。風の噂で、同業の新進メーカーに転職したらしいと耳にしていたところでした。
 そのF氏から、ある日Wさんにメールが入ったのです。新しい職場のグチでも聞いてほしいのかと出かけたWさんでしたが、
「A社に比べれば、こじんまりした所帯だけど、オープンで気が楽だよ」
 F氏の話は結構尽くめ。
「それで、今俺がやってるのは……」
 新しい携帯機用のスポーツゲーム開発だと言います。ところが新しいハードということでチームは手が足りず、F氏もてんてこ舞い。
「それで、うちの上司が気心の知れた人間を何人か入れてもいい、って言うんだよ」
 同じハードでの開発経験のあるWさんに、ぜひ来てほしいのだと続けたのです。
「うちは小さい会社だけど、部署ごとのパワーゲームがない分、変な力関係で年俸が下がるなんて事もない。俺はそれだけでも御の字だ。Wもチームリーダーが上とうまくいっているうちはいいが、上がコケたら一蓮托生だぞ」
 実はF氏の退職は、年俸交渉のトラブルが元。A社では年俸制を敷いており、会社と社員が話し合いで額面を決定することになってはいたものの、実際は管理職の力関係がそのまま社員に跳ね返っていました。
 実績を挙げたとしても、チームの管理者がパワーゲームに負ければ、次は無理な納期を押し付けられ責任を追及されてしまうのです。その結果が年俸にも跳ね返ってくるとあれば、末端の社員はヤル気をそがれていきます。
 そんな現状に嫌気がさし、A社を飛び出したF氏でした。
 最近、納期に追われ始めていたWさんも、話を聞くうちに明日は我が身と危機感を募らせます。
「まあ、最初は軽く話だけでも」
 というF氏の言葉に押され、近くF氏の上司と会うことになったのでした。
面談は居酒屋で
「ああ〜。どうも、どうも」
 F氏が引き合わせてくれた上司・B氏は落ち着いた物腰の人物で、人事のプロというよりも、純粋にメンバーを探している開発同業者といった雰囲気。面接慣れもしていないようで、質問があれば答えます、という受け身のスタンス
 Wさんにしても、転職もヘッドハンティングも初めて。こういうときどう質問すればいいのか分からず、つい言葉が詰まりがち。
 間を取り持つF氏もこれはヤバいと思ったのか、
「堅苦しい雰囲気でもアレなので、場所を変えましょうか」
 と件の居酒屋へ。グラスを傾けることで、やっと双方の口がほぐれはじめたのでした。
 しかし、会話は仕事上の雑談や情報交換に終始し、
「大体のことはFさんから聞いてますから……」
 と、いつまでたっても面接らしい質問はありません。
 Wさんも聞きにくいことは、F氏に後で確かめようとタカをくくっていたため、端から見れば同業者の息抜きのような雰囲気でその日は終了。
「あんなのでよかったんだろうか……」
 ところが悩むWさんの元に、その翌日、早くも電話が入りました。電話の主はF氏で、
「昨日はお疲れ。いやーうちのBさん、かなりいい感触だったよ。これから正式に話もってくみたいだから、そのつもりで待っててよ」
 とのうれしい連絡。
 が、喜んだのもつかの間、そうなったらなったでWさんは頭を抱えることに。ちょうど今、プロジェクトが進行中で、これがアップするまではどうにも現場を動けません。しかもその話は、昨日の面談では伝えていなかったのです。
 それによくよく考えてみれば、まだ直接「内定」と言われた訳でもありません。
 「そのつもりで」と言われても、実際にはどうすればいいのか。いつまで待てばいいのか、入社時期も労働条件も何もはっきりしていないし、これからどんな仕事をするのかも五里霧中。一気に不安が募るWさんでした。

(→後編に続く)

pen2 頼みの綱のF氏の連絡はなかなか入らず、Wさんのヤキモキはさらにエスカレートする……。次回、後編へ続く。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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