転職失敗談2
仲介者は元同僚
元同僚の紹介で転職先が決まったWさん。しかし「忙しい」を理由に正式な入社時期も決まらぬまま、ズルズルと連絡を引き延ばされ……。(→前編はこちら
バックナンバー
あいまいな仲介者
「あの話だけど……その後、どう?」
 F氏への電話は、実はこれで二度目のWさん。居酒屋でF氏の上司と会ってからすでにひと月以上が経過していました。
 その間、F氏は
「今、上の方と話をしてる。採用となるとうちの部門だけの問題じゃないから……」
 とか
「もう少し待ってくれ」
 を繰り返すばかり。あまり急かすのも気が引けると、Wさんからは連絡を控えていたところ、予想以上に時間が過ぎてしまったのです。
 さすがにWさんも焦れ始めます。
「実は、そろそろ次の開発の話も出始めていて。もし辞めるなら次に移る前にしないと、いつ辞められるか分からないし、もしダメならダメで……」
「いや、上司は来てほしいって言ってる。ほぼ決まったようなもんだから、安心してほしい」
 しかし、採用条件についての、きちんとした話し合いはないまま。もう一度上司と会わせてほしい、会社にも行かせてほしいと頼むWさんに、F氏は「忙しい」という理由で依然、信じろの一点張りなのです。
 Wさんは辞める事もできず、前に進む事もできず、結局あやふやな気持ちのまま新しいプロジェクトに参加することに。

 ところが新しい仕事がスタートしたとたん、今度はF氏の方から、
「やっと上の承認がとれた! もういつから来てくれてもいいぞ!」
 という能天気な連絡が入ったのです。新しい開発が始まったらすぐには辞められないと、あれほど言ったのに……と、半ばあきれながらWさんが返事をすると、
「今、とにかく手が足りないんだよ〜 早く来てほしいのに」
 と逆にシブる始末。それでも、仲介の労をとってもらった事にはかわりありません。
 F氏に感謝しながらも、説得してなんとか入社時期をずらしてもらい、給与など採用条件を正式に確認し承諾したころには、あの居酒屋面談から半年が経過していました。
取り残されて
「いやー、ハラハラしたよ。もう来てくれないんじゃないかと思って。これで俺もやり易くなるよ。ありがとう」
 Wさんが転職を果たすと、F氏は大喜びで迎え入れてくれました。
 また、F氏が前の職場のやり方を踏襲している部分が多かったため、仕事上でWさんが困ることは少なく、その点は引き抜きのやりやすさ、ありがたさを痛感しました。
 しかし、実際に入社してみて分かることも。その一つがF氏と上司の関係。紹介された時は一枚岩とも見えた二人の関係にも、実は微妙な空気があることを知らされるのです。
「やっと俺の立場を分かってくれる人が来てくれたって感じだよ」
 とF氏が話し出したのは職場へのグチ
「今でこそ、俺がA社でのやり方を持ち込んだからいいようなものの、てんでルールってもんがなかったんだよ、これまでは。楽に仕事できる分は感謝してもらいたいよ」
 そういう話を耳にするにつけ、F氏はA社出身者で周りを固めひとつの勢力にしたいのかと、勘ぐりたくもなります。さらに話題は上司へのグチにまで発展。
「だいたいあの人はボーッとしたところがあるからな。最初会った時もそう思っただろ? 上に話を持ってくのが苦手で、その度に俺が代わりに出て行かなきゃならない。所詮大きい組織に属したことがない人間なんだよ」
 しかもWさんという“味方”を得たことで気が大きくなったのか、こうしたF氏の気持ちが徐々に表に出始めます。真っ向から対立する、頼まれた仕事を後回しにする、手を抜く……。“俺流”を通すことに抵抗を感じなくなっていったのです。
 その揺り返しは突然やってきました。F氏が強引に仕切っていたプロジェクトが唐突に中止になってしまったのです。
「いまのペースでは時間がかかりすぎる。それにこのハードでは、この種のゲームは伸びが期待できない。一度白紙に戻して、時期を読んだ企画を仕切り直すべきだ」
 という上司の言い分にはもっともなものがありました。しかしF氏は
「やりやがった。俺へのあてつけだ
 と怒り心頭。勢いこんで上司の元にかけこみ、けんか腰で話し合うこと小1時間。
「そういう考えなら、俺も考えさせてもらいますよ!」
 と売り言葉をぶつけ、辞表を叩き付けてしまったのです。
「俺、ここ辞めることにしたから。結局、身内根性が染み付いてて外から来たやつは馴染めないんだよ。お前もこんなとこ早く辞めろといいたいけど、入ったばっかりだからな。そうもいかないだろう。気をつけろよ」
 興奮気味に語るF氏の言葉に、驚き困ったのはWさん。
「俺の立場はどうなるんだ」
 散々上司への不満を聞かされ、F氏の“味方”と目され、そのあげく梯子を下ろされたに等しいのです。F氏の言うように短期で転職するのも気が進みません。結局、
「僕は、全部のいきさつを聞かなかったことにして、知らん顔で続ける事にしますよ……」
 F氏の退職後も、上司の何か言いたげな視線に苦しみながら、勤務を続けたということです。
サクセスポイント
今回はココが問題!
知人を介しての転職
 ヘッドハンティングや引き抜きなど、知人を介しての転職はスムーズに進みやすい反面、相手が知り合いなので強く交渉しづらい、人事部を通しての応募ではないので問い合わせのルートが限られる、結果をズルズル待たされる、などの問題点も。
これでサクセス!
知人を介する場合の注意点
 条件が合わないことも考えられるので、最初から打ち解けすぎず、ある程度はビジネスライクに接触すること。困った時は仲介者が知っている、説明してくれると、仲介者の力を過信しすぎるのも問題です。やはり重要なこと、気になることは自身で確認を。また、ある程度交渉が進んだら直接人事部と接触するほうが無難でしょう。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
バックナンバー

▲ページのトップへ