転職失敗談2
ふたりの初心者
20代のNさんと40代のSさん。Nさんは仕事覚えも早くすぐに周囲に馴染んだが、徐々にミスを連発。一方、ゆっくり仕事に慣れていったSさんは……。(→前編はこちら
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キャリアウーマン第1世代
 周囲と馴染めないのでは? と危惧されていた40代のSさん。たしかに仕事のコツをつかむまで時間がかかり、しばしば周囲の人の手を煩わせていましたが、一度仕事を覚えるとミスも少なく、いつしか手の抜けない仕事はSさんに、単純で急ぎではない作業はNさんにと割り振られていきます。
 それだけではありません。Sさんは人より30分ほど前に出社し、その日必要なものの準備をしたり、用具をチェックしたりし、手が余れば他の部署を手伝ったり。休日出勤も嫌な顔せず受け入れます。
 あまりに仕事熱心なため、社員の一人が心配して聞いてみました。
「Sさん、お家の方は大丈夫? Nさんもいるし、無理なら言ってね」
「子供の手も離れたので、時間の都合はつくんです。それに、今は体力もあって物覚えもいい若い人がどんどん入ってくるでしょう? 私みたいなオバさんはうかうかしてたら、全部仕事もってかれちゃう。頑張んなきゃいけないんですよ」
 とカラッと笑って答えていました。

 これがきっかけで、Sさんと親しく言葉を交わす社員も増えてきました。そこでSさんのパワフルな経歴が判明したのです。
 Sさんは20年近く前に仕事を始め、結婚後・出産した後も退職する事なく勤務を続けていたという、いわゆるキャリアウーマンの第一世代。
 すごいですね、と感想を言う社員に、
「そんなことないわよ。その頃夫の収入が少なくて辞められなかっただけ」
 とまたしても笑い飛ばして言いました。
 その後ご主人の仕事も安定し、第二子の出産をきっかけに家庭に入ったというのですが、
「当時は妊娠したら会社を辞める人の方が多くて、私も上司にかなりイヤミを言われたわ。でも私は辞めるわけにいかなかったから、戦ったわよ(笑)」
 Sさんはブランクこそあれ、並々ならぬガッツの持ち主であることが判明し、社員から一目置かれるようになりました。
夫婦の盲点
 一方、若手のNさんはというと、職場に馴染むのは早かったのですが、もともと入社1年目で結婚退職しているため実質的な社会経験が少なく、ミスを連発。
 さらに、同時期に入社したSさんが社内の信頼を集めるようになったことから、危機感を募らせはじめます。
「私にできることは、これくらいしか……」
 と、人より20分早くきてトイレ掃除を敢行。
 ところが、事務所は複数の企業が入るビジネスビルだったため、
「Nさん、掃除は専門の業者さんがしてくれるから、しなくていいんだよ……。今までもいろいろ気を遣ってくれてたみたいだけど、それより仕事のミスを無くしてくれた方が助かるんだけど」
 やんわり上司から諭されてしまいました。
 よかれと思ってしていたことを否定され、ムクれるNさん。
 みるみる仕事のモチベーションが低下し、職場にはおしゃべりに来ているような有様になってしまいます。他の社員が小耳に挟んだ話では
「給料安いのに、あんなに張り切られたら、一緒に入ったあたしがやりにくい」
 とSさんに対し、陰でコボしていたとかいないとか……。
 結局「仕事が覚えきれません」という理由で、Nさんは退職していきました。噂では、
「もっとパソコンの作業とかが多い方がいい。私に向いてる仕事は他にあると思うし」
 と転職にやる気を出している模様。

 一連の顛末を受け、最初からSさんを推していた採用のリーダーは
「やっぱり、俺の思った通りだっただろ」
 と鼻高々。
「Sさんには仕事をもっと覚えてもらって、長く勤めてほしい」
 と改めて激励。Sさんも安定した勤務を続けることになります。

 ところがそのSさんに、またしてもターニングポイントが訪れます。
 休日出勤も辞さない仕事ぶりだったSさんですが、ある時期から突如、急な欠勤・早退が増加しはじめたのです。その理由を問いただすと、
「この後、主人と落ち合うことになっちゃって」
「主人の1日ドックに付き添いにいきたいので……」
 夫絡みの用事が急増。
 なんでも年上の旦那さんが定年を迎え、ずっと家にいるようになったので、Sさんは旦那さんと共に行動することが増えたのだとか。
「子供ができて仕事を減らす人は多いけど、旦那のリタイアってのは頭に入れてなかったな」
 産休を乗り切ったキャリアウーマンに意外な盲点を見つけ、採用リーダーは頭を抱えていました。
サクセスポイント
今回はココが問題!
求職者の年齢
 未経験者の採用の場合、若年層の採用が目立ちますが、30代、40代での採用もないわけではありません。職場の平均年齢が高い職場や、クライアントに安心感を与えられるよう、落ち着きのある人を求める場合。また、若い人は転職しやすいので、それを避けるためなど、あえて採用年齢を上げる場合もあるのです。
これでサクセス!
30代以降の未経験転職
 30代以降は管理能力を問われることが多く、あえて経験のない仕事をという場合、収入ダウンは覚悟。その上で若い人と違ったアピールをすること。ただし尊大な態度は厳禁。紹介や人事部に直接売り込むなど、応募ルートを開拓することも効果的です。
・…→ Text & Illustration 山本ちず
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