他人の失敗から学ぶ転職裏マニュアル 転職失敗談集3

FILE:003 恋の狩人

30代のFさんの交際相手はいつも20代の若い女性。秘訣はその仕事にあった。彼の仕事とは……。

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恋のお礼参り

学習塾で講師を務めるFさんは30代の独身男性。彼は教え子に親身になって接することから、指導が丁寧だと定評のある先生です。

ただ、一方で彼はつきあっている女性はいるものの、どの人も長続きしません。というのも、相手はいつも女子大生か20代前半の若い女性で、年齢差の大きいことが影響してしまっているようなのです。

また、実はFさんの彼女のほとんどは元教え子……とはいっても、教え子に手を出したわけではありません。あくまでも「元」教え子です。

Fさんは生徒にも人気の講師だったため、教え子が大学に合格したあかつきには「センセー」と遊びに来られたり、祝賀会に呼ばれたりすることが非常に多いのです。そうしたことがきっかけで、元教え子と個人的な付き合いに発展し、結果的に恋に落ちてしまうのです。

Fさんの勤務先は大手ではなく、個人経営のこぢんまりとした学習塾。細かいマニュアルも無く、卒業生との交際も現役の教え子でなければという、おおらかな経営方針だったこともあり黙認されていました。現に、元教え子と結婚した講師もいたくらいです。

受験を乗り切った共通の苦労と開放感が距離を縮め、交際が始まるものの、相手は環境の変化と刺激に富んだ女子学生。残念ながら、どの相手も比較的短期間で終わってしまうといいます。

しかし、春になればまた新しい合格者が生まれ、「センセー」とやってきます。良く言えば博愛主義、悪く言えば惚れっぽいFさんは、「優しく接して、恋人に昇格」を繰り返します。

同世代の友人・知人からは、

「若い女の子が次から次へと……うらやましいなぁ、オイ!」

「普通、この年だったら『次の相手を探すのも面倒だし、そろそろコイツかなぁ』って考えざるをえないのに。お前はいいなぁ。そんなこと考えたことも無いだろ?」

などとねたまれ、うらやましがられる毎日です。

社会の洗礼

しかし!そうしたFさんの日々も、終わりを告げることになります。

少子化のあおりで他社との競争が激化。春の新入学時期だというのに、プロモーションの派手な大手の学習塾チェーンに生徒を根こそぎ持っていかれてしまったのです。

Fさんの勤務先では、いくつかの教室を閉鎖するなどして対策を立てていましたが、それでもこらえきれなくなり、ある日突然全教室の閉鎖が決定。

Fさんは、父兄への説明や、生徒の受け入れ先紹介、学習データの引き継ぎ処理などに忙殺され、女の子との交際どころではありません。

ようやく最後の生徒の落ち着き先を決め残務処理のメドが立った頃には、弱り目に祟り目で学生の彼女はサークルで知り合った男子学生にアッサリ乗り換えてしまいました。

ハタと気づくと、Fさんは独り身で新たな仕事を探さねばならない身の上になっていたのです……。

同業の学習塾に入り直そうかとも思いましたが、生き残っているのは大手学習塾でマニュアルが厳しく、生徒の勧誘などのノルマもあり、なまじ同じ業種なだけに余計違和感を覚え、応募する気も萎えてしまいがち。

そこで、この状況を気の毒に思った友人のひとりが、

「知り合いの会社で人を欲しがってるんだけど……」

と製品管理の仕事を紹介してくれたのでした。

ところがFさんは、これにも気が進まない様子。それというのも、大学卒業から今に至るまで塾というスクール環境での仕事しか経験がないのです。

「会社で給料もらって仕事するって、経験したことないから。この年から社会勉強というのも気が重くてさ……」

そんな風にプライドも手伝って気持ちがくじけそうになるFさんを、

「お前、そんなこと言ってたらダメだよ。その年でもいい未経験者可の仕事なんかそうそうみつからないぞ!」

と友人が必死に励まします。そして、ついにFさんは遅まきながら“社会”の洗礼を受けいれる決意を固めたのでした。

仕事にも、会社生活にも不慣れなFさん。あまりにも世間擦れしていない30代に周囲は翻弄されるのだが……。
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文・イラスト:
山本ちず

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