他人の失敗から学ぶ転職裏マニュアル 転職失敗談集3

FILE:011 ひとりっ子転職

こぢんまりしたA社での採用活動。社長自ら指揮をとり、応募者に親身に接するのだが、結果は芳しくなく……。

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小さな職場

少子化の昨今、めっきり珍しくなくなったひとりっ子。しかし、20年ほど前は兄弟がいる子供が主流。ひとりっ子だというと「兄弟がいなくて寂しそう」「甘やかされてワガママ」など、ある種のレッテルを貼られることがあるくらいでした。

今回は、そういった“ひとりっ子”のイメージを今なお引きずっている、とある社長のお話……。

大手アパレルメーカーの商品パッケージやペーパータグなどの制作を引き受けるA社は、50代の社長が会社を切り盛りする、中小企業に多いワンマン・スタイル。

とはいうものの、性格は至って温厚。信頼できる社員のみを抱えこぢんまりと営んでいるといった雰囲気。

ですから、新卒採用も数年に一度、職場の雰囲気と仕事に合う、長続きしそうな、おっとりタイプの人材を選んで採用してきました。

ところが最近、入社以来8年勤めていた女性が、夫の転勤についていくという理由で急に退職することになったのです。

久々に新卒採用をしたばかりなので、頭数は足りてはいるものの、まだ新人にすべての仕事を任せるには不安が残ります。やはり、それなりにスキルのある社員もひとり入れておきたいと、若手の経験者を補充することになったのです。

募集を始めると、小さい規模の職場であることと少々駅から遠いという事で、応募状況は芳しくないながらも、週1〜2人ペースで応募書類が届きはじめます。

社長はさっそくその書類にじっくりと目を通し、何かを考えている様子。

「よし、面接は私が出る。スケジュール見て日程調整しといてくれ」

社長がすべての案件に直接関わるA社では、言われるまでもないことと社員は思っていましたが、社長はいつになく熱心です。

その後も、興味深そうに履歴書に目を通す社長の姿が、度々目撃されたのでした。

決まらぬ採用

さて、面接が始まりました。自ら社内を案内し、仕事内容を説明する社長。

その後、決まって応募者を自室に通し、そこで面接を行ないます。かなりの時間話し込んでいるようで、じっくり人選が進んでいる様子がうかがえます。

しかし、面接で意気投合していると思いきや、

「今日の子はダメだった」

と不合格にしたり、逆に応募者から

「社長にお話を伺いましたが、もうこれ以上の選考は辞退させていただきたい」

と申し入れられたり。

いったい社長室で何が起こっているのやら……。

こんな調子を繰り返すうちに、募集記事の目新しさが無くなってきたのか、書類の応募数が徐々に減り出したのです。

これはヤバイと焦り始めたのが、退職予定の女性社員・Rさん。

「社長は何をやってるんだか。早く決めてもらって、仕事を引き継ぐ人ができないと困りますよ。引っ越した後まで問い合わせされても、対応できないし!」

と不安がったり、いら立ったり。

いままで社内の重要事項は社長任せで、社員は口をはさみにくい雰囲気がありましたが、こうなったら放っておけません。

「もう辞めるし、なんと思われてもいいわ。ちょっと言ってくる!」

Rさんは社長室に乗り込み、

「自分の仕事を引き継いでもらう相手ですから、私も一緒に見極めさせていただけませんか。もう時間も無いので、適性のある人を選んで欲しいので」

と掛け合い、次の面接から同席する約束を取付けたのでした。

かくして、謎の社長面接の扉は開かれる。そこで繰り広げられていた質疑応答とは……。
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文・イラスト:
山本ちず

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