他人の失敗から学ぶ転職裏マニュアル 転職失敗談集3

FILE:018 田舎と海外

父の勧める地元企業に転職したMさん。知り合いが多い土地だけに「無茶はさせない、のんびりすればいい」と言われたのだが……。

≫前編を読む

のんびり放任主義

「これが前任者の席で、引き継ぎの仕事ね。これ読んでやってくれればいいから」

転職し、地元に帰ったMさんが初出勤でまず言われた言葉がこれでした。

話を遡ると、勝手に仕事を探してきた父親に戸惑いながらも、Mさんは顔を立てる意味で「面接だけ」と出かけました。

ところが面接を受けてみれば、これがまた意外に魅力的だったのです。農耕機具メーカーの支店で安定しています。主な仕事は器具のセールスとメンテナンスですが、農家の息子ならそれほど難しいことはないはず。売れ筋や売れ行きはだいたい把握しているし、無茶なノルマもない。そして、何より心が動いたのは

「従業員はほとんど地元の人間でみんな顔見知り。だから、都会のように無茶はさせないし、転職もさせない」

という支店長の言葉でした。

難しいことは言わない、のんびりやってくれればいいから」

と言われるに至り、Mさんは都会生活にピリオドを打つ意思を固めたのでした。

ところが、いざ迎えた初出勤の日、冒頭の言葉にあぜんとする羽目になったのです。

Mさんの席は支店のど真ん中にひとつ空いていた机。少し前まで誰かが使っていたらしく、ファイルや資料の類いもそのまま。引き出しの中身も使いかけの文房具、いつもらったのか分からないオヤツのおすそわけまでそのまま。他人の部屋に上がり込んだような落ち着かない気持ちで見ていると、支店長は

「これだと、すぐ使えるからいいだろ?」

とまるで気にしていない様子。肝心の仕事は詳しく教えてくれる人もおらず、

「前の人のやつを見て、自分でやって」

分かりかねて質問しても

「それはMさんの仕事でしょ。ワシはしらんよ」

と誰も教えてくれない。確かに難しいことは言いませんが、肝心のことも言ってくれません。放任主義というにはあまりにも投げっぱなしすぎます。

仕方なく顧客リストを探し出し、新任の挨拶回りに出かけることにしました。

しかし、挨拶回りからMさんは苦労させられます。

会社と違って個人が相手だけに、留守がちで会えなかったり、今忙しいからと断られたり。日を改めてと約束をしても平気ですっぽかされたことも。理由を聞けば

「水路を見てなきゃいけない当番だったから」

また、前もって留守にすると言っていたはずなのに、

「待ってたのに来なかった。社員教育はどうなってるんだ!」

とクレーム。

あまりのやりにくさに、つい父親にグチをこぼすと、

「それはお前が間違っている。都会みたいに何から何まで規則規則で通そうと思ってもそうはいかん。こっちの人間は自然を相手にしてるし、それに年寄りだ。都会風を吹かすとやっていけないぞ」

と逆に手厳しく叱られる始末。

父親の言うことにも一理あるのですが、約束をすっぽかしたり、一方的にクレームをねじ込んできたりするのは、やはりどうにも我慢できません。

サービス不足

そして、さらに我慢できないのが、受注の“見返り”。納品しにいった商品を、

「これはワシの留守中に嫁が勝手にしたことだ。うちでは面倒見きれん」

と突き返されたり、

「もっと馬力が出るようにリミッターとってくれ」

違法改造を頼まれたり。さらには

「息子に嫁が来ない。お宅の会社の女子社員を一人紹介してくれ」

嫁不足問題の解消まで求められたり。営業マンの範疇を超えていると、頭を抱えるMさん。

しかし、これをすべて退けていると、

「おたくはサービスが悪い。対応が悪い。××社の人は色々してくれたのに!」

となじられ、あっという間に悪評が広まってしまうのです。

違法改造の件は、さすがに対応できず返品・交換の処理で対応しましたが、嫁探しの件はなんとかしないとと会社に持ち帰り

「○○地区のAさんの息子さんなんだけど、誰か会ってみない?」

と女子社員に当たりまくりました。しかし、当然全員お断り。

「バイト代出すから。顔立てるだけ。お願い!」

泣く泣く自腹を切ってまで探した結果、ようやく一人「ほんとに会うだけ、会うだけですよ?断りますよ?」と念を押しながらも引き受けてくれる女性が見つかりました。

Mさんは「セッティングしたという義理が果たせればそれでいい」と思っていたのですが、これも甘かったのです……。

そのAさん一家はもう見合いが決まったかのような舞い上がり方で、結婚するならいつがいいか、同居はどうする、仕事は?とどんどんヒートアップ。

恐れをなした女性が逃げるように帰ると、翌日からじゃんじゃん会社に電話がかかってくる始末。

Mさんがお断りの電話をかけた時、相手方の怒りは想像を絶する程のものでした。自分が罵られることで事件が決着するならと耐えたMさんでしたが、後日さらに大きな騒動が彼を襲います。

「あんたのところの機械買ったら、嫁を紹介してくれると聞いたんだけど」

どこで聞いたのか、こう言いながら呼びつける嫁不足農家が激増。

「いや、そんなことは断じて」

と否定しても時既に遅し。

「○○のAさんに紹介したのに、うちに紹介する娘はいないっていうのか!」

そして、伝家の宝刀

「サービスが悪い!悪すぎる!!」

もはや、まともに言葉が通じる状況ではありませんでした。

そもそも海外赴任の不安が発端になった転職でしたが、海外と同等か、それ以上とも思われるカルチャーショックに襲われ、ガックリとうなだれるMさん。

「これならいっそ、言葉の通じない外国だった方があきらめもつくものを……」

転職サクセスワンポイント講座

今回はココが問題!

海外の仕事

海外赴任だけでなく外資系などの職場に仕事を求める場合、語学力、外国人とのコミュニケーション能力、管理能力が重要になってきます。また、メーカーや商社系の場合、取扱商品の専門知識、海外向け事業の場合は現地のリサーチ力なども必要です。これらの経験は国内でも有力なキャリアになります。

これでサクセス!

地方での仕事

国内であっても、転勤や転職などでまったく馴染みのない土地、文化圏の違う場所で仕事をする場合、上記と似た要素が必要です。現地の文化を知り、現地人の気質を知った上でコミュニケーションを取る。ただ、海外赴任ほど訴求力がないのが現状。やはり、これまでしてきた事をしっかり説明することが重要になってきます。

文・イラスト:
山本ちず

ソーシャルブックマークに登録 このページをYahoo!ブックマークに登録 このページをdel.icio.usに追加

▲ページのトップへ