他人の失敗から学ぶ転職裏マニュアル 転職失敗談集3

FILE:020 妻と夫の会社

F氏とR子さん夫婦はそれぞれの勤務先が敵対関係になってしまい、結果的に夫婦仲にも微妙な空気が流れ始め……。

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仕事至上主義の夫

F氏とR子さん夫婦は、お互い仕事が忙しいこともあり、平日の会話は少なく、休日も趣味やレジャーなど限られた共通の話題がメイン。なにもわざわざ仕事の話をしなくても……という雰囲気です。

さらにF氏は家に仕事を持ち帰ることが多く、R子さんが話しかけてもなかなか応えてくれないときもあったほど。仕事が絡んだF氏ほど厳しくムズカシイ人はなく、一度R子さんが

「せっかく早く帰っても仕事してるんじゃもったいないし、わたしもつまらない」

と家庭に仕事を持ち込まないでほしいと伝えたところ、

「お前んとことみたいな、気楽な仕事と一緒にするな」

と頭から火を噴く勢いで怒り飛ばされたのです。

それ以来、R子さんはF氏の仕事については“腫れ物”扱い。最近では2人の会社は利害関係にあり、この手の話題は禁句中の禁句になっていました。

しかし、R子さんは必死に責め立ててくる社長と上司の圧力に動かされ、また自分自身の疑問もあって、恐る恐る今回の騒動についてF氏に問いかけてみました。すると……

「何度も言わせるな、お前のところとうちでは仕事の格も規模も違う。どっちに将来があるか、見る者が見たらすぐ分かるはずなのに、これだから……」

と完璧にR子さんを下請けと見くびった台詞を吐かれてしまったのです。

会社問題がきっかけではありませんが、その後も夫の意外な冷ややかさに触れたR子さんは、別々の道を歩きたいと思いはじめます。

幸か不幸か、プライドの高かった夫は妻からの離婚話にショックを受けつつも、しつこく食い下がるのは男の恥とばかりに、平和的に結婚生活を解消したのでした。

R子さんから離婚の報告を受けた社長は

「そうか……君のところもそういうことになったか……」

と言葉を詰まらせます。どうやら会社同士の関係の方も暗礁に乗り上げている様子。さすがに会社のために離婚を思いとどまれとまでは言えず、ガックリとうなだれていました。

お詫びの印

R子さんが離婚しても、2つの企業は冷戦状態のまま受注関係を保っていました。しかし1年たってもこう着状態。R子さんの会社の社長はいよいよ我慢の限界と、決断を下します。

「契約を解消する。これ以上、我が社の技術を安売り、切り売りすることはできない」

とはいえ、今まで恩恵を受けたことを考えると、下請けから仕事を切るのは大事件です。

特に相手の担当者は、R子さんの元夫。プライドの高い、あからさまに下請けを見下しているF氏です。話をどう切り出すか難しいことこの上ありません。

“ドナドナの牛”のように、沈痛な面持ちで契約解消の申し入れに行った社長でしたが、予想に反して清々しい表情で帰ってきました。

「むこうの担当、Fさんじゃなかったよ。Fさん転職したんだってさ!」

ある種古い人間だった社長は、どうしても離婚問題にこだわりがあったようです。折しも契約問題でモメていた時期だけに、一時は会社としての詫びの印としてR子さんを別の会社に飛ばすか辞めてもらうかして、担当者・F氏のご機嫌を取り結ぼうかとも思っていたとか。

ところがあんなに気を配っていたF氏の方が、離婚直後にあっさり退職。というのも、なんと早くも再婚話が持ち上がり、妻になる人の父親が経営している会社へ移っていったというから驚きです。

さらに、結婚の媒酌人を勤めた部長も異動になり、気まずい関係者が一掃されたことで、社長も思い切った物言いができたのでした。これならば誰に遠慮もいりません。

R子さんの企業は新しい提携先を開拓し、今まで同様の商品を名前を変えながら、新しいルートで販売できるようになりました。

「今まで旦那さんより忙しいと悪いと思ってたけど、もうそんな遠慮はいらないから、バリバリ働いてもらわないと」

実は、企業間の上下関係とF氏への遠慮から、R子さんの仕事も給与も、社長は気を回してセーブしていたと白状したのです。

その言葉通り、R子さんの仕事は急増します。今までは遠慮があってアプローチできなかった企業にも存分に営業をかけることができ、会社全体の仕事も増えてきたのです。当然給与も倍増、離婚後の一人暮らしを多いに潤わせてくれたのです。

「こんなことなら、結婚も契約も、もっと早く解消してればな」

と仕事でさわやかに汗をかくR子さんでした。

ちなみに、F氏がいた大手企業はその後新しい下請けと契約し、同様の今までの開発ノウハウで良く似た商品を作らせはじめました。最初はネームバリューと販売ルートをもつ強みで有利と思われたものの、見よう見まねではクオリティが遠く及ばず、徐々に市場から姿を消していきました。

今更ながら社内では

「あそこと手を切ったのは間違いだった」

などと囁かれ、現在の担当者は肩身が狭いのか、あたかもR子さんに発言力があり、離婚問題の意趣返しだと言わんばかりの噂まで流していたとか……。

「前任のFが下手を打ったんだ。だいたいあいつの嫁がいた会社なのに。嫁にも会社にも逃げられて

転職サクセスワンポイント講座

今回はココが問題!

企業同士の支配関係

中小企業の資料を見てみると、よく取引先企業の欄に、うやうやしく大企業の名前を連ねています。しかし、その実態は要チェックです。対等に近い関係なのか、それとも系列関係や親子関係と変わらないほど、下請けとして“支配”されているのか。

これでサクセス!

企業の命綱

特定の企業に頼りきった取引がある中小企業の場合、何かトラブルが起こると即会社の屋台骨がゆらぐ、ということにも。そのため、支配関係にある企業をつなぎ止めるため、言うがままに社員を貸し出したり、自由に開発・販売ができなくなったりと、相当無理をして関係を続けていることもあります。

文・イラスト:
山本ちず

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