他人の失敗から学ぶ転職裏マニュアル 転職失敗談集3

FILE:023 二度目の履歴書

採用担当Hさんは似たり寄ったりの応募者の中から、誰を面接に招くかで頭を抱えていた。集まった履歴書を前にあら探しを始めるが……。

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似たり寄ったり

「景気回復はありがたいけど、売り手市場になると人員の確保が大変になる」、というのが人事部の悩みの種。

メーカーA社では、営業所の増加に伴いまとまった中途採用を実施しました。

しかし、ズバぬけた人材で、かつすぐに採用が決まったというケースは一握り。予定数には遠く及びません。

再度募集をかけて集まった人材は、正直似たり寄ったりという評価。その中から、どうにか差を見出して面接に招く面々を決めなければなりません。

採用担当のHさんは、履歴書を並べて違いを見つけようと必死です。他の無責任な社員たちは、

「人間、顔に責任を持たないとね」

などと、写真の面構えを見ては好き勝手言ってきたりします。

ただ、この「写真」というのがまたクセ者で、写真で若々しかった人が実際現れた時には、保護者が来たのかと思うほど老けこんでいて、聞けば新卒当時の写真を使っていたことが判明。

他にも、デジタル証明写真に整形並みの修正をした女性もいて、こちらも来てみてビックリ。

そんな人がいたほどですから、妙にツルンとキレイすぎる写真は恐いのです。

また、Hさんの上司は、

「絶対手書き。パソコンなんてヤル気が感じられない」

と常日頃からプリントアウトの書類を毛嫌いするので、任せておくと、その手の履歴書をバンバンハネてしまいます。

確かに、並べてみると秩序正しくきれいな書面より、多少不器用であっても、丁寧に書いた手書きの文字の方が、見た目にもグッとくるのですが、しかし、良く読めばプリントの方も悪くないキャリアだったりするので、これまた捨てるには惜しいと揺らぎます。

結局決めかねたHさんは、目を皿のようにして履歴書を読み比べ、

「この人は自分の趣味まで丁寧に書いている。こちらは学歴を小学校からきちんと書いていて、浪人も留年もしていないとすぐに分かる。この人は印鑑をまっすぐ押せる……」

と、やたら細かい点でジャッジしていき、規定の人数を選び出したのでした。

呼ぶべきか呼ばざるべきか

その分の履歴書を手に、上司の承認を受けにいったHさん。今回の採用はHさんに一任したとはいえ、その道の大先輩だけに、選び出した人材を見る目はなかなか厳しいもの。

差し出した履歴書を見ながら、

「ふーん。まぁ、こんなもんでいいんじゃないの?」

と最初はぬるく反応を返していた上司。しかし、一枚の履歴書で手が止まります。

「あれ……?この人……」

「何かありましたか」

「この人、たぶん前も応募してきたことがあると思う」

「え?」

示した一枚の履歴書は、Bさんという20代後半の男性のものでした。

「3〜4年前かなぁ。落としたんだよ、俺が

なんと上司が採用担当だった時に、一度応募してきた人材だというのです。

「やっぱり、一度落ちた人間はねえ」

「あの時は景気も悪かったし、今より選考基準も厳しかったから」

「それでも応募して来るんだから、よっぽどうちに入りたいんだろうよ」

「まあ、キャリア次第じゃないの?」

などなど、当時の事を覚えている社員がワラワラと集まり、あれやこれやと言い立てます。

社員の意見をまとめると、一度落ちたら絶対ダメ派、今ならいい派、話ぐらいは聞いてみては派の3つ。

Hさんにしてみれば、多少興味のある経歴の持ち主。しかし、過去に応募した事実については何も触れていない点が気にかかるといえば気にかかります。

「いや、一度落ちたとは言いにくかったんだろう。採用担当が変わっていたから、勇気を出して応募したのかもしれない」

どうしても捨てるには惜しいと思ったHさんは、このBさんを今一度呼んで、話を聞くことにしたのです。

かつて不合格になった応募者Bさんが面接にやってきた。話しぶりや仕事経験など、Hさんの気持ちは採用に傾くが、やはり気になるのは3年前の不合格だった……。
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文・イラスト:
山本ちず

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