他人の失敗から学ぶ転職裏マニュアル 転職失敗談集3

FILE:024 二度目の履歴書

A社の採用担当のHさんが面接に呼ぼうとした人物は、3年前に同社を落ちた経験を持っていた。捨てるには惜しい経歴のため、そのBさんを招くことにしたのだが……。

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よくできた面接

面接に際しHさんが、特に注意深く聞き出そうとしたのは2点。まず、3年前に不合格になって、再度応募しようと思った理由。次に、この3年の間、何を身につけ、成長したか。

あえて落ちた企業に、リベンジするからには、それ相応の勝算があるのでしょうから、そこを聞き出したいと思ったのです。でなければ、いくら景気が回復し採用基準が緩くなったとはいえ採用は難しいでしょう。もっと言えば、何かアピールしてくれないことには、一度上司が落とした人を招いたHさんの肩身も狭いのです。

面接の日、Bさんはスーツを着用し、時間通りにやや緊張した面持ちで現れました。Hさんはまず、他の応募者にするように、一般的な質問からサラリと始めました。

転職の理由、なぜうちを選んだか、うちの仕事についてどんな知識を持っているか、入社後どんな仕事をしているか想像できるか……。

Bさんはそのひとつひとつによどみなく、慎重に答えていきました。回答は、

「以前より興味のあった業界で自分なりの経験も積んで参りました。今回、事業所新設の広告を拝見し、即戦力にはなれないかもしれませんが、このチャンスを逃すことはできないと思い、実力を試したく志望いたしました」

など、転職雑誌などでよく勉強してきましたね、と言いたくなる整った内容。

なるほど印象はスマートですが、それだけにHさんの評価は可もなく不可もなく止まり。普通ならば、記憶に残らない応募者として面接は終了していたところでした。

しかし、Bさんについて予備知識のあったHさんは、このキレイな応答にピンときます。

「やはり、何かを隠している」

Hさんはそろそろ核心に迫りはじめます。

「ところでBさん、3年前に一度弊社に応募されていますよね?」

再考の余地あり

質問をぶつけられたBさんは、表情を引き締め「来たか」と体をこわばらせています。

「あの……一度不合格になった人間はだめでしょうか」

理路整然として応答をしてきたBさんですが、ここで本音が顔をのぞかせます。

「いえ、そんなことはありませんよ。当時と今では採用の部門も違いますし」

採用数も多いし、景気も回復して選考も緩くなったし、とはさすがに言えないBさんは、最小限の説明にとどめます。そして、Bさんはその言葉を受け、この3年でどれほど経験を積んだかを切々と訴えはじめたのです。

以前いた企業は業種が違うため、未経験の応募だった。そこがネックで不合格になったのだろうと思った。しかし、元の会社で仕事を続ける気にはなれず、少しでもA社に近い仕事をしようと、A社の商品を扱う大型小売店に入った。本質的な仕事は違うが、A社の商品知識と市場での価値はよくよく飲み込むことができた。この経験が即戦力にならなくとも絶対無駄ではないので、今度こそA社に入りたい――。

確かにとびきりのキャリアではないものの、とにかくA社の商品知識が半端ではないことがうかがえます。よく芸能人のファンが、本人以上にその人について知っているかのような、そんな情熱を感じるのです。

A社にそこまで惚れ込んでいるなら、とHさんの心は採用に向かって動きはじめます。そこへ、面接中だというのに若い社員の一人が入ってきました。Hさんの背後にそっと近寄ると、小さなメモを渡します。開くと上司の文字で短く一言……

「B氏、再考の余地あり

これはどんなに気に入っても、その場で採用をほのめかすようなことは言うな、という上司の声でもありました。

「何なんだ、何か起こったのか?」

Hさんは動揺を押し殺しつつ、改めてBさんの履歴書に目を落としました。

その後つつがなく面接は終了。上司の元に戻ったHさんは早速メモのことをたずねます。

「どうだった?Bさん」

「よく研究してきてる感じでしたよ。うちの商品の知識がハンパじゃないですね。経験はないですけどヤル気はありそうですね」

「でもなあ……こんなもんが出てきたんだよ」

上司が示すのは一通の履歴書のコピー。それはBさんが3年前に応募したときのものだったのです。当時、原本は応募者に返却したのですが、コピーは採用担当だった上司が保存していました。今なら個人情報保護という観点から、問題があるかもしれないものの……

「よく見てみろ。2枚比べると面白いものが見えてくるぞ」

上司の指示に従い、Hさんが預かっている履歴書を出して比べてみると……

「違いますね」

なんと、学歴や職歴がところどころ書き換えられているのです。例えば、1枚目にあった職歴が2枚目ではなくなってすぐ次の仕事になっていたり。ブランクが短くなっていたり、バイトが正社員になっていたり。

おそらく、合格したい一心でついた小さな嘘かもしれません。ひとつひとつ話を聞けば、同情したかもしれません。でも、Hさんはそんな気にはなれませんでした。履歴書のごまかしがわかった時点で、すでにBさんを採用する気持ちが失せていたのです。

転職サクセスワンポイント講座

今回はココが問題!

企業への再応募

その職場のルールにもよりますが、過去不合格になった人の再応募を認める企業は少なくありません。ただし、1年未満での再応募は大きな成長が期待できないということで、敬遠されがちです。少なくともそれ以上は日を開けてチャレンジしましょう。

これでサクセス!

再応募の注意点

再応募の場合、不合格から何を得て、どんな経験をしたのかをアピールすることが必須。以前と同じ状況での応募は怠慢なイメージしか与えません。

また、転職雑誌、サイト、紹介会社など媒体が変わることで、企業側からアプローチを受けて応募になることもあります。その際、事前に一度不合格になっている旨伝えておく方がいいでしょう。

文・イラスト:
山本ちず

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