他人の失敗から学ぶ転職裏マニュアル 転職失敗談集3

FILE:026 引継ぎノート

先任者・S先輩から顧客を引き継いだKさん。しかしいきなりクレーム電話に見舞われる。その理由もわからないKさんは……。

≫前編を読む

クレーム電話

「Kさんってアンタだろ?こっちはアンタに聞けって言われてるんだ!何を今更!アンタもごまかす気か!

正直に分からないと打ち明けたところ、ある意味予想通り、電話の相手は怒り狂います。先方は言い逃れをしていると決めてかかっているし、KさんはKさんで何も聞いていないし。これでは話になりません。

泣きたい気持ちと、キリキリ痛む胃を押さえながら、興奮する相手をなだめすかし、やっとの思いで聞き出したのは、どうやらS先輩が納品を約束しっぱなしで、そのまま辞めてしまったという事実でした……。

その商品というのが、かなりの人気商品でどこの店舗でも取り合いのものばかり。当然、在庫もほとんどありません。とてもS先輩が約束した通りに納品できそうにないのです。正直にそのことを説明して、分かってもらうほかありません。言葉を選び選び話すKさんに、電話の相手は再度怒り爆発。

「Sさんが約束したから、欲しくもないのまで一緒に発注したんだ!」

どうやら人気商品をひっぱってくるというのは、単なる口約束ではなく、目当ての品で顧客を釣り、動きの鈍い商品を抱き合わせで売っていたようなのです。

「それなのにオマケの方だけ入ってきて、メインの商品がないってどういうことだ!騙したと言われても言い訳できんぞ!」

これに対してKさんは平謝りする他、なす術がありません。ひたすら謝り続け、気が済むまで怒鳴られ続け、ようやく先方が電話を置いてくれたと思ったら、「外線、入ってますよ」と休む間も無く次の電話の呼び出し。

ご想像通り、その他の電話も「この商品が入っていない」とか「あれを頼んだのにいつまで待つのか」とか、納品に関するクレームばかり。

改めてげんなりと力を失っていくKさん。そんな中、新たな事態がさらに追い打ちをかけてくるのです。

敏腕のからくり

とりあえず、KさんはS先輩から引き継いだクライアント先を、一軒一軒お詫び行脚に回っていきました。S先輩の営業方針に問題があったとすると、話がややこしくなりトラブルを表沙汰にするため、あくまで原因は引き継ぎのゴタゴタに伴う発送の不備とされました。そして、すべての不始末を引きかぶり、頭を下げるよう命じられたのは、他ならぬ後任者のKさんでした。

どんなにKさんが悔しい思いをしたか知れません。これだけでも噴飯ものですが、さらにKさんを憤死させかねない事態が発覚します。

事態はある顧客から回ってきた、1枚の返品伝票。何カ月か前に納めた商品が、そっくりそのまま返品されたという内容でしたが、問題はその商品が消え失せていたことなのです。

この顧客もまた、S先輩が長年出入した先の1つ。伝票だけで商品がこないため、問い合わせをしたところ、「商品なんか最初からなかったよ」とシレっとした返事が返ってきました。重ねて質問すると、

「だから、書類だけのことだって。Sさんがさ、ノルマ達成のためにどうしてもって言うから、切ってあげたんだよ」

店主の話によると当時ノルマ達成に頭を悩ませていたS先輩は数字を稼ぐため、長年付き合いもあり、甘えられる顧客に頼み、架空の取引伝票を切ってもらったらしいのです。

その際S先輩は、「助けると思って。伝票上のことだけですから。実際には商品は動かしません。1カ月たったら返品伝票を切ってもらえればそれで済みます」と頼んだというと言うのです。

「だから、本当は商品なんかきてないんだよ。無いものを返せと言われてもねえ」

店主は面倒そうに、意地悪く見ればふてぶてしい様子で突っぱねるばかり。しかし、実際に商品が動いていたかどうか、それはS先輩にしか分からないのです。

またしてもS先輩の敏腕のからくりを、嫌な形でつきつけられたKさん。天を突く勢いで怒りが込み上げたかと思うと、海よりも深く落胆させられたり。偉大な先輩だったS氏への憧憬の念が深かっただけに、責める言葉が見つかりませんでした。

急ぎS先輩に連絡を取ったのですが、マンションは引越し済み。実家をたどっても「旅行に行ったと聞いています。行き先は聞いていません」と足取りが途絶えてしまいました。

Kさんは急遽調査チームを結成し、ひとつひとつS先輩の顧客関係を洗い直すことになってしまいました。その時、手に握られていたのはあの日、S先輩から手渡された引継ぎノート。もっとも大部分は白紙で、引き継ぎの役には何ひとつ立たなかったものですが、今はその白紙部分が、Kさんの調査メモで真っ黒に埋まっていくのでした。

転職サクセスワンポイント講座

今回はココが問題!

引継ぎをスムーズに

転職して職場を去るとき、言うまでもなく引継ぎは“盤石”にしておくこと。後任としっかり打ち合わせ、書面にして残す。さらにパソコンで共有文書として公開しておくなどの準備が必要です。それには周囲の社員の協力が不可欠。必要ならそれとなく根回しも。

これでサクセス!

引継ぎ不備の恐怖

引継ぎに不備がなくとも、退職時にトラブルがあった場合、困った事態に発展しがち。「仕事のアップまで辞めさせてもらえなかった」「何度も転職先に連絡をしてくる」「保証人のところへ賠償請求をすると脅しをかけられた」などの後味の悪いケースも報告されています。

文・イラスト:
山本ちず

ソーシャルブックマークに登録 このページをYahoo!ブックマークに登録 このページをdel.icio.usに追加

▲ページのトップへ