他人の失敗から学ぶ転職裏マニュアル 転職失敗談集3

FILE:027 ゆがんだ愛社精神

出店ラッシュで販売員を大幅雇用したアパレルA社。しかし、社員教育や出店先での売場指導が続く中で、脱落する新人も……。

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ファンを採用

郊外型の大型小売店の開店ラッシュで、直営店が急増したアパレルメーカーA社。店舗に立つ女性販売スタッフを急募しました。

数多くの応募の中でも、特にA社商品のファンだというMさんの熱意と商品知識は群を抜いていました。採用サイドでは、「これだけうちの商品が好きなら、社員教育はラクでしょ」という意見と、「逆にこれだけアツいと使う側はやりにくい。熱狂的なファンとは距離をとった方がいいよ。現場を知ってイメージが壊れたとか、反動で辞めちゃいそう」という反対意見に分かれました。

しかし、未曾有の人手不足ということで、とにもかくにも採用という流れに。多くの採用者の中にMさんの名も入っていたのでした。

店舗スタッフの従業員たちは、まず入社後本社にて企業風土や商品知識を深め、接客の水準を上げる講習を受けることになりました。その期間、約2週間。

さらに配属先店舗が決まった後も、その店舗が入っている施設や百貨店などで従業員研修。これは入店先の社員が指導に当たるため、「社内での甘え」は通用しない厳しさがありました。

そして同時に、売り場ごとの責任者やショップの力関係なども頭に叩き込んでゆかねば、販売員同士うまくやっていけません。

雰囲気だけで盛り上がって入社したメンバーは、この研修につぐ研修の間に見事に脱落していました。

しかし、Mさんはこうした面倒なステップもクリア。なかなか仕事熱心な新人だと評価も上々でした。

コーディネートと上下関係

さて、こうしてようやく店舗に立っても、新人販売員の苦労は続きます。

店舗に立つにあたってA社の商品を身につける決まりなのですが、新商品の中から何を選び、どの服をコーディネートするか、社員割引で購入するとはいえ、なかなか難しいものがあるのです。つまりは、先輩の販売員とかぶってはいけないため、かなり自由度が制限されてしまうということです。

上の販売員から順番に好きなものを選んだ後、新人が選ぶ頃には、「これはちょっと……」と社員も気がひける奇抜なデザインや、人気のない物しか残っていなかったりするのです。

手を出しかねていると、その売り場を統括する本部社員から、「どうしてあれを着ないんだ。うちの今年の目玉商品なんだから、もっとアピールしてよ」と見事に叱責されます。

これが嫌で、「割引されても、好きでもない服を買わされるのはツラい…」とボヤき、長続きしなくなる販売員もいます。

しかし、そうした荒波もMさんは力強く乗り越えていきました。かなり斬新なコーディネートでも嬉々として袖を通し、売り場や通勤で浮いていても、まったく臆するところがありません。「だって、仕事でないとこんなの着れないじゃないですか。逆にうれしくて」とウキウキしています。

そうして、MさんのA社商品に対する愛情はハンパなものではないと、誰もが認めるところとなったのです。

ところが、評判の高かったこのM販売員に微妙な行動が目につくようになります。あれほど商品が好きで、売り場が好きだと言っていたのに、徐々にバックヤードにいる時間が長くなってきたのです。

ことあるごとに在庫チェックばかり繰り返すM販売員に、売り場の先輩社員たちは繰り返し注意するのだが……。
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文・イラスト:
山本ちず

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