他人の失敗から学ぶ転職裏マニュアル 転職失敗談集3

FILE:029 シニアの洗礼

人手不足で定年退職後の「シニア層」を採用したA社。父親ほどの部下を持つことになったKさんは……。

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上司も新人

家庭用品の製造販売業A社は未曾有の人手不足に陥っていました。経験者、第2新卒と手を尽くして、実に様々な年齢、キャリアの持ち主がA社にどっと入社してくることになりました。

しかし当然、現場も混乱を極めました。みんなが新人気分でホワホワしているかと思えば、「思っていたのと違う」とサッサと辞めていったり。

そして、入社3ヵ月目のKさんは、仕事を覚えたというだけで現場ではいつの間にかリーダー格になっていました。新たに入ってくる人たちから質問を受け、答え、指示を飛ばしながら、「俺も新人なんだけどなぁ」と釈然としない毎日を送っていました。

こんな状態ですから、A社ではまだまだ人手不足は続いています。そこで、定年後も仕事を続けたいと希望している高齢層にも枠を広げて募集したところ、これが大当たり。かなりまとまった数のシニア層が入社してくることになったのです。

もちろんKさんのチームにも、何人かが配属されることになりました。Kさんはまだ20代後半。いきなり父親ほどの年齢の従業員を、しかも一度に複数人指導することになり、おそろしく緊張していました。

案の定、落ち着きといい、押し出しといい、シニア従業員の方が数段上。並んでみればKさんが一番したっぱの部下に見えます。気圧され気味のKさんを前に、シニアたちも何か感じるところがあったようです。有り体に言えば、早速Kさんを舐めてかかったのです。

中でも一番Kさんにキツく当ったのは、「貫禄タイプ」のI氏でした。

開き直るシニア

I氏は、現役時代は結構なキャリアの持ち主だったらしいのですが、いきなり畑違いの業界に飛び込み、しかも息子ほどの歳の社員の部下にされ、モチベーションが下がり切っていました。

まず、仕事覚えがあまりにも悪いのです。Kさんは最初のうちは、「この歳で転職して、若い人間に混じって、新しい仕事を覚えるのは大変だろう」とI氏への同情も手伝って、注意らしい注意もせず、根気強く説明を繰り返していました。しかし、度重なる失敗に、I氏も気まずいのか、逆に尊大な態度を取るようになりはじめます。

注意をしても、「忘れた」「ボンヤリしてた」を連発。言い訳すらしなくなっていきました。仕事を覚えられないのではなく、むしろ積極的に「覚えない」と言わんばかり。

おまけに、ふとしたことから、I氏は自分と指導係のKさんが、入社時期がさほど変わらない事実を知ってしまったから、さあ大変。

「Iさん、お願いしたいのはこれなんですけど……」

「K君やっといてよ」

いきなり“君”呼ばわりです。

同じ説明を何度も求め、そのくせ態度が横柄。I氏が失敗することで、他の社員もイライラし、聞こえるように舌打ちする者が現れ、それを耳にしたI氏が睨みつけるなど、職場の雰囲気も険悪になっていきます。

責任者のKさんは、I氏以下のシニアチームを制御できないことで思い悩み、どんどんストレスをためていきます。

こうしたシニアの従業員は皆、契約社員という形で入社していました。しかし、若いKさんたちは正社員採用。この事実が明らかになった時、両者の軋轢はさらに大きく、決定的なものになってしまうのです。

I氏の反発は強まる一方。貫禄あるシニア部下を押さえきれなくなったKさんは……。
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文・イラスト:
山本ちず

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