他人の失敗から学ぶ転職裏マニュアル 転職失敗談集3

FILE:031 扉の向こうには

WEBコンテンツの編集に携わってきたEさんは、雑誌編集者という夢をあきらめきれず、転職を機にそれを果たそうとするが……。

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雑誌編集者という夢

Eさんは、WEBサイトの企画・編集の仕事をしてきたコンテンツスタッフ。しかし、元々紙媒体の編集が第1希望だったEさんは、やはり雑誌の編集に携わりたいという希望が膨らみ、転職することを決意しました。

いくつか企業を当たってみましたが、紙媒体の経験がないことがネックになり、反応は芳しくありませんでした。

そんな折、アプローチしたうちの1社から、「一度お話を伺いたい」と面接の連絡が入ったのです。その企業はタウン情報誌などを手がける編集プロダクション。最近のフリーペーパーブームで媒体も増えているとのこと。

希望に燃えて業務内容の説明を受けるEさんに、担当者はおもむろに話題を変えてきました。

「ところで、Eさんは編集希望ということですが、ネットコンテンツの方にはご興味はおありですか?」

クライアントの意向で、最近創刊したフリーペーパーと連動したネットサイトを運営することが多くなってきたのだと担当者は説明し、「Eさんのご経験だとネット事業の方がより能力を発揮していただけると思うんです。ネット事業はまだキャリアが浅いので、安定するまで経験者の指導が必要なんです」と、ネット事業部が安定するまで、力を貸してほしいとお願いしてきたのです。ただ、Eさんの希望とは違います。そのこだわりを告げたところ、「ご覧の通りそれほど大きい会社でもありませんので、お互い事業部が違ってもどこかでクロスしています。紙媒体との連動性も高くて、ネット事業部にいったからペーパーの方と無関係になる、ということはありません」と言い、いずれ編集の方に入っていただくことは間違いない、と強調してきたのです。

Eさんはこれでは今までと同じ仕事になると、難色を示しかけたものの、未経験者として職場に入るより、経験者として扱われる方が待遇もよいのではないか、とも思い始めます。

「紙媒体の仕事を覚えて独り立ちするにも時間はかかります。その間Eさんが今まで磨いてきた能力を無駄にすることはもったいない。ぜひ我が社のコンテンツの充実に力を貸してください」

紙媒体とWEBの両ジャンルにわたった仕事、それはEさんのような方がうってつけ、という言葉が切り札になり、Eさんはこの企業への転職を決めたのでした。

階段の下へ

入社したEさんを待っていたのは、ワンフロアで慌ただしく行き来する従業員の姿。

「見ての通り雑多な職場でね。ここからこっちが紙媒体の事業部、あっちがWEBの方なんだけど、スタッフも大部分がかぶってるし、境界はハッキリしないんだよね」と説明するのが直属の上司になったO氏。

もとよりそのつもりで来ていたEさんには、願ってもない現場風景でした。そうして、自分もこの一角に席をもらって仕事をするのだと思いかけたとき、

「じゃあ、次こっち来て」

O氏はEさんを誘ってフロアを出ていったのです。次にEさんが案内されたのは、部屋を出て階段を降りた先にあった部屋。

「ここはネット事業部の……現場です」

そう言いながらドアを開けると、中には10数台のマシンと、それに向かってひたすら文字を打ち込んでいる、さまざまな年齢層の男女の姿がありました。

「Eさんにはこれから、ここで彼らを監督してもらおうと思ってます」

≪監督?ここで?≫

仰天するEさんをもう一度ドアの外に戻し、O氏は面接用の部屋に席を移して説明をはじめました。

「ネット事業部では、当初紙媒体との連動企画などを手がけていたんだけど、逆にネット先攻、ネットにしかできない企画というのも増えてきてね。最近では紙媒体の事業部を通さず、うちが直接クライアントの要望を汲みとれるようになってきてね」

O氏はそのことが嬉しいのか、誇らしげに語ります。Eさんが面接で聞いた話と、少々違いが出てきました。これではネット事業部は最終的に紙媒体から離れて独自の道を歩みたがっているようにも受け取れます。

「さっき見てもらった部屋がその仕事をしているところ。今、コミュニティサイトを立ち上げたばっかりでね、そのメンテナンスとか……で、Eさんにもその仕事をやってもらいたいんだよ」

そういって渡されたプリントには、ある企業がスポンサーとなっているサイトの概要が書かれてありました。掲示板やコミュニティ、チャットにメッセージ機能……。メンバー登録をすれば、同好の仲間を集められることが売りのようですが、サイト自体はまったくに近いほど無名。Eさんも初めて見る名前でした。

「具体的にいうと、あそこにいた人たちと一緒に、このサイトを盛り上げてほしいんだよね」

なんだか風向きが変わってきました。

希望とは違う仕事に回されてしまったEさん。残念ではあるものの、今までのスキルが生かせるとそれなりにヤル気を抱いていたのだが、待っていたのはさらに期待を裏切る仕事だった……。
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文・イラスト:
山本ちず

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