他人の失敗から学ぶ転職裏マニュアル 転職失敗談集3

FILE:032 扉の向こうには

フリーペーパーの編集を希望して転職したEさん。しかし、前職の経験を買われ、しばらくネット事業部を手伝うよう言われてしまい……。

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盛り上げ係?

編集部からはなれた、階下の一室に集い、黙々と何かを打ち込み続ける老若男女。その姿を見せられ、「彼らと一緒にサイトを盛り上げてほしい」と頼まれてしまったEさん。

「盛り上げるとは、どういうことでしょうか」

「ご存知のように、今手がけているコミュニティサイトは立ち上げたばかりということもあって、知名度が今ひとつです。なので、まずは会員を1人でも多く登録してもらうこと、それから会員さんに楽しんでもらって、度々ログインしてもらうこと、これが早急の課題です」

「ということは、あちこちのサイトで紹介してもらうとかリンクを貼らせてもらうとか、メールマガジンやブログで告知してもらうとか……」

「それもあります。でも、メインにやってもらいたいのは、実際にあのサイトにログインして盛り上げてもらいたいんです。まずはそこからです」

上司は、会員になってくれた人が退屈しないことが一番であると力説します。今現在は悲しいかな、会員数が少なすぎ、掲示板の書き込みは間遠で、チャットもログイン時間がズレすぎ。会員同士がなかなか出会えず会話にならない。なので、とにかく活性化させてほしいのだと続けました。

「というと、私たちが一般のユーザーのフリをして、書き込んだりメッセージを送ったりするってことですか?」

早い話が“サクラ”じゃないのか、と言いたかったEさんですが、上司をいたずらに刺激するのを恐れ、ぐっと言葉を飲み込みました。

そして再び、あの部屋に連れていかれてしまいます。

勝負は夜

部屋の中には先ほど見た、様々な年齢・性別の人たちが相変わらず、パソコンに向かっていました。

「ここいらっしゃるのはバイトの皆さん。この××さんは大学生でね、友達をたくさん勧誘していただいて助かっています」

紹介された女の子が頭を下げます。その斜め後ろの席では中年の男性が一生懸命メッセージを送ろうと、登録済みの顔文字を呼び出していました。

「Eさんはこの端のマシンを使ってください。基本的にみんなバイトなので、来たときに空いているマシンを使ってもらいますから、ログインIDとパスワードを忘れないように」

そう言われてマシンに向かったEさんに、思い出したように上司は再度声をかけました。

「あ、そうそう。忘れちゃいけない。登録するときは仮名で、年齢はハタチぐらいの女性として登録してくださいね。やっぱり一番食いつきがイイから」

食いつき?怪訝な顔をするEさんに上司は、「やっぱりこういう場面では、どうしても男の人が多くなりますから……」ゴニョゴニョと言葉をにごらせ、あたふたと去っていきました。

後にして思えば、この上司の不審な態度に何かを感じるべきだったのです。

Eさんがログインしてみたコミュニティサイトは、表向きはそれぞれの趣味の友達を見つけるという健全なサイトでしたが、実際に会員が一番集まり、目当てにしているのは「出会い」のジャンル。会員は圧倒的に男性ばかりということが判明します。

サクラもサクラ、出会い系のサクラに自分が駆り出されていることを知り、愕然とするEさん。わずか一日のログインにも関わらず、Eさんのデータを見かけたという男性たちから、早くもメッセージが届き始めていました。無論、内容は「一度会いたい」や「割り切ったおつきあいを」というものばかり。

どうしたものかとショックを受けているEさんに、様子を見にきた上司は再びアドバイスします。

「メッセージには必ず返事してくださいね。実際に会ったりする必要は全然ないから。巧く長引かせて、会員さんに楽しんでもらってね」

どうやらこの部屋のアルバイトは、年齢性別に関係なく、みな若い女性のフリをしてメッセージのやりとりをしているようなのです。そう、あの中年男性も。

「それで慣れない顔文字なんか使ってたのか……」

男同士で気を持たせる言葉を送りあっている現状に、言いようもなくげんなりしてしまったEさん。必要以上に疲れた初出勤が終わろうとしたそのとき、再び上司が声をかけました。

「どう?簡単だったでしょう?でもね、コミュニティが盛り上がるのはやっぱり夜なんだよね。11時前後。少しでいいからさ、この時間も家でログインしてくれると助かるんだけど」

……Eさんはこの言葉で、確実に退職する決意を固めました。

転職サクセスワンポイント講座

今回はココが問題!

仕事が違う!

聞いていたのと大幅に違う仕事が待っていたなんてことも……。人気のない職種や、そのまま募集したのでは応募がないような仕事の場合に多い話です。

これでサクセス!

トラブルになる募集

今回のように説得して他部署に回す他、最初は別部署で採用して否応なく異動させたり、募集職種の表現を曖昧にするなど、トラブルにつながるケースは色々。応募者は、主観に頼らず実態を調査した上で入社を決めることが大切。

文・イラスト:
山本ちず

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