他人の失敗から学ぶ転職裏マニュアル 転職失敗談集3

FILE:034 オソマツな実績

アドバイザーに励まされ、過去の実例を引っさげて面接に向かったHさん。しかし、面接での反応は厳しかった。その理由は……。

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ブルーな面接

落ち込む一方のHさんに、これはイカンとばかりにアドバイザーは励まします。

「最近の実績がふるわないのは、企業サイドの問題であって、Hさん本人の実力とは関係のないことです。堂々と過去の作例を持って回るべきです」そういって、脈がありそうな企業をいくつか紹介してくれたのでした。

Hさんはそれなりにヤル気を出し、提示された企業の中から最も希望に近い、同業の一社に応募することに決めました。

「Hさんの場合転職の理由もしっかりしていますし、エージェントを通す分話も早いです。一般の応募よりもずっと有利に選考が進むはずですよ」そう励まされ、Hさんは自分の手がけた広告実例をいくつか持参し、面接に向かったのでした。

しかし、面接に現れた担当者は、Hさんの顔を見るなり開口一番、

「ああ、色々大変みたいですね。お宅も」

不景気な噂は業界内ですでに駆け巡っていたらしく、応募の経緯はすでに筒抜け。気を使っているようにも、皮肉ともとれる担当者の発言に、Hさんは改めて「やっぱり上がどんなに隠しても、ウチがヤバいってことはバレてたんだな。もっと早く辞めておけば……」とブルーな気持ちがリバイバル。

のっけからノックアウト気味の面接はさらに雲行きが怪しくなっていきます。Hさんが入魂の作例を提出すると、

「ちょっと古いね。最近のはないの?」

痛いところを突かれました。Hさんはこれ以上ないほど小さくなり、「お恥ずかしいのですが……」と出した、小さなモノクロ広告を提示。それを見た担当者は、

「え?これ?これだけ?」

過去の派手な実績との落差に驚いたのか、御丁寧に裏返してまで探し、こうつぶやいたのでした。

「……あなたも随分苦労されたみたいですねぇ」

この面接から一週間後、アドバイザーを通じ、Hさんの元に不合格の連絡が入ったのでした。不採用の理由は、

「作例が古く、今どんなセンスかが推し量れないし、それでも仕事を任せたくなるような前向きなタイプでもなかった」

この結果に、アドバイザーは「今度はもっと自分をアピールして、前向きに」と繰り返しアドバイスし、押し出すようにHさんを次の面接に向かわせたのでした。

萎える気力

次に応募したのは、広告制作のプロダクション。こじんまりとした規模の企業で「手堅い」と見られていた企業でした。しかし、今度は過去の派手な作例がネックになりました。

「こういう派手な仕事をしてきた人に、うちの仕事は向きませんよ」

Hさんはあわてて、最近の地味な仕事をアピールするのですが、「でもあなた、こういう仕事をこれからもしたいとは思わないでしょう?一度華やかな世界を見た人は我慢できないと思いますよ」そうHさんの心の中を読み取ったように告げたのでした。

自分の仕事は大手では「古い」と一蹴され、中堅所では「派手な仕事に慣れた人」と敬遠される。アドバイザーは「立派な実績」と評価してくれたけれど、結局業界の人間ではない人。自分のキャリアの中途半端さは、やっぱり自分が思っている通りだった――。

まだ2社回ったばかりでしたが、Hさんは次を当たる気力がすっかり萎えていました。そして、アドバイザーとの面談も間遠になってしまったのです。

しかし、それから数週間後。連絡の取れなかったHさんが、自らアドバイザーに連絡を取ってきました。

「もう会社を紹介していただく必要はなくなりました」

「……というと、ご自分で転職先を見つけられたんですか?」

「いえ、独立することにしました」

今回の事態で一緒に辞めることになった同僚と共に、事務所を開くことにしたというのです。

「仕事先は開拓できそうなんですか?」

「しばらくは今の会社から仕事を貰うことになりました……DMや簡単なペーパーの仕事がメインでしょうけど」

フリーでやっていくのは大変ですよと言うアドバイザーに、Hさんは思い詰めた雰囲気ながら、キッパリと

「私も1カ所との仕事だけではやってけないとは思っています。しばらくは仕方ないでしょうけど、おいおい開拓していこうと話はしていますし……なんとかなるのではないかと……」

フリーの場合、必要経費や保険などを考えると、会社員時代の2〜3倍の収入は欲しいところ。消極的なHさんに、それだけの仕事先を開拓するパワーがあるかどうか、アドバイザーは最後まで心配そうに忠告を繰り返し、去っていくHさんを見送ったのでした。

転職サクセスワンポイント講座

今回はココが問題!

スキルの賞味期限

広告や流行を追うファッション・アートの世界、また革新が著しい技術分野では、持っているキャリアや経験の価値が時間とともに変化します。つまりは、旬があります。納得できる仕事を待つのも1つの選択ですが、その機会に恵まれないのであれば、自分の経験を充分に生かせるタイミングで転職するのも立派な選択でしょう。

これでサクセス!

「辞め時」の見極め方

もし、今の仕事を3年続けたとして、それが世間に通用するキャリアになるかどうかを考えてみましょう。愚痴を言いながら不満のある仕事を続けていると、試練を乗り越えているような錯覚に陥りますが、同じ厳しさでもやりがいある仕事を求め努力している方が、共感してくれる人は多いものです。

文・イラスト:
山本ちず

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