他人の失敗から学ぶ転職裏マニュアル 転職失敗談集3

FILE:035 悪いクセ

営業マンとしてトークにはそこそこの自信を持つFさん。しかし、面接の結果は振るわず、転職コンサルタントに模擬面接を行なってもらうのだが……。

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鬼気迫るトーク

転職活動中の若手営業マンのFさん。仕事柄、人と会い話をするということに多少の経験も自信も持っていたのですが、予想に反して内定を得ることができません。

キャリアが足りないのか、書類の書き方が悪いのか……。困り果てたFさんは、人材紹介会社を訪れコンサルタントに相談することを思いつきます。その会社では、希望者には模擬面接も実施してくれるとのこと。

「場数も踏んでるし、模擬面接はチョロイ」と自信満々で挑んだところ、ここで予期せぬほどの打撃を受けることになってしまったのです。

「実際に模擬面接をしてみて、Fさんの問題点が分かりました」終了後、コンサルタントは満足そうなFさんに、厳しい表情でこう告げました。

「まず、Fさんは最初に3つの提言をされましたね」

Fさんは面接開始後ほどなく、「私が思いますに、御社これからの課題として、3つの点が挙げられます」とぶち上げ、応募先企業の改善点を提案したのでした。

これだけなら、面接でよくある強気なアピールです。しかし、問題は「3つ」と言いつつもその通りで済まなかった点。3つ目を出した後で、「あ、それでですね。他にも……」と4つも5つもダラダラ続けてしまったのです。

どうもFさんは、興が乗ってくるとどんどん1人でしゃべってしまうタイプ。しかも、引き込まれてしまうというトークではなく、「営業はしゃべらなければならない!」というある種の強迫観念でもあるかのような、ムキになっているような、そんな余裕のない雰囲気だったのです。

この点を、コンサルタントは危ぶんだのです。

「3つと言いながらその数が増減したのでは、かえっていい加減な印象を与えます」

他にも知らないことを知っていると話を合わせ、後でしどろもどろになった点もあわせて指摘したのでした。

「知らないことは素直に認めて、その上でどうフォローするかという……」

途中までアドバイスを聞いていたFさんでしたが、いきなり途中で話を遮り、反論を始めました。「でも、あれも知りません、これも知りませんでは、無気力で引き出しが少なく見られそうです。ポイントを挙げるのだって、話に引き込むテクニックの1つですよ。そんなに厳密にとらえることはないんじゃないですか!?」

営業トークテクニック

「たしかに、そういう話術もあります。でも、そういう形を整えた話し方は好みが別れるところなんです」面接の担当者はそれこそ何十人という人材と会って話しているから、小細工を見抜いてしまうのです。中には軽薄ととらえ、拒否反応を抱く担当者もいるのだと、激高気味のFさんにつとめて冷静に説明しました。

Fさんは反論しようと言葉を探していましたが、巧く言葉が見つからないのか答えあぐねてしまいます。その隙にアドバイザーに切り込まれました。

「ぶしつけですが、Fさんにはもっとあったアプローチがあるような気がします。こうしたテクニックは、どこかで指導を受けたんですか?」虚をつかれた形になったFさん。以後は素直に応答したのでした。

「元々、営業になったもののトークがあまり得意ではなくて……」営業マンになった当初、言葉の足りない部分を補おうと資料やデータを大量に持参し、時にはパソコンまで持ち歩いて営業活動をしていましたが、成績は伸びません。

成績不振のFさんは外に出してもらえなくなり、テレフォン営業部隊に回され、平行して社内でトークの特訓を受けることになってしまいます。

「営業はまず話を聞いてもらわなければ話になりません。『3点だけ説明させてください』と言うと耳を傾けてくれることが多いんです」

これが1つ2つでは短くて切り捨てられ、4つ以上だと多くて逃げられてしまうのです。

「実際はどうであれ、まず最初に『3つ』と言い切ることが大事だと教わったんです」

一度話を聞いてもらえれば、あとは切り上げられないよう、よどみなく話を続けること。多少の知ったかぶりをしても、消費者の知らないお得な情報を持っているように見せかけること。そんなことを徹底して叩き込まれ、結果数字を出せるようになったのだと、Fさんは語ります。

「たしかに、そうしたテクニックは、代々受け継がれてきただけあって、うまく使えれば面接でも効果があるかもしれません。理知的な雰囲気を与えることもできそうです。でも、まだ展開を整理できていない状態で使うと破綻します。面接ではそういう勝負は危険です。Fさんにあった方法があるはずです。そこを組み立てていきましょう」

アドバイザーはFさんの身につけたトークテクニックを、まず忘れさせることから始めたのでした。

アドバイスに従い、身につけたテクニックを捨てて面接に向かったFさん。素直な応答は以前よりも好評なのか、2次面接に駒を進めることができたのだが……。
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文・イラスト:
山本ちず

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